第52話 帰還
気づけば50話を超えていた件。
びっくりですw
「そんじゃ、そろそろ行くわ」
宴が終わった後、猿たちの寝床を借りてログアウトした翌日。
俺はネルヴィの元へ戻るため、帰りの準備をしていた。
「えー、もう行くのかよ」
「戻ってぶん殴らないといけない奴がいてな」
「そっか、それなら仕方ない」
何故かそんな言い訳で納得した孫悟空。
いや、まあ戻ったらネルヴィに仕掛けなきゃいけないし嘘ではないけどさ……
そんな感じで俺は神山から元の試練の間へ戻るため、準備を整え終えた俺は孫悟空に話しかける。
「それで、試練の間に戻るにゃどうすればいいんだ?下山でもすれば辿り着くのか?」
「あー、そういや試練の間から来たやつが来たら渡せってクソ爺が……」
そう言って取り出したのは、小さな拳ぐらいの大きさの小石。
表面には幾何学的な模様がいくつも描かれ、淡く光を発していた。
「帰還って唱えたら戻るって言ってたかな………」
首を捻りながら呟く孫悟空に俺は若干の不安を覚えた。
これで帰れなかったら下山か、死に戻りしか方法が無くなってしまう。
「ま、なんとかなるさ!」
そう言ってぐっ、と親指を立て突き出してきた。
これで帰れなかったら頬っぺた引っ張ってやろう。
そうして小石を握り締め、俺は最後に別れの言葉を告げる。
「それじゃ、楽しかったよ」
「いやー、久しぶりのお客さんは楽しかったしこっちとしてはまた来てほしいね!」
「ウキキィー」
孫悟空も猿たちも笑顔で、それぞれ餞別をくれる。
猿たちからは果物を、孫悟空からはお守り?のような物と笛を貰った。
「また、遊びにきてよ!」
「機会があったらな」
笑顔でまた会う約束をした俺は手に小石を持ちながら帰還、と呟いた。
帰還と呟いた瞬間、小石から漏れ出る光が徐々に強くなりやがて―――――――
俺一人を呑み込み、神山から姿を消したのだった――――――――
光に呑まれた俺は一瞬の浮遊感の後、目を開けるとそこは試練の間だった。
「随分早い帰りじゃのぉ~」
相変わらず本を片手に持つカルディアが、のんびりとした口調で出迎えてくれる。
「基準は知らんが一応、正規のルートを通って帰ってきたとは思うが?」
「そもそもこんなところに居る時点で正規のルートなんぞ外れておるわい」
やっぱりこれ正規のルートじゃないんだ………
まあ、NWOは自由に過ごすっていう名目上メインストーリーというものは存在しない。
この世界に生きる人々と関わることでクエストや、知られざるストーリーが発生し、同じものは2度と発生しない。
試練の間の様子は全く変わっておらず、カルディアが一人どこにあったんだ?と思うロッキングチェアに座り本を読んでいる。
「それで試練は終わったのか?」
「それは儂が聞きたいところじゃ…………」
確かにそれもそうだ。
俺は適当に壁に腰かけ、餞別に貰ったアイテムを見ていくことにする。
果物……はまあ普通の食糧だった。
幾つか街では見かけないものもあったが外見的に見たこともあるものが大半だ。
問題は…………
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【試練の証】
特殊アイテム
試練に挑み、クリアした者の証。
品質 EX
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【雲の笛】
特殊アイテム
とある神山への道を開く笛。
神山の主に認められた者しか手にすることが出来ない。
尚、捨てることもできない。
品質 EX
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試練の証はいいとしよう。
ぶっ飛んでるのは笛の方だ。
「なあ、神がいる領域にそう簡単に行けるもんなのか?」
ふと、生じた疑問をカルディアに問いかければ、帰ってきたのは呆れとため息。
「そんなわけないじゃろう、神に会うなどよっぽどのことが無い限りありえんことじゃ。儂みたいな契約によって人と関わる神もいるが大概の神は自身の領域に籠っておる」
となると、この笛やっぱりヤバイもんじゃん。
完全に神域へのフリーパスじゃないですかー。
カルディアに笛を見せれば、目を真ん丸と見開いて驚いている。
「お主よっぽど気に入られたのじゃな……」
「特に気に入られることした覚えはないんだけどな」
ほんとなんで気に入られたのかが分からん。
普通に猿蹴散らして、戦っただけなんだけど。
「とりあえず、無事試練の証も入手したようじゃの」
「そういや、これなんなんだ?」
試練の証。
何が試練だったのかすら分からんが、貰ったということは一応試練をクリアしたのだろう。
「それは所謂、神に認められた者の証じゃな」
「どういうことだ?」
そう言って説明れたのは証の意味。
神に認められた者というのが本当の意味だが、神がその者の何を認めたかは神本人にしか分からない。
カルディア曰く、俺が持つ加護とは別のものらしい。
加護とは神が気に入った人間にのみ与えるものであり、それこそ所持者は数えるほどしかいないらしい。
ただ、腑に落ちないのは俺自身の何を認められたかということだ。
確実なのは、戦う力ではないということ。
現に孫悟空と戦い、敗北しているしな。
「力とは戦うことだけではない、勇気を持つもの、器の広いものもまた力じゃ」
確かにそうだが………
俺の求めている力とは、戦う力なのだ。
勇気も器も、結局自身の戦闘力を上げるものではない。
「不満そうじゃの」
「まあ、求めているものと違っていたからな」
落胆が無いと言えば嘘になる。
だが、立ち止まっていても仕方がない。
一旦、ネルヴィの元へ戻るため俺はカルディアに訓練場へ戻る方法を尋ねる。
「簡単じゃ、その門を潜り帰りたいと願えばここに来た場所へ戻れるぞ」
「分かった、たぶんまた訪れるだろうからよろしく頼むよ」
「お主も諦めんやつじゃのぉ~」
「願いを叶えるには死に物狂いでやらなきゃな」
軽く笑った俺は門を潜り、訓練場の祠へと戻る。
こうして俺の試練は神山へのフリーパスを手に入れ終わったのだった――――――
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