第35話 甘い?週末
「ごめんなさい、待たせたかしら?」
「ああ、大丈夫大丈夫。俺もさっき来たばかりだから」
まるで付き合い始めたばかりのカップルのような会話を繰り広げながら、俺とミーニャは噴水広場にて合流していた。
「っで、今日はどうする予定なんだ?」
俺はいつもの紺色のローブではなく、ティナとお揃いなのか薄い蒼のサマードレスを着ているミーニャに今日の予定を尋ねる。
「一応、エスコートしてくれるのを期待していたのだけれど」
そんな俺の質問に、最近見るようになった悪戯っぽい笑顔を浮かべながらこちらを見てくるミーニャに俺はドキッとしつつも、バレないよう平静を装った。
「まあ、ここにいるのもなんだし街を散策してみるか」
「……ノープランだったのね」
ジトッとした視線に俺は口笛を吹きながら一足先に通りの方へ向かって歩き出す。
「ちょっと!」
都合の悪いことはスルーするに限る。
駆け足で寄ってくるミーニャの気配を感じながら俺たちは商業通りへと足を進めた―――――
「ガハハ、ようシャオ。今日はまた違う女連れてデートか?」
「人聞きの悪いことを言うな、ガウス。いつ俺がデートしてたんだって話だ」
商業通り、大通りまでにはいかなくても多くのプレイヤーが露店や店を構えるこの通りは一部の商いに成功したプレイヤーが多く店を構える通りでもある。
必然的にこの通りで販売されるアイテムは割高であったりするのだが、それに見合った性能を発揮するので、βテスターや攻略組と言われるプレイヤーがよく訪れていたりした。
そんな通りの一角、俺はガウスの店を見かけたのでミーニャと共に立ち寄ったというわけだ。
「こないだティナのお嬢ちゃんと来とった奴が何を言うか」
「あれはデートじゃない、ていうかアンタのせいでアクセ買う羽目になっただろうが!!」
「はて、なんのことやら………」
「とぼけてたら済むと思うなよおっさん!?」
久しぶりに会ったガウスと軽いやり取りを交わしていると後ろの方からクイクイッと裾を引っ張られる。
「なんかすごく仲良くしてるけど……知り合いかしら?」
1人だけ会話に入れなかったせいか、少し不安そうな顔で聞いてくるミーニャ。
「ああ、悪い。このおっさんはガウス、前にティナに買ったブレスレットの製作者だよ」
「なるほど、ティナがよく話してたお店ね」
「よろしくな、嬢ちゃん」
豪快に笑いながら自己紹介するガウスと、少しびっくりしたような顔で応じるミーニャたちを眺めながら、俺は店に並んだアクセサリーに目を通した。
「随分と高レベルなアクセサリーが置いているわね」
「まあ、ガウスはそれなりに腕は立つ職人として有名だからな。結構な顧客もいたはずだ」
「へぇ………」
興味津々といった様子で並べられたアクセサリーを一つ一つ見ていくミーニャの様子に俺は微笑ましく思い、思わず口元を緩めてしまう。
「そういや、シャオ。攻略組が近々第2の都市を発見しそうだってのは聞いたか?」
「いや、初耳だな……。もうそんなに探索が進んでるのか?」
ミーニャがアクセサリーを見ている間、俺はガウスと世間話をしていた。
それにしても、第2の都市か……サービス開始から1ヶ月ほど。
南には広大な森、東には草原、西には砂漠……と次の都市を探すのに多くのプレイヤーが探索を続けてきたせいか、ようやく見つかった……といった思いが強い。
「おそらく次の都市に行くにはその都市までの道のりを守護するボスを倒さないと進めないだろう」
「βテストの時の情報か」
「ああ、おそらく複数のPTによる討伐隊が組まれるだろうがシャオは参加するつもりなのか?」
「う~ん、正直今の状態だと判断出来ないな。ボスのレベルにもよるし、何より俺がそのPTに入れるかも怪しいからな」
通常攻略組と呼ばれるプレイヤーたちは固定PTといっていつも同じ面子で行動している。そんな中に俺みたいなソロプレイヤーが入っていけるか……と聞かれたら微妙なところだ。
「実力的には問題ないと思うんだがなぁ……」
「まあ、都市が発見されたら考えるさ」
「それもそうだな」
そうして会話に一区切りがつくと、俺たちの会話が終わるのを待っていたのかミーニャがこちらを見ていた。
「終わった?」
「ん、……ってすまん、待たせたみたいだな」
「いいわよ、私もアクセサリーをじっくり見れたから」
なんというか、気を遣わせてばかりですごく申し訳ない気がする。
「それで、何か買うものはあったのか?」
「う~ん……、もうちょっといろんなお店を見て回ってからでいいかしら?」
まあ、いきなり来た店で買ったら今日の目的が終わるしな………
俺たちはガウスに声を掛け、ひとまず店を後にした―――――
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