うさぎとアリスは出会わない。
アリスは思い出した。
あの男を見たことがあると。
ルイス=キャロルが書いた不思議の国のアリスという物語を知っているだろうか。
話の内容は知らずとも、題名だけは聞いたことがあるはずだ。
『私、有村ありすは“アリス“だった。』
こんなことを言えば頭のおかしい子だと思われ、病院に受診することを勧められるだろう。
しかし、私はアリスだったのだ。
童話のように、小動物が二足歩行で時計を持って走って行くことはなく、あくまでそう呼ばれる少年であったが、私は白うさぎと出会い、不思議な世界へと行き、最終的に…死んだ。
女王が怒り、城の兵士に胸を刺され、死んだのだ。
詳しい状況はあまり覚えてないし、正直何がなんだか分からない内に死んだので怒りやそのことに対して引きずるようなことはない。
ない、のだが。
目の前にいる白髪の美少年には決して近づきたくないのだ。
とある日。
通りすがりに見ただけだった。
普通、教室で騒いでいるときに廊下なんて見ない。
そう思ったし、単純に白うさぎの声が聞こえたから見てしまった。
ぱちり。
目があったと感じた。
その場には私以外にも大勢いたし、ライブに行ったことはないが、たまに聞く自分の方を見てくれたと言う現象のように目があったと感じたのは私の方だけだったのかもしれない。
実際、今日の放課後まであいつは私の所に訪れることはなく、いつものように授業を受けてほどよい疲れと共に自宅に帰るために玄関に向かう途中だった。
「アリスちゃん♪」
猫なで声と共に肩に置かれた手に身体がぞわぞわする。
鳥肌立ったんじゃないかな、袖をめくって確認したい気持ちがほんの少しあったがそんなことを気にしている場合ではない。
思いっきり顔が引きつっているのが自分でも分かるが何度も脳内シュミレーションしたあの言葉を言わねばという使命感を私は持っていた。
「えーっと、隣のクラスの白藤くんだよね?どうしたの?」
い、言えた!
若干の棒読み感は否めないが、言えたよ!
白うさぎはきょとんとした顔をしてから、にっこりと笑って言った。
「やだなぁ、アリスちゃん!あ、今は有村ありすって言うんだっけ?俺はね、白藤白兎!今の名前も好きだけど、アリスは特別に白うさぎって呼んでいいよ!」
こっちの事情などおかまいなしとばかりににこにこしながら自己紹介をしてきやがる。
「白うさぎ?何言ってるの白藤くん。それに私達、初対面だよね?」
眉を寄せて困った顔を意図的につくる。
「あはは!アリスちゃんってばおもしろーい!あ、そっか!俺は毎日アリスちゃんのこと見守ってたから初めて会う気がしないけど、今世では初めてだね!でも大丈夫!アリスちゃんのことなら何でも知ってるよ!」
怖い怖い怖い!
何言ってんのこいつ。
「もうアリスちゃんのお父さんとお母さんには挨拶を済ませたし、アリスちゃんと仲が良い友達にも俺と付き合ってるって言ってあるから!」
「 ……!?」
ヤンデレ!?ストーカー!?
何でもいいけど怖すぎるよ!
私は勢いよく玄関を飛び出し、白うさぎを撒いた。
「はぁ。はぁ。疲れたー」
自宅近くの公園まで行き息を整えていると、
「アリスちゃん。公園デートしたかったなら恥ずかしがらずに言ってくれれば良かったのに!」
…公園デートしたいとか一言も言ってない!
終わり。
(アリスちゃん足速いけど、俺って白うさぎだからすぐ追いつけちゃうんだよね♪
あー!アリスちゃんほんとかわいいなぁ♪ )
読んでいただいてありがとうございます!!
感謝!感激です!
オムニバスみたいな感じでうっすらと続きは考えているんですが、続くかは分かりません!
感想など貰えたら書くエネルギーになるかも?
♪( ´▽`)わくわく