第五話:城下町にて
その街は、私が思っていたよりもっと、ずっと大きく、活気にあふれていた。
街の中央を過ぎる大通りには、様々な露店が軒を連ね、色とりどりの野菜や果物。用途不明のガラクタに見えるものや衣料、屋台、肉屋の隣には鶏が籠に入ったまま売られている。
その通りを行き交う人々もまた様々で、多くはアゲイトのような動きやすい北欧風の民族衣装を着ていたが、エジプトやアラビアを髣髴とさせるような長い上着やターバンも見かけたし、顔の上半分を覆うような仮面つきの帽子を被った人もいた。
私のこの格好(主に仮面とか)はこの中ではあまり目立った様子も無く、むしろ同行しているアゲイトのほうがよほど目立っていた。
この世界の人は軒並み西洋人風で、身長も日本人より高かったがアゲイトはさらに高く、何よりもその真っ赤な髪と金色の目は異世界にあっても目立っていた。
人々の多くは薄茶色、あるいは金色の髪で目も茶色が多く、次いで青、緑など。中には緑掛かった銀髪や黄緑色の髪の人などもいて色鮮やかだったが、アゲイトほど濃くは無く、やはり目立つ。
目立つのはまずいんじゃないのか? という私の疑問などお構い無しに、振り返る人々の視線をものともせずアゲイトはどんどん進んで行く。
私はといえば、この世界に来て初めての外出だというのに、またもアゲイトの背中を追うしか無いわけで……
せっかくだから色々見て回りたいのに。
ふと足を止めてみるが、アゲイトはそれに気付いた様子は無い。
このままばっくれてしまおうか?
何を見るともなしに、すぐ横の露店に目を移すと、そこはアクセサリーを扱っている店のようで、様々な色のガラス玉を連ねたネックレスが軒を飾っていた。
買い物を済ませたのか、一組の男女がその店を立ち去る。女の方は小さな袋をしっかりと胸に抱え嬉しそうだ。
あんな風に何かを買って貰ったのは幼い頃。まだ両親が健在だった頃に近くの町の夏祭りの時だけだ。
ふと懐かしくなって店に近づきかけた時、またもや見覚えのあるごつくて太い腕に邪魔された。
「どこへ行く気だ?」
やはり聞き覚えのある低い声。先に行ってたんじゃなかったのか?
「ちょと見てみたいと思って」
「うん? あの店か」
急に視界が広い背中に遮られる。
「行くぞ」
そう言って、その背中は店へと遠ざかった。その背を追うのは先ほどより不快ではなくなっていた。
「いらっしゃい」
店は小物や小さな鞄などの他に、下の敷物が見えないほどアクセサリー類が敷き詰められていた。そのどれもがキラキラと光る色ガラスや石で装飾され華やかだ。
私は、アクセサリーはネックレスぐらいしか着けないが、やはりこういうものは見ているだけで楽しい。
「これなんかどうだ?」
横で、アゲイトが大きめの赤い石の指輪を差し出してくるが、指輪なんて組み手のときに邪魔になるので論外だ。だいたい指になにかはまっている感触が慣れていないので気持ち悪い。
「う〜〜ん……」
軽く無視して、シンプルなデザインのネックレスに目をやる。軽くて外しやすいものがいいな。といってもお金が無いので買えないが。
ふと腕輪に目をやる。木や石をくりぬいて作られている太くて丸いデザインの物だ。前々から思っていたのだがこれってメリケンサックの代用品になりそうだよな。丈夫だし。握って殴れば指の保護にもなるしそれなりのダメージは与えられそうだ。
つい手にとって握り心地を確かめてみる。うん、悪くない。
「腕輪か……」
「ん? うん」
武器に出来そうだ……と口に出したら変な顔されそう(過去成人式の折、冷血漢メガネに「振袖の袂に小銭入れを入れて殴ったら凶器になるよな」と話したら一喝された記憶がある)なので言わないが。
「じゃぁそれ……いや、おい。親父。これの赤いのはあるか?」
なんで赤?
