電影空間(サイバースペース)に幻像(アバター)は踊るdisk-1
軽やかなオープニングテーマとともに、ヘッドマウントディスプレイにタイトル画面が表示された。
“アストラン幻像大陸戦記”。
VRを採用したMMOの一つ。プレイ人口はさほど多くはないが、そこそこにに人気があるゲームではある。
続けて流れるムービーをスキップし、メニュー画面へ。
そしてすぐさまゲーム開始を選択。
直後、ディスプレイ画面は一瞬ホワイトアウトする。
そして画面に表示されたのは、異国――いや、異世界の情景。
石造りの建物。
行き交う異国の衣装を着た人々。
ゆったりとした服は、どことなく中東あたりの民族衣装を思わせる。
そしてその中に時折異質な者たちの姿が散見される。それは、鎧をまとった男や、露出度の高い服を着た女など。
彼らはおそらく、別のプレイヤーのキャラクターであろう。
と、背後から声がかかる。
「ジンさ〜ん、待ってましたよ!」
ジン――と呼ばれたアバター――が振り返る。
と、その視界に映し出されたのは、一人の少女型アバター。
長い黒髪。整った眉目の、卵形の顔。白く透き通るような肌。そして、均整の取れた体躯。露出度は低いものの、胸元はチラりとみえる衣装。
「ああ……ロミちゃん! 待たせちゃったかな?」
「大丈夫ですよ〜。今私もログインしたばっかりです!」
無理やり視線を引き剥がし、“ジン”は答える。
「今日はどこへ行きます? 中南部の砂漠地帯で、大サソリとかの食材探しのクエストとかありましたけど」
「そっかー。よさそうだね。それにしよう」
「良かったー。探したかいありましたよ。じゃあ、アルタワールまで……」
そうして、彼ら二人のクエストが始まった。
ジンこと春日部真斗。
彼は、29歳のごくごく平凡なサラリーマンである。
それなりの高校から系列のそれなりの大学に進学し、そしてそれなりの会社に就職した。
そして、それなりにそつなく仕事をこなしている……。
だが年を経るにつれ、なんとも言えぬ焦燥感は感じていた。
数ヶ月前、中学の同窓会で再会したかつてのクラスメートたちの現状。
ある友人は肩書き付きに。またある友人は起業し、海外での仕事をしているという。
それに比べて自分は……
無論それは、隣の芝生なのではあろう。
だが……
『このままでいいのか?』という焦りと『もう今更……』という諦観。
そして、そこからの逃避。
そうする間に、いつしかゲームにのめり込んでしまっていた。
このゲーム内にいる時だけは、別の自分になれるのだ。
そう。アバターという自分ではない自分に。
――数時間後
「大漁でしたねー」
「ああ、そうだな。懐も暖かくなったしね。まっ、コレが現実の金なら言う事なしなんだけどな〜」
二人はアルタワールの街の大通りを歩いていた。
狩り集めた食材を食堂へと届け、報酬を受け取ったところなのだ。
「そうですね〜。私も色々欲しいものが……」
「へぇ……どんな?」
「えっと〜、ナイショです」
ロミは少し意味ありげに笑う。
「そっか」
彼女の笑みの意味を気にしつつも視線を外し、そう答えた。
彼女……いや、彼女の姿をした“誰か”のことは、真斗は何も知らない。
年齢も、性別も、どこに住んでいるのかも。
あえて聞かないようにしているのも確かではあるが。
「あ〜っ、そうだ」
「ん?」
ロミが立ち止まり、振り返る。
「もうこんな時間ですよ〜。そろそろログアウトしないと。ジンさん、明日も仕事ですよね?」
「あ……そうか」
時刻を確かめる。
ディスプレイの隅に表示された時刻は、零時を回った所であった。
「う〜む、もうちょい遊びたいんだけどな」
「ダメですよ〜。この時間じゃ中途半端になっちゃうし。第一仕事に支障が出たら、遊べなくなっちゃうじゃないですか〜」
