第二話 「兄の小遣いが400円ほど減ったのと同じことです」
※注この小説はほぼ会話文で構成されております。
登場人物
エイジ / 男
カナ / 女
「おっす。カナ」
「あ、先輩。おはようございます」
「うお。超爽やかな笑顔。とても昨日俺を木に吊るしたまま帰ったとは思えないほどの爽やかさだ」
「なんだ。まだそんなことを気にしているんですか。案外器がちっさいですね」
「俺死にかけたんですが」
「あはは。そんなことはあたしの人生において大事ではありません。言ってしまえば、兄の小遣いが400円ほど減ったのと同じことです」
「俺の命は400円分の価値しかないのかよ!?」
「兄の小遣いが400円ほど減ったのと同じことです」
「なんで二回言った」
「まあまあ。ところで今日はなんのご用事ですか?」
「ん。そうだな。……カナ。結婚しよう」
「嫌です。帰ってください」
「痛っ! あっバカ! 塩を投げるな塩を! てか、どこから出したんだその塩は!」
「昨日となんにも変ってないじゃないですか。そんなに、あたしを怒らせたいんですかね。この馬鹿は」
「今馬鹿って言ったな! 馬鹿って言った方が実は馬鹿なんだぞ――ってアイタタタ! 塩を投げる力(略して塩力)が強くなった! 案外プライド高い!」
「もう本当に帰ってくれませんかね」
「だったら溜息つきながら嬉々とした顔で塩を投げるな! とりあえず、そこに置きなさい」
「……大体、先輩はあたしに一目惚れとか言っていましたけど、それってただ単に顔で選んだってことでしょう。気持ち悪い」
「気持ち悪いって言うな。全国の一目惚れで付き合ったカップルに謝れ」
「少なくとも、あたしは顔だけで惚れられても困ります。まあ、顔は恋人を決める重要な要因のひとつであることは否定しませんが」
「じゃあ、これからの長い学校生活の中でカナのことを知っていけばチャンスはあるのか?」
「たかが残り一年二年の学校生活で、あたしのなにを知るっていうんですか。調子に乗らないでください。気持ち悪い」
「どうすればええっちゅうんじゃあああああ!!!」
「あはは……ウソですよ。先輩。あたしはそんなにお高くとまれるような女ではないですよ。顔で惚れられるのは困るというだけです。先輩は嫌いなタイプではないので、これからの付き合いの中で考えが変わるかもしれません」
「本当かカナ。結婚しよう!!!」
「嫌です。なんも分かってないじゃないですか」
「イテテテテテ!!! だから塩を投げるのは止めろってばああああ……」
塩を投げられてもふたりは仲良し。
第二話 「兄の小遣いが400円ほど減ったのと同じことです」 終わり
楽しんでもらえましたでしょうか。
とりあえず、これからもちょこちょこ更新していきたいと思います。