「はいはい。それならこちらはいかがでしょう?」
店の親父は、赤い石に金色の文様を施した腕輪を取り出す。アゲイトに渡す時に、ちらりとこちらを見た目が意味深なものに見えたのは気のせいか?
「よし。それをもらおう」
アゲイトは(なぜか)上機嫌でそれを受け取り、私の左腕にはめさせる。
「金、持って無いんだが……」
「俺が払うからいいんだよ」
やっぱり機嫌よさそうに、さっさと支払いを済ませてしまう。
こちらの物価はまったくわからないが、高いものじゃないんだろうか?
「いや、おごってもらうわけには……」
「いいからいいから。ほら。いくぞ」
私の言葉を遮るように店を出た。
背後で親父の機嫌よさそうな声が聞こえる。やっぱり高いものなのかな?
「アゲイト」
「行くぞ」
腕輪をはずそうとしたが、それより一瞬早くアゲイトは私の左腕をつかんで元の人ごみに入っていく。
まぁ。いいか。本当に高いものだったら後で返せば良い。
――恋人の髪、または瞳の色の装身具というのはそれなりの意味があり、特に指輪や腕輪は元の世界では指輪と同じくらい意味深なもの……という事を知るのはもっとずっと後になってからの事だった。
人ごみを掻き分けて大通りを抜けた後、少し路地裏に入ったところにその店はあった。
3階建ての店の看板には、酒の絵らしきものが描かれていて、中からはおいしそうな匂いが漂ってきている。
「入るぞ」
そう言ってアゲイトは、やっぱり左腕を掴んだまま店に入っていく。
そろそろお腹が空いて来たからいいけど。でもお金持ってなんだけどな。またアゲイトが払ってくれるんだろうか?
おごられる訳にはいかないから、今度こそ金額を覚えておいて返せるようになったら返そう。いつになるか分からないが。
店の中は昼時だというのに人はまばらで、がらの悪そうなのが隅の方に固まっていた。
アゲイトはカウンターに席を取ると、少し離れた場所で店員と二言三言何か言い交わすとまた戻ってきた。
「悪いな。ちょっと店の奴と話があるから先に何か食べててくれ」
そう言って店の2階に上がっていってしまった。
さきほどの店員さんが、軽めの昼食と飲み物を持ってきてくれた。
少し迷ったが先に食べている事にした。が、食事が終わってもアゲイトが降りてくる気配は無い。
手持ち無沙汰になった私はゆっくりと店内を観察する事にした。
店の天井は低く、壁は石を積み上げられていて木でできた棚が並べてある。
全体的に薄暗くてわずかに酒臭い。あまり上等ではない類の店なんだろうか。
店の2階には数人の男が出入りしていたので、立ち入り禁止ではないようだが階段は店の奥にあり、なんとなく近寄りがたかった。
暇だなぁ。
アゲイトが2階に上がって1時間以上経っている。ちょっと待たせ過ぎじゃないか? 食器も、陶製のカップも空になってしまった。
外をもっとよく見て回りたいのだが、見知らぬ土地を一人で出かけるのは気が引ける。あんな男でも、居ないよりは居てくれた方が心強い。
つい行儀悪いな、とおもいつつ足をプラプラさせてカップの絵柄を眺めていると男の人に声をかけられた。
「よう姉ちゃん。暇そうじゃねぇか」
見ると、店の隅に座っていた柄の悪そうな連中の一部のようだ。残りの連中は相変わらずテーブルに座ったままこちらを見てにやにやしている。 嫌な感じだ。
あまり係わらない方が良いだろう。騒ぎを起こすのは良くない。うん。
「なんだよ。つれねぇな」
相変わらず下卑た笑みを浮かべて、こちらににじり寄ってくる。酒臭い。
「俺っちも暇なんだよ。遊んでくれねぇか?」
げへへ、と下品な笑い声。奥に居る連中もこちらを見てニヤニヤしている。
ほら、と薄汚い手で肩をつかまれそうになる。
私の悪い癖は、思うよりも早く体が動いてしまう事だろう。
その手を掴み、思いっきり投げ飛ばしてしまった。いかんいかん。
「すまんな。お前たちと遊んでやるほど暇ではない」
一応投げ飛ばしてしまった男に謝っておく。
男は一瞬何が起こったの分からなかったのだろう。呆けた顔をしていたが、間を置いて真っ赤になった。
「こ、この!」
しまった。逆効果か?
起き上がって殴りかかってきた、その男をかわして足払い。おもしろいようにすっ転ぶ。
あ、またやってしまった。
「だから今はそれほど暇ではないと……」
「このやろう!」
隅で固まっていた男たちも、ただ事ではない。とでも思ったのかこちらにやってくる。……来なくていいのに。
「だから今は遊んでやれないと言っているだろう」
物分りの悪い連中だ。
だが、これは良い機会かもしれない。ずっと小屋の中での鍛錬ばかりだったから少しくらい体を動かさないと勘が鈍る。
「女ごときにコケにされて黙っていられるかってんだよ!」
女ごとき……だと?
再び殴りかかってきた男を、今度はその腕をねじ上げ一気にひねり倒す。
ごきり……と小気味良い感触。関節がはずれた音だ。
「女如き、女如きに何が出来るか味わってみるか?」
こういう輩はどこの世界にもいるものなのだろう。女の癖に……女なのに……女で武術をやって何が悪い? そもそも女が女らしくしなくてはいけないと誰が決めた!
「気が変わった。少し遊んでやる」
そう、こういう奴ら。男とは越えるべき壁、粉砕すべき敵!
後ろ手に、スカートに挟んだままだった鉄扇を抜き取る。ついでに左手の腕輪を右手に握り締めた。
相手は5人。中にはナイフをチラつかせている者も居る。
ナイフは鉄扇でさばく。左肩の傷に響くから受ける事は出来なくても、受け流すだけなら問題は無い。
あまり広いとは言いがたい店内は、椅子や机も邪魔して思う様動けない。が、私には有利だ。一度に掛かって来られる心配は無い。
左の鉄扇でさばき、開いた腹部に右拳を叩き込む。代用品ではあるが腕輪はなかなか使い心地は悪くない。すこしコツが要るが素手よりましだ。
二人ほどこん倒させたが状況は良いとは言いがたい。何よりスカートが邪魔だ。
そう広くない足場で長いスカート。実はさっきから2、3度踏みつけてそのたびに体勢を崩しそうになっている。
ちらり、と店内を見回すとまだ倒れていないテーブルが2、3ある。あそこなら……
思うより早く椅子を蹴り上げ、隙を作り、テーブルに駆け上がる。
繰り出されるナイフを蹴り上た。と、不意に足をつかまれ引き摺り下ろされそうになるが、もう一方の膝で相手の横顔を蹴る。
やはり少しなまっているな。体が重い。
当たり所が良かったのか、そのままこん倒してくれたので残りは2人。
と、相手はこちらを警戒してか遠巻きにこちらに身構えている。
なにかごにょごにょと言っているようだが良く聞き取れない。
「……前の敵を捕らえよ、地縛」
男がそう唱え終わると同時に足元がぐらつく感覚。魔法?!
瞬間、足場にしていたテーブルを蹴って男の方に跳ぶ。直後、テーブルのあたりの地面が(酒場の床は石を敷き詰められてできていた)揺れたかと思うとそのテーブルが泥沼にでも落ちたかのようにずぶずぶと地面に飲み込まれていった。
あぶないあぶない。そういえば魔法なんてものもあったな。
「くそ!巌窟なるガイル……」
詠唱?! ……させるか!
