第31話 デート?
更新頻度ががくっと落ちます。
ケディアが妙なことを言い残した後、無事にその日のうちに料理を完売させた俺は1人道具屋へと向かっていた。
「いらっしゃ~い」
元気な道具屋の店員の挨拶に軽く会釈を返し、俺は今回の目的である携帯食料を探し始める。
「二度と食いたくなくなるから」
それほどまでマズイのか、と面白半分で買いに来た俺は道具屋の端っこに積み重ねられた携帯食糧を手に取ると、さっさと支払いを済ませて店を後にする。
「思いのほかあっさりと買えたな………」
若干拍子抜けしたが、気を取り直して俺は噴水広場へと足を運んだ―――――――
「さっそく食べてみるか」
空いているベンチに腰かけた俺は買ったばかりの携帯食料を取り出して包みを解いて行く。
携帯食料というだけあって、災害時の非常食といった感じの見た目………というかこれ完全に乾パンだろ………。
包み紙から取り出した携帯食料……もとい乾パンを意を決して口に放り込むと、パキッ、と乾いた音を立てて噛み砕かれた乾パンは瞬く間に口の中の水分を吸い取っていく。
もぐもぐ。
もぐもぐ、もぐもぐ。
……………………ごっくん。
乾いた口を無理やり動かしなんとか乾パンを胃の中へと送り込むと、俺はそっと乾パンをしまい始める。
いや……ねぇ?
携帯食料っていう名前へとあの見た目から大体想像はついてたけどさ。
味がほとんどしない。
ゲームであそこまで再現する意味があるのって思うほど、ひどい食べ物だと思うぞあれ…………
あれは食べれないことはないが、ゲージが減るたびに食べるとなると気が滅入ってしまう。
確かに進んで自ら食べようとは思わない食糧だな。
そう思いながら、俺はベンチから立ち上がると宿へと向かい始める。
パサパサと乾いた口をもしゃもしゃと動かしながら、俺は宿のある商業通りへと足を進めるのだった―――――――
翌日。
今日も朝からログインした俺はいつも通り露店を開いている場所へと向かっていた。
最近、狩りをせずに露店ばっかりしていたせいか食材も尽きつつあるし、今日の料理が売切れたら終わりかなぁ~と考えていた俺はいつも露店を開いている場所へと辿り着くといつも通り店を開き始める。
「さあ~ってと、きょ「こんがり肉を10個!!!」」
………………え?
いつも通り大きく体を伸ばそうとして、それを遮るように店に駆け込んできたのは以前、草原で肉を売った女性。
「ちょっと聞いてる!?」
「あー、はいはい、聞こえてるよ」
「そう、なら早く売りなさいよ!!」
相変わらず上から目線で話しかけてくる女性に苦笑しつつも、俺はさっさとこんがり肉をトレード画面へと移す。
というか、10個って随分な量だと思うんだが………
そんなことを思いつつも、きちんと代金を払ってくれるなら客は、客。
代金を確認し、こんがり肉を相手に送る。
こんがり肉を受け取った女性は手に入れたばかりのこんがり肉を眺め煌びやかな笑みを浮かべていた。
まあ、こんがり肉を受け取ってすごい嬉しそうな顔をしてくれるのは嬉しいんだけどなぁ………
少々複雑な感情を抱きつつも、すぐさま別のお客さんが来たので俺はその対応にあたる。
(なんなんだこの客の多さは!?)
開店して数分。
今までたまーにお客が来る程度だったのに今日に限っては途切れることなくお客が来店し、料理を買っていく。
「こんがり肉3個!!」
「こっちはたまごサンド2つ!!」
「こんがり肉とたまごサンド1個ずつ!!!」
明らかにいつもより多い人の数に圧倒されながらも、足りなくなった料理を合間に作っては販売し、また料理を作って……と続けること2時間。
「すみませ~ん、完売です!!!」
いつの間にか店の前に群がる人の大群に申し訳ないと思いつつも品切れを伝える。
「えぇー、マジかぁ~」
「畜生、買えなかった………」
徐々に散開していく大群に謝りつつ、俺は露店を片づけ始めた。
(それにしても、すごい人だったなぁ……)
いままではポツポツと人が訪れる程度だったが、今日は開店直後からずっと働きっぱなしだ。
露店を片づけた後、俺は久しぶりに商業通りをぶらつくことにする。
時間で言えばちょうどお昼頃だろうか。
俺以外の料理屋はまだ少ないようで、その数少ない料理屋も人の群れが出来ていて、とてもじゃないが買えそうになかった。
「あれ?シャオ君じゃん!」
そうやってぶらぶらと散策していると前方から見知った少女が声を掛けてきた。
「よっす」
片手を上げて挨拶すれば獣人特有の尻尾をブンブン振りながら近づいてくるのはティナ。
「1人でお買いものなんて珍しいね~?」
「それはこっちのセリフだ、ミーニャと一緒じゃないのか?」
「1時に噴水広場で待ち合わせだよ~」
「なるほど」
弾けるような笑顔で喋るティナは街中とフィールドで装備を変えているのかいつものような革鎧ではなく、お洒落性を重視した真っ白なサマードレスのような服を着ていた。
「お、何々?私に見惚れちゃった?」
マジマジとティナを見ていたせいかティナがニヤニヤとした顔でこちらの顔を覗き込む。
「いやいや、確かに可愛いけど見惚れてはいないな」
苦笑しながら答える俺の反応が気に食わないのか、頬をぷくーっと膨らませた姿に再び苦笑しながらも俺たちは商業通りを歩いて行く。
