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海の防人達  作者: 月夜野出雲
第1章 海の防人達
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茶会(中編)

このお話は創作ですので、ご了承の上でお楽しみ下さい。

 「ソーナー探知!本艦内医務室ドア前!・・対潜戦闘用意(ヨーイ)!」



 一気に緊迫する医務室内。潜水艦の攻撃から、岩代と中海の自身をまもる(すべ)は、デコイと回避行動位である。そして、そんな彼女らの前に立つ、対潜戦闘に強い土佐。




 ○某国沖40km・『DDH186 とさ』艦内医務室・(ヒト)()(ニイ)(ナナ)(インディア)



 静寂に包まれる医務室。



 軽く開けられたら扉から、女性自衛官が顔を覗かせる。『紺』の作業着を着ている彼女、階級は『1佐』である。



 「わ、私です。土佐3佐、私ですよ。お、お久しぶりです。こ、この前の演習では・・・・」



 「申し訳ありませんが、ご招待した覚えはありません。ですが、『とさ(わたし)』に乗艦された以上、()()()のやり方で、1佐(SS)を歓迎いたしますがよろしいでしょうか?」



 かなりイライラしているようで、言葉にもトゲがあるがそれ以上に、いつの間にか気をつけの姿勢をとっているのだが、目つきはかなり鋭くなっている。



 「土佐ちゃん、そんなにイライラしていると眉間にシワが残っちゃうわよ?ほらぁ、お茶でも飲んで落ちつきましょうよ。ね?ね?これから一緒に演習もするそうだし、仲良く・・・ね?」



 岩代は、土佐が飲んでいた湯呑みにお茶を継ぎ足し、押し付けた。

 土佐は渋々湯呑みを受け取るが、1佐を睨みつけたままで飲もうとはしない。




 「あ・・・あの・・・」




 会話の切れ間を探っていた中海は、おずおずと会話に入ってきた。



 「どうしたの?中海ちゃん。」



 「はい、失礼とは思いますが、私は・・・その・・・こちらの1佐さんを存じ上げていないのですが・・・」



 「はい、わ、私は・・・」



 医務室内に入った黄龍が自己紹介しようとした。



 「潜水艦『そうりゅう型・12番艦(末妹)』で『SS512 こうりゅう』です。それで、ご挨拶とは?黄龍1佐?」



 黄龍1佐の言葉に被せるように、先程よりも威圧的になる土佐。張り詰めすぎて一触即発寸前である。



 「こ、今回の・・・え、演習で、い、一緒にさせていただくので、その挨拶にと・・・。」



 「そうだったんですか。それにしても、あなた(SS)()()()に直接乗り込んでくるとは思いませんでした。てっきり、私に対しての“御挨拶”と言ったら、魚雷発射管に注水でもするのかと思っていました。SHー60(ロクマル)K(対潜哨戒ヘリ)、(フタ)機で追いかけて差し上げましょうか。追いかけっこはお得意ではありませんでしたか?黄龍1佐。」



 「SH!!、や、やめて下さい、土佐3佐!い、岩代3佐!たたた、助けて下さいぃ!!」



 素早く岩代3佐の後ろに隠れる黄龍1佐。岩代は背中に黄龍(潜水艦)がいるという状況の中、湧き上がるゾワゾワするような感覚を振り払うように、土佐と対峙する事にした。場の悪さに『何とかしなければ』と言う思いからでもある。



 「土佐ちゃん?そろそろいい加減にしましょうか?黄龍1佐さんも怯えてるし、中海ちゃんなんか完全に存在が空気よ?これが土佐ちゃん流の歓迎方法なら、たいしたものよねぇ。」



 「私の仕事は対潜哨戒も含まれています。それに、潜水艦に対して警戒するのは当たり前です。」



 「でも、味方よ。同じ自衛艦旗を掲げてるのよ?」



 「私にとっては標的です。」



 土佐と岩代の言葉の応酬が続く中、どうして良いかわからずオロオロする中海と、考えこむ黄龍。



 「ひ、1つ確認します。と、土佐3佐・・・あ、あの時、なぜ『()()対潜戦闘』と言ったのでしょうか?」



 『しまった』と書いてあるような顔をする土佐。岩代と中海は疑問を浮かべている。



 「え・・・?『教練』って・・・?聞こえた?中海ちゃん。」



 首を横に振る中海1曹。岩代と中海には聞こえてはいなかったようだ。なぜなら・・・



 「と、土佐3佐は、『教練』だけ声を抑えていました。私の(ソーナー)では聞こえましたが、お二方に聞き取りは難しかったと思います。」



 「土佐ちゃん、もしかして“黄龍1佐さん”が来るの、わかってたのかしら?」



 「・・・はい、本艦(とさ)より東・約10マイル(16km)程より、追跡はしていました。ただ黄龍1佐と断定が出来ていませんでした。」



 「でも黄龍1佐だと、どこか(・・・)で断定出来たのかしら?確認だけど。」



 「・・・はい」



 ここまで聞き終えると、岩代は唇に指をあて記憶を探るような素振りを見せる。



 「えっと・・・とりあえず、クッキー食べませんか、黄龍1佐?土佐3佐も一緒に・・・どうでしょうか?」



 黄龍にクッキーを差し出すと、土佐にもう一度勧める中海。



 「もしかして土佐ちゃんって、黄龍1佐さんのこと、好きなのかしら?」



 再び訪れる沈黙。黄龍はクッキーを食べようとしたまま、中海はお茶を湯呑みにお茶を入れようとしたまま、土佐は立ちすくんだまま、それぞれの時間が止まっている。

『とさ』『いわしろ』『なかうみ』『SS512 こうりゅう』は架空の艦です。


※2015/10/26 土佐のVLAに関する台詞を削除。並びに他の台詞の一部修正

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