腕輪を左手に持ち変えると、呪文を唱え始めた男の口にそのまま右手を突っこむ。そして、そのまま縦に握りこぶしを作る。
かこん。
「あふぁ、は、はぅ」
男の顔が、見たことが無いくらい縦長になる。顎がはずれたのだ。
うーーー。汚いな。唾液にまみれた右手を思わず男の服に擦り付ける。魔法を発動させるには詠唱と掌相が必要だとベリルが言っていた。
しゃべる事が出来なければ魔法も使えないだろう。
残るは一人。
いつの間にか、店の外や入り口には人だかりが出来ているようで、なにやら騒がしい。まずいな。
顎を外された男は戦意を喪失しているので問題は無いだろう。
残った一人はナイフをこちらに構えながら、逃げる事も襲い掛かる事も出来ずにおろおろしている。
「まだ遊ぶのか?」
もう勝敗は目に見えているのだからやりあう必要はなさそうだが。
男ににじり寄ろうとしたその時、不意に足がもつれて体勢が崩れた。
「な?!」
見ると、倒したと思っていた男が倒れたまま私のスカートの端を掴んでいた。
まずい! 一瞬視線が外れた瞬間を狙って残った一人がナイフを振りかざして襲い掛かってくる。
体勢を立て直し、迎撃――――
「我が前の敵を捕らえよ――氷縛」
一瞬にして目の前の男が襲い掛かってきた体勢のままに巨大な氷に閉じ込められた。
あまりにも早すぎて何がどうなったのかさっぱり分からない。これが魔法? とりあえずスカートを掴んでいる男の顔面を蹴り飛ばすと人混みに目を走らせる。
さっきの声はこちらから聞こえてきたような……
丁度それらしき人物が人混みを掻き分けて出てきた。
5人ほどの小隊。見覚えのある青銀の髪。
や、やばすぎる。なぜ、よりによって一番今会ってはいけない人物がここに!
落ち着け、今私は変装している。うん。大丈夫だ。ばれたりしないはず。うん。
幸いベリルも私とは気がついていない様に見受けられる。
大丈夫大丈夫。
と、店の奥から慌しい足音。
「大丈夫かマイカ! ……て、ベリル? 何でここに」
……忘れてた。こいつがいた。
「殿下。やはりここでしたか。で、マイカもここに居るのですか?」
居ない、居ないぞ。私は今別人……
ベリルがアゲイトに話しかけている隙に、気付かれないようにそっと入り口目指して2歩、3歩。
「何処へ行かれるんですか?」
ベリルと共にやってきた、おそらく騎士団の一人と思われる人物がこちらに気がついた。
話しかけるな! ……あれ? どこかで見たような。
「殿下とご一緒でなくてよろしいのですか?」
あーーーー! そうだ。竜に乗るときにアゲイトに話しかけてきた男!
こいつにはアゲイトと一緒に城を出るところをバッチリ見られている。誤魔化さなくては。
「あ、いや。いいんだ」
そそくさと立ち去ろうとしたその時、ベリルと目が合ってしまった。
私の馬鹿。ベリルなんて見ないでさっさと立ち去ればいいのに。
「え……と。その」
まずい。非常にまずい。
別人だと分かっていても、あの冷血漢メガネを髣髴とさせるその視線で絡め取られると、蛇に睨まれたカエルの様に身が竦む。何時間説教を食らうのだろうか……
「まさか、マイカ……ですか?」
ひぃぃ……ば、ばれた。
なんだか泣きたくなってきた。
「わ、私はその、あの、えっと。アゲイトが」
「殿下が?」
「外に出してやると……」
「……殿下?」
再び視線はアゲイトに移される。
ほっと、一息。どうにもあの目は苦手だ。
「あ〜〜〜。いいだろ? あのままじゃ窮屈そうだしよ」
「訳は城に帰ってから存分にお伺いします。マイカ」
「はいぃ?」
……変な声出た。
ベリルは、少し怪訝な顔をしたが直ぐに元の無表情に戻ると
「貴方は私と共に城に戻ります。殿下はご自分の竜で戻って頂きます」
と言って私の手をとって歩き出した。
「あ、一寸待って。手を洗わせてくれないか?」
さすがに唾液が付いた手など気持ちが悪い。
