第19話 光と熱はすべてを呑み込む
暗き森の奥地を談笑しながら進んでいた俺たちだが、一向に薬草の群生地は見つからなかった。
今回の目的である暗薬草が生えていると思う場所までは着てると思うんだけどなぁ……
そうして森を進んでいると一瞬何かの気配を感じ、俺は顔を持ち上げる。
「……ん?」
俺は自分たちの足元に向けていた視線を上げ、辺りを見回し少し警戒を強める。
「どうした?」
ケディアが俺の不自然な様子に気づいたのか声を掛けてくる。
「ああ、なんか一瞬モンスターの気配がした気がするんだが……」
俺は確認の意味を込めてティナに視線を送るが、ティナも違和感を感じたのか不思議そうな顔をしながら首をかしげている。
「一瞬、何か感じたけど今は何も感じないねぇ~」
どうやらティナも一瞬だけ何かの気配を感じたようだ。
俺とティナの意見を聞き、ケディアとミーニャも警戒を強めながら辺りを見回しそれぞれの武器を手に取る。
まるで夜の帳が落ちたような真っ暗な視界で目を凝らしながら俺は周りへの意識を集中させていく。
永遠にも感じるような静寂の後、俺は確かに何かの気配を捉えた。
「来たっ!」
俺は弾けるように視線を上に向け、空中を睨むようにしてそいつらを見る。
他の3人も俺にの声につられ、視線を空中へと向けた。
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【ブラックバット】Lv6
暗い土地に生息する蝙蝠のモンスター。
暗い環境に適応し、敵に見つかりにくいよう
少しずつ黒くなっていった。
隠蔽能力がかなり高い。
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俺は鑑定でそいつの情報を確認するとすぐさま迎撃できるよう棒を構える。
「飛行型かよ!?」
ケディアが悲鳴のような驚きの声をあげながらも【挑発】を使用しブラックバットたちを集める。
現れたブラックバットは群れと言ってもいいほどの数であり、気配察知で感じる気配は余裕で20を超えていた。
「ぐっ」
ケディアの痛みをこらえるような声が聞こえてくるが、視界が悪いため俺たちはうかつに動けないでいた。
視界が悪く俺たちが動けない中、ブラックバットたちは上空から少しずつ降下し俺たちの肩、腕など防具の隙間や、露出の多いところを的確に切り裂いくと再び上空にもどりこちらの様子を伺う。
「ミーニャ!広域魔法で数を減らしてくれ!」
「分かったわ!」
必死に見えづらい攻撃をブロックしながらケディアはミーニャに援護の要求をすると再びブラックバットたちの攻撃を捌く作業へと戻っていく。
ケディアの指示を受けたミーニャは魔法の詠唱を開始する。
俺はミーニャの詠唱が邪魔されないよう、ケディアの挑発の影響を受けなかったブラックバットたちを棒を長く持ち上空に向け振り回すことで上空から叩き落とす。
「シャオ君、ナイス!」
デタラメに振った棒に当たり地上へと落下した哀れなブラックバットは再び上空へ飛び上がろうとするがそれをティナが許さない。
持ち前の素早さを生かした斬撃は弱ったブラックバットを確実に仕留めていく。
そうして僅かだが数を減らしている間にミーニャの魔法が完成した。
「……全てを灰にする偉大なる炎よ、すべてを燃やし尽くせ!フレアボム!」
ミーニャが魔法名を唱えた瞬間、圧倒的な熱量と光がケディアの上空に現れる。
「え、ちょ……まっ……」
それに気づいたケディアは真っ青な顔をするが時すでに遅し。
暗闇を切り裂く光は膨大な熱を伴ってすべてを焼き尽くす。
ドォオオオオオオン!
大気を震わす轟音は、ケディアの悲鳴を掻き消し辺り一帯に轟く。
「「……………」」
あまりの眩しさに目を閉じていた俺が瞼を開き当たりの様子を伺うと辺りの地形が一部変形し、大惨事になっていた。
薙ぎ倒された森の木々に、爆発に巻き込まれ体の一部が消えたブラックバットの死体が辺りに散乱し、またケディアがいたあたりの地面はえぐられ、そこにいたケディアも見当たらない。
俺と同じくその光景を見ていたティナもこの凄惨な光景を見て唖然とした様子で口を大きく開け目を見開いている。
「あはは……」
俺たちの後ろ。
この状況を生み出した張本人を見てみると乾いた笑いを浮かべながら冷や汗をかいていた。
(これケディア死んだんじゃないかなぁ……)
ケディアのいた場所は無残に何も残っておらず、俺はそんなことを考えていると……
ガサガサッ
突如として、近くの茂みから草が揺れる音がした。
バッと俺たちはその茂みに向かい武器を構え、警戒を強める。
さっきの戦闘ではケディアがほとんどモンスターを引き付けてくれたがそれでもミーニャ以外は多少なりともダメージを受けている。
そしてこのPTの要でもあるケディアが死亡した今、森の奥地のモンスターとの連戦はかなり厳しいだろう。
ガサゴソと茂みからの音はこちらに近づいてきている……
「来るