執事の溜め息
ここはフィレンツ邸
当主のデイビッドの娘であるアメリアの執事ーハリソンーの物語である。
「———というわけで、どうだろうか?うちの娘を嫁にもらってくれないか」
「いやいやいや、旦那様!!僕は執事です!お嬢様は、伯爵令嬢ですよ!!!」
日曜の清々しい朝に、銀髪の美青年の声がこだまする。
「なんだ、そのー、アメリアは知っての通り少々お転婆でな、貴族のご子息とは話が合わんのだよ」
デイビッドは、しゅんっといじけながら言う
「そんな可愛い顔しても、ダメです!身分が違いすぎま「ハリソンっ!!!君はアメリアに小さい頃から仕えてくれている。君なら、娘のこともよく知っているし、何より安心して任せられるのだよ。もしや、君はアメリアのことが嫌いなのか?本当は嫌だと思いながら側にいたのか?それとも、好いている女性がいるのか?どこの方なんだその女性は!?アメリアよりも美しく、素敵な方なの「旦那様ーー!!!お聞きくださいー!!」
なかなか埒があかない話に、ハリソンは話を遮った。
コホン
「ですから、身分が違いすぎます。私のような平民は、お嬢様と釣り合いません」
「それは、君の思い過ごしだ。ウィンドル家のご子息の話を知っているか?ルーク殿は、ご自身のメイドを娶られた。今では可愛らしいお子さんも沢山いらっしゃる。私も早く、孫を抱きたいのだ」
「え、お孫様は既にいらっしゃいますよね?」
「アメリアの産んだ孫を抱きたいのだよ、ハリソン君」
「、、、、」
話は平行線をたどっている。
「君は、アメリアの事をどうおもっている?」
「お嬢様は、私の仕えるべき主です」
「好きか?」
「大切な主です」
「可愛いと思わんか?」
「お嬢様です」
「嘘をつけ、この間見惚れていだだろう?」
「、、、、、」
いや、見惚れていたのではない、なんと言うかその、朝日が当たる髪が美しく、白く透き通った肌が目に眩しくて、ピンク色の唇に弾力がありそうでつい見惚れてしまって、、、、、、、、ん?
見惚れた?
あれ、見惚れてる。あれ?
ニヤリ
「鈍感な男め」
「え、」
「お前、以前よりアメリアに惚れているな。だが、自覚がないからこの話をしたのだ」
「、、、、、、、、好き、、、?」
ハリソンは、目をキョロキョロさせながら頭を抱えた。
「後は、お前の行動次第だ。私の言いたいことは、分かるな?」
(や、やられた〜)
デイビッド伯爵は一枚上手だった。
「ハリソン!紅茶とお菓子を用意してくれないかしら?あ、あなたの分も用意してね」
「は、はは、はい!」
「?」
当事者の突然の登場に焦りまくるハリソン。
デイビッドの余計なお世話のせいで、意識しまくっている。
頑張れ、ハリソン。
「ねぇ、ハリソン?なんでそんなに手が震えているの?」
「!!!!」
顔を突然覗き込まれ、驚いて紅茶を撒き散らしてしまった。
「熱でもあるの?」
白く美しい手が、ハリソンのおでこに触れる。
「アアアアメリア様っ!」
「なに?」
「ぼ、僕は、僕は、、、、」
(このままなにも言わないほうがいいかもしれない、今までの関係が崩れるならば。でも、このままでは、いつか、アメリア様は嫁がれてしまう)
「?」
「僕は、執事失格です!!お叱りください!」
「大きな失敗でもしたの?」
「いえ、僕の心が、、、アメリア様に囚われて、、しまいました。身分違いなのに、申し訳ありません。、、、お慕いしております。」
(い、言ってしまったー!後に戻れないぞ、どうしよう、アメリア様の顔が見られない)
「ありがとう、ハリソン。私もあなたが好きよ」
「!?」
な、なんですとー!
「ね、ハリソン。お父様からも話があったと思うけど、どうかしら?」
照れたように頬を赤らめるアメリア様が愛おしすぎて、つい、抱きしめてしまった。
「OKと捉えるからね?ハリソン」
僕は、世界一の幸せ者かもしれない
読んでいただいた方、ありがとうございました!