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第50話 勝負の行方


「くっ………」


重く圧し掛かる攻撃に、思わず呻いてしまう。


「あはは、まだまだだよぉ~」


まるで玩具で遊ぶかのように。

にこやかに繰り出される棍の連撃。


威力、スピード、技と技のつなぎ。

全てにおいて別次元とも言える出鱈目な存在。


斉天大聖―――――


美猴王など様々な名があるが、孫悟空という名がよく知られているだろう。

かつて天界に己こそが正義だと、ケンカを売った歴史上の人物。


最終的には仏となってはいるが、かつては天帝すら手を焼いた神の中でも屈指の問題児だ。


それが今、俺と戦っている相手である。


(やっべぇ……、勝てる気がしねぇ……)


明らかに格が違う。

今でさえ辛うじて防いでるいるだけであり、時折混じってくる体術には反応も出来ずHPは減っていく一方。


おそらく、これでも手を抜いているのだろう。

笑っているのがその証拠だ。





まるで、俺を試すかのように――――――






(なるほど………、確かに試練だなこれは)


まあ、目の前の幼女(こいつ)にはそんな気はないのだろうが………


防いでいてもなお衝撃により手は痺れ、HPは減っていき、攻撃に移ろうにも連撃の速さに攻勢にでるタイミングは掴めない。


「ほらほら、頑張らないと死んじゃうよ?」


無邪気に告げられる死の宣告。


さすがに、ここまで言われて黙ってられる性分じゃない。


「随分と余裕だな!」


「まあね~」


くそっ!!


俺は脳をフル回転させ、現状打破の策を模索する。


目まぐるしく打ち付けられる棍。

目に見えるような大振りな一撃ではなく、コンパクトな小さな一撃。

だが、その小さな一撃は無数に紡がれる。

一撃が放たれれば、すぐさま次の攻撃態勢へと移る滑らかな体裁き。


隙がない。


この一言に尽きた。

小さな一撃が積み重なり、それはやがて大きな一撃となって俺に襲いかかる。


特に注目すべきはその技の速さだ。

一撃と一撃の感覚が短い。

だからこそ、驚異的なスピードで俺のHPはガリガリと削られていく。


(一旦仕切り直しを図るべきか………)


そう考えるがそれを相手が許してくれるとは考えにくい。



う~ん、となるとやっぱり……捨て身か。


最近多いなぁ~と思いつつ、俺は頭の中でこれからの行動を思い浮かべ僅かにため息をつく。


まあ、何もしないよりはマシだと思うんだけどなぁ……

もうちょと格好よく戦いたいとは考えるが、性格的にそれは無理だろうな~と一人自己完結した。


ごちゃごちゃした思考を一気に纏め、あとは実行に移すのみ。


一矢報いる。


そんな想いを胸に秘め、俺は反撃の機会を窺うのだった―――――――















「……驚いたなぁ」


驚愕した表情で呆然と呟く幼女。

その視線の先にはもくもくと土煙を上げる岩石の残骸。


「あー、やっぱこういうことはするもんじゃないな………」


その岩石の下から這い出てくる黒い影。

声はその影から発せられていた。


「随分と無茶したみたいだけど、大丈夫かな?」


「これで大丈夫だったら俺はびっくりだよ」


満身創痍。

土で汚れた衣はところどころ破けており、HPゲージは残り2割といったところ。


まあ、とりあえず距離を開けるという目的は達成できたわけだ。


「まさか、自分から攻撃を受けて強引に距離を取るとはね~」


「あいにく、これしか考え付かなくてな」


薙ぎ払いに合わせて、俺は宙へと自ら飛んだ。

薙ぎ払いを棍で受け止め、その勢いに任せ強引に距離を取る……というのが俺の実行した作戦だ。


まあ、吹き飛ばされた方向に岩石があったおかげでなんとか留まれたが、あれが無かったら岩山のふもとまで転がり落ちていただろう。


おかげで体は岩石に叩きつけられ、岩は粉々になったわけだが………




「あはは、面白い!面白いよシャオ!」


幼女は声を上げて笑い出す。

その瞳には好奇心の塊といった具合に爛々と輝いていた。


う~ん、なんか余計に闘志を燃やさせちゃったぽいな。

残りHPも少ないし、あんまり本気になられると困るんだが………


「シャオ、次は何を見せてくれるのかな?僕はワクワクして興奮が収まらないよ!」


興奮しきった様子でこちらに語りかる幼女。

その様子に俺は既視感を覚え、確信する。



ああ、こいつも戦闘狂(バトルジャンキー)だ………と。


思い出すのはネルヴィとの訓練の日々。

ネルヴィも戦う最中に笑い出すからな…………


自分の師匠と同類だとくだらないことを考えていた俺は、目の前の幼女が動き出す前に攻撃するため思考を一気に切り替える。


距離も十分。

おそらくもう一度接近されたら確実に勝ち目はない。



なら――――――――









俺は一気に前へと飛び出した。







「あれれ?」


ただの突進に失望したのか、幼女は不思議そうにして迎え撃とうと動き出す。


まあ、そうなるよな。

だが、こっからは一か八かの大勝負。


俺は手に持った棍を握り締めると、一気に持ち上げ―――――――





「そいやぁあああああああ!!」








――――――――――ぶん投げた。






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