「……そうだな」
「じゃあ、今晩はここまでで。明日も待ってますよ〜」
「ああ」
そしてメニュー画面を呼び出し、ログアウト操作をする。
最後にディスプレイに写っていたのは、ジンを見送るロミの笑顔であった。
「……ふぅ」
ヘッドマウントディスプレイを外し、PCのモニターを見る。
と、画面上右隅に、ロミからの『おやすみなさい』とのメッセージが表示された。
メッセンジャーを立ち上げ、『おやすみ』と返信。
そしてまた一つ息を吐く。
「……寝るか」
名残惜しげに呟くとPCをスリープにし、真斗はベッドへと向かった。
――数日後 アルタワール近郊の森の中
「そっち行きました〜! 手負いですから気をつけて!」
「おう、任せろ!」
ロミの声に、剣を手にしたジンは駆け出した。
と、巨木の向こうから、一頭のイノシシの様な獣が飛び出す。
目測で3mほどか。サイほどの巨体である。
頭部は一際ゴツく、目立っていた。両側から大きく飛び出した頬骨。そして顎下にはコブ状の突起がいくつか。開いた口からは乱杭歯が覗いている。噛まれたら一撃で致命傷であろう。
そして樽のような胴体と、比較的短いが引き締まった四肢。その身体はたわしのような剛毛で覆われている。
そしてその背に刺さる、数本の矢。
「コイツか!」
目的の獲物、恐猪。
ジンは剣を構え、その前に立ちふさがった。
「来い!」
「ガァーッ!」
退路を断たれていきり立つディノヒウスが牙をむき出し、襲いかかる。
すぐさまジンは横に飛びつつ首筋に斬りつけた。
「ギァアアァーッ!」
手応えあり。
そして、絶叫。
しかしよろめきつつもその脚は止まらない。ディノヒウスは血を吹きつつ、よたよたと走っていく。
「チッ……逃がさん!」
すぐさまダッシュ。
ディノヒウスの胴にすがりついた。
そしてナイフを取り出すと、その首筋に突き立てる。
さらなる絶叫。
だがディノヒウスの脚は止まらす、そのまま引きずられてしまう。
「クッ……ソッ!」
歯をくいしばると、ナイフを深く突き入れた。そして、手首をひねって抉る。
「ガァァァアァァー!!」
絶叫。
ディノヒウスの脚がもつれ、倒れた。
「やったか! ……うおっ!?」
直後、ジンは跳ね飛ばされ、樹に叩きつけられる。
「ぐぅっ!」
一瞬息が詰まった。
「ジンさん!?」
気遣うロミの声。
「俺は大丈夫だ! だから、ヤツを……」
ディノヒウスは身を起こすと、よろめきつつ逃走しようとしていた。
「わかりましたー!」
そしてロミは小剣を手にディノヒウスに追いすがり……
断末魔の絶叫が上がった。
「うっ……ぐぅ……」
荒い息を吐きつつ、ジンを身を起こした。
そこにロミが戻ってくる。
手にした小剣には、べっとりと血が付いていた。
その向こうには、倒れ伏したディノヒウス。
「何とか片付きましたー」
「おう。仕留めた、か……」
「ええ。ジンさんのおかげです〜。では……“治癒”!」
淡く優しい光がジンを包んだ。
と、見る間にその傷が癒えていく。
「おっ、ありがたい。ずいぶん楽になったぜ」
ジンは身を起こし……
『……待て。これは、一体!?』
真斗は我に返った。
同時に身体の痛みも消失した。まるで最初から、そんなものは無かったかのように。まるで今までの事が夢であったかの様に……
『俺はコントローラーでジンを操作していたはず。それなのに、なぜあんな感覚を……?』
VRといっても、ヘットマウントディスプレイでゲーム内に入ったかのような感覚を味わえるというだけの話である。少なくとも、五感が脳にフィードバックされるはずはない。
「どうしたんです?」
「いや、何でもないさ。ギルドに戻ろう」