店の人に頼んで手を洗わせてもらい、再びベリルの元に行く途中アゲイトとすれ違う。
すれ違いざま、ふわりとアゲイトから花の香りの様な芳香が漂ってきた。
あれ? 香水なんてつけてたか? 竜に乗ったときは気がつかなかったが。
ふとアゲイトを見上げると、アゲイトは何か言いたげな表情をしていた。
「マイカ―――」
「ねーーー。赤毛さん。まだぁ?」
アゲイトが何か言いかけたその時、店の奥から甘ったるい女の声が聞こえてきた。
振り向くと、2階へ上る階段から金髪の、なんと言うか、豊満な体つきで胸元の大きく開いた服を着た色っぽい女性が、アゲイトに手を振っていた。
ん? たしかアゲイトは店の者と話があると……
「マイカ! 誤解するなよ? あれはこの店の女郎で……」
「ねぇ。赤毛さんたらぁ」
女はこちらに寄ってきて、アゲイトの腕に手を回す。
「だから今日は違うって言ってるだろ」
今日は……ねぇ。
「あらやだ。そんな事言って……ねぇ。今日は泊まって行けるんでしょ?」
女は腕に手を回したまま、アゲイトにもたれかかるように頬を摺り寄せる。
……そういう事か。つまり私を連れて、とか言うのは言い訳なんだな。
「離せって。おい! マイカこれは本当に違うんだって!」
「私に言い訳する必要は無いだろ」
アゲイトがどのような女性と付き合おうが私には関係ない。
そういえば、ベリルはアゲイトを色ボケ殿下と言っていたが女性にだらしが無いという意味なのだろう。現に私は初対面で押し倒されたしな。
「行こう。ベリル」
「殿下。女遊びもほどほどにしてくださいね。それとお早めに城にお戻りください。今日中に」
ベリルはそう念を押すと店の出口へと向かう。私もその後を追った。
「だから誤解だって言ってるだろう!」
背後でアゲイトの往生際の悪い声と、女の甘ったるい声がする。
が、私には関係の無いことだ。……関係が無いのに妙に腹立たしい。外出の口実に使われたからだろうか。ちょっとだけいい奴かもしれないと思ったのだが。
店を出ると、店の入り口には馬くらいの大きさの小型の二足歩行の恐竜のような生き物が5匹つながれてた。
ベリル曰くこれも竜の一種らしい。こちらの世界では馬よりも小回りが利く乗り物として利用されているらしい。
「スティーブ、後の処理はまかせました。私は先に戻ります」
そう言うとベリルはその恐竜(エルペタと言う)に乗った。
私もベリルの前に乗せてもらうと、そのエルペタの腹を蹴って走らせる。
おぉぉ。重心が妙な感じだが乗り心地はそう悪くない。
ふと気がついたが、ベリルはいつも自分の事は俺と言うのに他の人の前では私、になるらしい。どうでもいいか。
来る時は空からだったので近く感じたが、陸路では結構距離もある上に城は小高い森の奥にあることが分かる。
頬を撫でる風も空とは違う。森に生えている樹木も日本のものとはやはり違う。
久しぶりの日の光と風と景色を存分に堪能して私は城に帰りついた。
小屋に戻って、ベリルに小言を言われるのを覚悟していたが、意外にもベリルの口から出た言葉は疲れていないか? とか、腹は減っていないか? など、私の身を案じる物だけで、大丈夫だと言うとそれっきりどこかへ行ってしまった。
まぁ、ああ見えてそれなりの役職についているようだから忙しいのだろう。
ベリルが去った後、来ていた服を脱いで元の動きやすい服に着替えた。
夕食後もベリルは普段と変わらず、小言や説教も無かった。
すこし拍子抜けしたが、決して愛想を付かされたわけではない事も感じてほっとした。
ベリルの立ち去り際にもう一度だけ謝罪すると、ベリルは分かった。とでも言いたげにぽんぽんと頭を数回撫でてくれた。
子ども扱いされているよな気もするが悪くは無い。隼人も仲直りの時はよくこうしてくれた。
今日はいろいろあったが良い夢がみれそうだ。
私は少しだけ幸せな気持ちで眠りに就いた。