第5話 女性が弱いと思ってはいけない
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「はぁああああッ!」
自身が出来る渾身の一撃。
当たれば(・・・・)確かにダメージを与えられるだろう。
しかし、俺の渾身の一撃はあっさりとネルヴィに躱され、おまけに腹を蹴り飛ばされる。
一体その細身のどこにそんな力があるんだ?と疑いたくなるほどの威力の蹴りは、いともたやすく俺を浮き上がらせ訓練場の壁に叩きつける。
「ぐっ」
いくらゲームとはいえ痛みがないわけではないので、俺は思わず呻きながらズルズルと壁を伝いながら地面へと落ちていく。
「ここまでだな」
ネルヴィは息も乱れず飄々とそう呟く。
こうして俺の10敗目が決定したのだった……
訓練を始めて1時間。
俺はひたすらネルヴィと模擬戦闘を繰り返していた。
俺は棒を用いて、ネルヴィは両手剣を用いて戦っていたのだが勝敗は10戦0勝10敗。
ようするに一度も勝てなかったわけだ。
訓練なら何か技や型など戦い方の基礎を教えてくれるのかと思っていたのだが、ネルヴィの最初の言葉は
「模擬戦闘するぞ」
という訓練でも何でもない実践形式。
ただひたすら戦闘を行い、俺が倒れてもポーションを掛けられまた戦闘を続けるという地獄の訓練だった。
たった1時間と思うかもしれないが、この俺の教官、ネルヴィと戦うことはかなり神経をすり減らすのだ。
一撃必殺。
ただの蹴り、掌底、斬撃が一撃で俺のHPを全損させかねない威力を誇っているのだ。
俺はそれらを必死に避けながら、棒を用いて突きをひたすら突きつづけるがこちらの攻撃は当たらずむしろ反撃さえもらう始末だ。
一度〈鑑定〉でネルヴィのステータスを視ようとしたのだがレベルが足りないのか名前以外ぼやけて詳しくは見えなかった。
「大丈夫か?」
若干走馬灯のようにこの1時間のことを思い出していたが、ネルヴィに声を掛けられ意識を現実に呼び戻される。
「ああ」
壁に手を付きながら俺はヨロヨロと生まれたての仔馬のように立ち上がり、ネルヴィと共に最初の受付のある部屋へと戻る。
俺は近くにあった椅子に腰かけ、ネルヴィは受付の定位置へと腰を下ろしぐだーっと寝そべる。
とてもじゃないが先ほどの戦闘をしていたとは思えない人物だ。
「なにか失礼なことを考えていないか?」
「いや、まったく」
内心冷や汗をかきつつ、勘のいいネルヴィに恐怖を覚える。
「さて、シャオ。お前は棒の戦い方とはなんだと思う?」
唐突に。
ネルヴィが俺へ問いかけてきた。
「えーっと、突きでひたすら突く。じゃないのか?」
棒で突きを入れ、離脱し再び突きを入れてダメージを与えていく。これが俺の棒を使った戦いのイメージだ。
俺の答えは満足いくものではなかったのか、ネルヴィは俺に棒の扱い方について説明し始める。
「棒を使った戦いで最も重要なのは攻守の切り替え、攻めた後すぐさま防御へと反転出来ることだ」
「攻守の反転?」
「ああ、棒はただ突く事だけが戦い方ではない。ただ突くのであれば槍でも使ってればいい。だが棒は突き・払い・受け流しなど棒全体を使うことで様々な技を扱うことが出来る汎用性の高い武器だ」
なるほど、確かに突くだけなら槍でもいいしな。
ふむふむ、と頷きながらネルヴィの話の続きを聞く。
「その点、お前は攻守の切り替えが遅すぎる、また攻撃が単調。あれならすぐに敵に自分の動きが読まれるぞ」
ネルヴィの吊り上がった目から冷たい視線を受けながら俺は先ほどの戦闘を思い返す。
確かに俺は突きのみで戦っていたし、攻撃した後も防御に切り替えるのが遅く反撃を受けていた。
「とりあえず、今日見た限りでの課題はこんなところだな。あとは自分で考えて直していけばいい」
そういうとネルヴィは「寝る」と言い残して再び受付で寝始めてしまった。
う~ん、弱点がわかったのはいいがどうしたものか……
メニューを開いてみると、現実ではもう12時近くになっていたので俺はちょうどいいと思いここでログアウトしていくことにする。
街の中は非戦闘エリアだし、問題ないだろう。
そうして俺のプレイ初日。
いろいろあったが俺は無事ログアウトして現実へと戻るのであった――――