「そうですね〜。今日も大漁だ〜」
はしゃぐロミをよそに、ジン……いや真斗は、考え込んだ。
――ログアウト後
『……どういう事だ?』
モニターを眺めて独語する。
あの瞬間、真斗は確かにジンと一体になっていた。明らかにゲームの中に“入って”いたのだ。
ワイヤレスで脳と電子回路を直結するシステム。そういったものは、目下各メーカーによって開発中ではある。
しかし現時点では、あくまで医療機器などに採用されるのみ。そんなものを標準装備したゲームがあるなどと聞いたことはない。
いや、仮に存在していたとしても……少なくともこのPCにはそんなデバイスは付属していない。
いない、はずだ。
『気のせいか? いや、あれは確かに……』
真斗は一人、思考の迷宮をさまよっていた。
同窓会に参加した時のことだ。真斗は、久々に幼馴染の牧村譲治と再会した。
彼は、とある新興電子機器メーカーの研究員をしているという話であった。自分の仕事について熱く語る彼の姿は、どこか諦めている真斗にとっては眩しく、羨ましかった。
そして数日後、牧村からのメールを受ける。
内容は、新型PCとデバイスのモニター協力の依頼。
わずかに逡巡したものの、真斗はそれを受ける事にした。牧村のモチベーションの理由を知りたかったから、かも知れない。
それが、今使っているこのPCとヘッドマウントディスプレイだ。
そしてPCにプリインストールされていたのが、“アストラン幻像大陸戦記”なのだ。
このゲームがなぜPCにインストールされていたのだろうか?
一度牧村に聞いてみるのも手かも知れない。
しかし……
真斗には迷いがあった。
ロミの事だ。
このゲームの“裏”を知ってしまう事で、“彼女”との繋がりが切れてしまう様な気がするからだ。
「とりあえず……明日だ」
真斗は考えるのを止め、寝る事にした。
――更に、数日後。金曜日、夕刻
「おう、春日部。今晩時間あるか? みんなで飯喰いに行こうって話なんだが……」
帰宅準備をする真斗に、部署の先輩、岸本が声をかける。
「あ……いえ、今日はちょっと……」
「……そうか」
職場の人間の誘いである。迷いはしたものの、断る事にした。
今日、大規模なクエストに参加する約束を、ロミとしていたからだ。
「すいません。また誘ってください!」
「おう。じゃあ、またな」
真斗は急いで荷物をまとめると、部屋を飛び出した。
「アイツ、付き合い悪くなったよな……」
その姿を見送り、席に戻ると岸本はぼやく。
「確かにね」
その姿を眺め、二人の上司の瀬川が苦笑する。
「もしかして、彼女が出来たんじゃないか?」
彼は窓に歩み寄り、階下を見下ろす。
そこには、小走りで帰宅を急ぐ真斗の姿があった。
社員寮の自室に帰った真斗はカップ麺を啜りつつ、スマホでクエストの下調べをしていた。
ロミによれば、今回のクエストは最近追加されたばかりのものらしい。地下迷宮を探索し、アイテムを持ち帰るというものだ。
今までのものとは難易度が格段に違うとの話だ。なので、事前にある程度の情報は仕入れておきたかった。今まではロミが下調べしてくれていたが、あまり頼りすぎるのも少々情けない。
始めたばかりの頃に巡回していた攻略サイトの幾つかにアクセスしてみる。数ヶ所はどうやらこのゲームを止めてしまったらしく、攻略記事は更新停止していた。が、幸い幾つかのサイトはまだ攻略を続けいてる様であった。
しかし……
「何故だ?」
今回のクエストに関する記事は一つも見当たらない。
つい先日に更新されたばかりのブログにも、だ。
管理者は、真っ先に攻略に取り掛かっていそうな上級プレイヤーなのだが……
仕方なく、幾つかの記事を読んでみる事にした。
まず目についたのは、大規模障害の記事だ。