「そういえば、露店繁盛してるみたいだねぇ~」
「繁盛っていうか忙しすぎて疲れるけどな」
「いいじゃん、いっぱい稼げるんだし。私なんて欲しいものがあっても装備とかに回さないといけないからカツカツだよ~」
「その分、料理は何個か送ってるだろ?」
俺が料理を作り始めた最初の頃、試しに作った料理を食べさせたのだが思った以上に好評だったので、それ以来料理を欲しいと言ってきたケディア、ティナ、ミーニャには何個か料理を送っていた。
「うん、あれのおかげで携帯食料を食べなくてもいいから助かるよぉ~」
そんな会話を繰り広げながら、並んで歩いているとティナが急に立ち止まり近くの露店へと駆け寄っていった。
「おい、どうした?」
「あ、ごめんごめん。このアクセサリー可愛いなぁ~と思って」
そういって差し出されたのはブレスレット型のアクセサリー。
おそらく翡翠を加工したものだろと思われるそれは真上に上がった太陽の光に照らされ綺麗な緑色の光を放っていた。
「そういや装備欄にアクセサリーの項目があったな」
NWOにおいて装備品というのは頭、胴、手、脚、足、首、耳、腕、指輪×2の10種類に分かれている。
その中でもアクセサリーというのは少々特殊な位置づけになっていて、それぞれ特殊な効果を付与されたものが多い。
俺はどんな効果があるのか気になったので鑑定をかけてそのブレスレットを視る。
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【翡翠のブレスレット】
アクセサリー【腕】
小粒な翡翠の原石を磨き上げ加工したものを
つなぎ合わせて出来たブレスレット。
付与効果:状態異常耐性【小】
品質 5
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「へぇ~、状態異常耐性付きか」
「うん、耐性系は便利だし、デザインも結構素敵だから欲しいなって思ったんだけど」
そうやって二人でアクセサリーについて会話していると………
「お客さん、カップルかい?」
俺がティナの横に並んでアイテムを見ていると、露店の主であるおっさんが爆弾発言を投下してきた。
「な、なっ!?」
一瞬で真っ赤になったティナを横目に俺は苦笑しながら否定しておく。
「俺がこんなに可愛い子と釣り合うと思うか?」
「そこは上手いこと口説いたんだろ?」
ニヤニヤと笑いながら言うおっさんを見て、からかっているのは分かっていたので俺は笑いながらおっさんとの会話を弾ませていく。
「うぅー」
そのままノリに乗ったおっさんとの会話をしていると隣から唸り声が聞こえてきた。
「がはは、お嬢さんがご機嫌斜めのようだな」
「確実におっさんのせいだな」
二人して笑っていると目尻に涙を溜めた少女が睨んできたので悪ふざけはそこまでにしておく。
「もう、シャオ君もおじさんも悪ノリしないでよ!!」
「悪い悪い」
いまだにご機嫌斜めのティナの様子を眺めながら俺はティナの手からブレスレットを奪うとおっさんに手渡し値段を確認した。
「あっ………」
「おっさん、これいくらだ?」
「お、そいつは………1万2000cだな」
「たっか!?」
値段を聞いたティナが悲鳴を上げるが、俺はトレード画面を開ききっちり1万2000cを送る。
「おいおい、結構な値段だと思うんだがあっさりと買うんだな」
「それなりに稼いでるもんでね」
驚いた様子のおっさんに俺は肩をすくめながら翡翠のブレスレットを受け取るとティナの腕にブレスレットを付けてやる。
「お、プレゼントかい。やるね~、坊主」
ニヤニヤとした表情で見てくるおっさん。
「悪ノリしたお詫びだな」
「そうかい、そうかい。まあ、そういうことにしておくか」
「え、え?」
悪い顔して笑う男二人の会話について行けないのか、ティナは手に付けられたブレスレットを見ながら戸惑っているティナを連れて店を後にする。
「ああ、そうだ。おっさんはやめてくれよ坊主、俺の名はガウスだ」
「俺も坊主じゃない、シャオだ」
「がはは、シャオ。今後も機会があったら買っていってくれよ」
そういって笑顔で見送ってくれるガウスに別れを告げて、俺はティナと再び噴水広場の方へと歩き始める。
「ほんとにいいの、これ?」
「欲しかったんだろ?」
「でも、あんな大金……」
一般的に一日のプレイヤーの稼ぎは3000c程である。
職人プレイヤーの場合例外は多いが、普通のフィールドで狩りをするだけならレアドロップでも手に入れない限り纏まったお金というのはそうそう手に入らないものだ。
「ああ、別にあれぐらいなら稼いでるから気にすんなって」
申し訳なさそうにするティナの姿に苦笑しながら俺は彼女の右手を掴むと、少し小走りに歩き始める。
「あっ……」
「ほら、もうすぐ1時だぞ。待ち合わせなんだろ?」
案外買い物をしていると時間などあっという間に過ぎてしまう。
その証拠に先ほどまで12時になったばかりだったのに、今ではもう1時に差し掛かろうとしていた。
二人して少し早歩きで噴水へと向かう中………
「………ぁ、ありがとう」
そんな彼女の小さな呟きはシャオは気づかないまま足を進めるのだった―――――
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