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一文字タイトル・1,000文字小説シリーズ

作者: 日下部良介

 一人の宇宙飛行士の葬儀が厳かに執り行われている。その遺影には華やかな宇宙服を身にまとい満面の笑みを浮かべている彼の姿があった。





 宇宙飛行士になりたい…。

 彼がそう思ったのは当時テレビのニュースで話題となったアポロ11号の月面着陸がきっかけだった。彼はまだ5歳だった。

 宇宙飛行士になりたい。けれど、まだ子供だった彼には漠然とした夢でしかなかった。小学生の頃を腕白に過ごしていた彼はこれまたテレビドラマの影響で刑事に憧れた。

 彼が中学生になると、小さかったころの夢を呼び覚ます出来事があった。映画『スターウォーズ』の上映だ。広大な宇宙で繰り広げられる物語は彼の心に再び宇宙への想いを灯した。





 窓の外には青く輝く地球が見える。宇宙ステーションから、そのきれいな星を眺めながら彼は口を開いた。

「それが僕の原点だった」

 彼はジャーナリストのインタビューに答えている。

「そのおじい様はそれからどうされたのですか?」

「当時、宇宙飛行士になることは簡単ではなかった。まず、飛行機のパイロットを目指して猛勉強をしたそうです。それで、有名国立大学に合格した。けれど、祖父は生まれつき目が悪かった。片眼の視力がほとんどなかったんです。パイロットはおろか車の免許さえ取ることが出来なかった」

「それじゃあ、あなたはおじい様の夢を叶えようと?」

「いや、これはあくまでも僕自身の夢でした。確かに、祖父には子供のころから宇宙の話をたくさん聞かされました。祖父は宇宙飛行士になる夢が実現できないことが判ってからも勉強だけは続けていたそうです」

「それでは、おじい様はご自分のお子さん、つまりあなたのお父様にも夢を託したのですか?」

「あいにく祖父は女の子しか授かりませんでした。僕の母です。母は普通のサラリーマンと結婚しました。そりゃそうですよ。宇宙飛行士なんてそんなにいませんから」

「そのご両親はあなたが宇宙飛行士になることを…」

「めちゃくちゃ反対でしたよ。でも、祖父が亡くなったのをきっかけに僕をアメリカに行かせてくれました。以降のことはお話ししなくてもお解かりかと…。では、そろそろ時間なので」

 ジャーナリストは偵察機のコクピットへ向かう彼を見送った。フライトスーツがとてもよく似合っている。コクピットに乗り込む際、彼がVサインをして笑った。ジャーナリストはその時の彼の姿をカメラに収めた。その後、彼がステーションに戻って来ることはなかった…。


 


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― 新着の感想 ―
[一言] スペースシャトルが地球の大気圏内で爆発した映像に、衝撃をうけました。宇宙は何年たっても、冒険の世界のままかもしれませんね。
[一言] 宇宙飛行士・・・・・・私も子供の頃、憧れました。 もちろん、スターウォーズのファンです。 GWには、1から6までをずっと通してみてから、最新作を見ました。
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