『ああ、そんな事も……』
少々懐かしく思う。
確か、始めて数週間後に発生したアクセス障害だ。
それまでは、ロミとではなく数人のパーティーでプレイしていたのだ。
ほぼ初心者の四人パーティー。
苦戦続きではあったが、それなりに楽しい思い出だ。
しかし翌日の障害復帰後、彼らの姿はなかった。
もしかして、それをきっかけにこのゲームをやめてしまったのかもしれない。
プレイヤーの姿が激減してしまった世界を、ジンは一人うろついていた。
このままゲームを続けるか否か迷いつつ……
そんな時に声をかけてくれたのが、ロミだった。
やはりパーティーがいなくなってしまったために仲間を探していたという。
それからずっと、“彼女”と二人でクエストをこなしてきた。
ロミはかなりの高レベル。そして、まるであつらえたかのようにジンの苦手分野を埋めてくれるタイプのキャラであった。そのため、それ以上に仲間を増やす必要はなかった訳ではあるが……
ブログにも、やはりいくらかのプレイヤーがゲームから離脱したらしきことが書かれていた。
しかし、その数字はごくわずか。どうやらほとんどのプレイヤーは残ったらしい。
「そんな……」
じゃあ、あの誰もいなくなったフィールドは何だったのか?
記事中にアップされた復帰直後のスクリーンショットも、以前と同様、いやそれ以上に多数のプレイヤーキャラクターの姿があった。
サーバーの違いなんだろうか?
慌てて他のサイトを見てみるが、やはり状況は変わっていない。
てっきりプレイヤー数は徐々に回復してきたとばかり思っていたが、実際はほとんど変化していなかったようだ。
一体何が起きていたのか?
と、PCからのメッセージ着信音。
スリープを解除すると、ロミからのメッセージが表示された。
『今日はどうします?』と……
時計を見る。
気がつけば、約束の時間は10分ほど過ぎていた。
『ごめん。少し遅くなった。今、入るよ』
慌てて返信。
そして食べ終わったカップ麺の容器をシンクに投げ入れ、PCへと向かった。
――ダンジョン
ここはアルマーナという街の近郊にある、地下迷宮。
かつては“勇者”と呼ばれる英雄を選抜するための試練の迷宮であったらしい。
その第二階層を二人は歩いていた。
と、ロミが足を止める。
「どうした?」
「ここから少し敵が強くなります。一度体力を回復しておいた方がいいですねー」
「そうか」
そこで二人はポーションを使い、体力を回復した。そして準備が整ったところでまた探索を開始する。
「なあ、ロミちゃん」
探索の途中、ジンはさりげなく装いロミに問う。
「何ですか〜」
「ロミちゃんてこのゲームの事いろいろ詳しいけどさ、どこで情報仕入れてるのかな?」
「えっと〜」
一瞬“彼女”は口ごもった。
「色々ですー。ネットの掲示板とか……」
「そっか。今度アドレス教えてよ。ロミちゃんに頼りっぱなしじゃ、俺もちょっと情けないし」
「大丈夫ですよ〜。このゲームじゃ私が先輩です! 頼ってください」
「じゃあ、よろしく頼むよ。ロミ先輩」
「はい!」
彼女は嬉しそうに笑った。
しかし……ジンはそれをまともに見ることが出来なかった……。
――更に下層
「……チッ!」
ジンは巨大な洞窟トロールの、これまた長大な棍棒を剣と盾で受け止め、呻いた。
「クソッ!」
「ガアッ!」
その腹に蹴りを入れてやり、強引に距離をとる。
このままでは相手のパワーで押し切られてしまいそうだ。ただでさえ、今ので手が痺れてしまっている。
トロールは、巨人程ではないにしろ、巨体と怪力を誇る連中だ。しかもその中でも洞窟トロールはとりわけ脳筋かつ凶暴で知られる。
「ジンさん、下がって!」
「お……おう」
慌てて飛び退る。
その直後、
