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第40話 次の街への手がかり

デートがあった日の翌日。


「いつもの物を貰えるかな?」


「お久しぶりですね、エランさん」


最近は俺以外にも料理屋を出したことで客が減り、お客さんとも会話する機会が増えてきた中、かなり初期の方から俺の店に通い続けてくれているのが、この目の前にいる男性のエランさんだ。


「今日もまた情報集めですか」


「そうだね、手がかりは何個か見つかってはいるんだけど確定的な情報が無くてね」


エランさんはいわゆるトッププレイヤーと呼ばれるNWOでもかなり有名なプレイヤーだ。

いつも優しそうに微笑んでいるが、長剣を用いた戦闘技術はNWOでも1,2を争う強者(つわもの)である。


「シャオ君は何か手がかりとかは見つけてはいないかい?」


「手がかり……ですか」


エランさんたちトッププレイヤーが探しているのは、次の街の情報である。

トッププレイヤーなど、誰よりも先に未知のフィールドに行き狩りや素材を手に入れたい人たちがほとんどだ。

そのため、近隣のフィールドでの狩りで飽きてきた人々が血眼になって次の街を探しているのが現状である。


だが、ここで問題になるのがNWO独特のシステムである。

多くのゲームは広大なマップがあって、そこに街が置かれているのが基本的なのだが、NWOは違った。


NWOのフィールドマップはクレアシオンを中心として、多くが未開の地としてプレイヤーのマップに表示されており、自分たちで実際にそこに行き、街に戻ることで開拓とみなされマップは広がるのである。


ただ、一度自分が行った場所は他のプレイヤーにマップ情報を渡すことが出来るのでマップ屋といった稀有なプレイヤーも存在していたりする。


そんなシステムのため、次の街に行くにも自分たちで情報を集め、探し出すしかないのだが………


「βテスト時に発見した国も探してみたが、マップが広がっているのか見つからなかった」


とのこと。

つまりマップが広すぎて探し出せないのが現状だ。

闇雲に探索しても、クレアシオンから離れれば、離れるほど敵のモンスターは強くなっていく。

また大人数のプレイヤーによる遠征も試されたのだが結果はPT全滅。

街は見つからず強力なモンスターに死に戻りにされ、また0からの探索……と無駄にデスペナルティが増えた結果、次の街の情報を集め最短ルートで向かうというのが今のプレイヤーたちの主な目標であったりするのだ。


「一応次の街と思われる情報は知っていますよ」


「本当か!?」


手がかりと言われ、俺は小声でエランさんに情報を持っていることを伝えると、ガシッと腕を掴まれすごい顔でこちらを詰め寄ってくるエランさん。


「ちょ、落ち着いてください!!」


鬼の形相ではないかと思うほど目が血走ったエランさんを宥め、俺は注目を避けるため念話で話を続けることにする。


(情報は確かにもってますけど、少し気になることがあるんですよ)


(気になる事?)


次の街と思われるウルムの街の情報を入手した際のことを、俺は思い返す。


プレイヤーの態度のせいで情報が集まらないのではないか?


ミーニャと話し合った際にでたこの結論に俺は証拠はないが確かなものとして考えていた。

もし、このまま街の情報を教えたとしてもプレイヤーたちの態度が改善されないのであれば今後も街の探索は困難になっていく。


出来る限りNWOの世界を楽しみたい俺としてはそれは望ましいものではない。


俺はその旨を伝えるか、かなり悩んでいた。

出来ればミーニャやケディアと相談してから公開したいのだが………


(エランさんは今のプレイヤーたちの行動をどう思います?)


(プレイヤーの?)


(ええ、まあ主にNPCに対する行動ですが)


そういうと少し考えるような素振りを見せるエランさん。


(正直、あまりいいとは思えないね、柄が悪いというか見下している感がある)


(なるほど)


エランさんもそういう風に感じ取っていたわけだ。

なら話は早い。


(それで、プレイヤーの話をしたってことはそれが次の街の情報に関係しているってことかな?)


(まあ、そんなところですね)


俺はエランさんと視線が合うと正直に告げる。


(プレイヤーの態度のせいで情報が隠匿されているってのが今の俺の考えです)


(それはつまりプレイヤーが嫌われているってことかな?)


(全員ではないでしょうが、多くの人はそうじゃないでしょうか)


そう伝えると黙り込んでしまうエランさん。


(なるほど、少しPTのメンバーとも話し合ってみるよ)


ひとまずこの話はここで切り上げるみたいだ。

俺は注文されていた料理を渡し、エランさんを見送る。




とりあえず、俺もケディアたちに相談だな。


俺はそう考え、ログインしているだろう仲間たちへと念話を飛ばすのだった――――


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