「こっちを見ないで! ……“陽光”!」
「へ? ……うおっ!?」
「ガァアッ!」
思わず振り向いた直後。
眩い輝きがロミの掌からあふれた。
慌てて視線そらすが、わずかに反応が遅れた。
『クッソ! 目が……』
目の奥がチカチカしている。
だが、
「今です!」
ロミの声。
ようやく回復しつつある視界の中、石化したトロールの姿が見えた。洞窟トロールは、太陽の光を浴びると石化してしまうのだ。あの呪文は、魔力でそれを作り出したのだ。
『仕方ねェ……』
相手が見えないという訳ではない。
ジンは盾を構えて突進。そして、
「ぅラァ!」
シールドチャージで突き倒す。
「……うおっ!」
強烈な反動で、盾を持つ腕が痺れた。
しかし石像と化したトロールはかたむき、そして破片と轟音を撒き散らしつつ倒れた。
その手からこぼれる棍棒。
ジンはそれを拾い上げると振りかぶった。
「喰らえ!」
大上段からの一撃。
腕に命中し、それを砕いた。次いで、頭、胸と棍棒を叩きつけていく。
その度にトロールの身体は砕け、破片が舞った。
「では、私も……“衝弾”!」
ロミが放った不可視の弾丸が命中し、とうとうトロールの石像は粉々になった。
「う……む」
「大丈夫ですかー?」
目を押さえてへたり込むジンに、ロミが気遣わしげに声をかける。
「ああ、助かったぜ。でもさ、『こっちを見ないで』はちょっとね。一瞬見てしまいそうになったよ」
「あ……ごめんなさい」
肩を落とすロミ。
「てっきり服でも破れたのかと……」
「もう……何やらしーコト考えてるんですかー」
「ハハ、ゴメンって……あ痛ッ!」
少し赤面したロミに、脇腹をツネられる。
『ン? 痛い? そういえば、さっきもな。またか……』
気がつけば、また“入って”いた。
何故あんな現象が起きるのだろうか?
もしかして、今こうしてヘッドマウントディスプレイをしてゲームをプレイしている俺は、“ジン”が見ている“夢”なんじゃなかろうか?
などと、とりとめもない考えが浮かんで、消えた。
「どうしたんです?」
「あ、いや……ゴメン。少し離席する」
「はーい。待ってまーす」
そして真斗はヘッドマウントディスプレイを外し、大きく息を吐いた。
気がつけば、ノドがカラカラだ。机上に置いてあったマグカップの茶を飲み干した。
そしてトイレを済ませると部屋に戻る。
『それにしても……』
ジンは首をひねった。そういえば、今までもロミから休憩を言い出したことはなかった。
『飯はともかくトイレとかどうしてるんだ? まさか、よく聞く……いや、やめておこう』
そして、何気なくベッドサイドテーブル上のスマホに目をやった。
『……着信?』
二回の着信履歴とメッセージが、ロック画面の通知表示にあった。牧村からのものだ。
着信時間は7時半と8時。メッセージは8時過ぎ。いずれも真斗がゲーム中の時間だ。
そして留守電には『PCとデバイスの使用状況を教えてくれ』とあった。ずいぶん切羽詰まった声だ。
メッセージもほぼ同じ内容であった。
『どうすべきなんだ? これ……』
逡巡。だが、無視するわけにもいかない。
とりあえず『現状、ゲーム等でも問題は出ていない。快適に使えている』と、返信のメッセージを送っておく。電話するには少々ためらわれる時間でもあった。
そして悶々とした思いを抱えつつ、再びゲームに戻る。
「おかえりなさい〜」
ロミが笑顔で出迎えてくれる。
しかし先刻の件もあり、
『う〜む……やはりヤツとは関係ないのか?』
などと考えてしまう。
「……どうしたんです?」
「いや、何でもないさ」
と、適当に返しておく。
「なら、いいですけど……じゃあ、先行きましょー」
「お、おう」
そうして二人はまた歩き始めた。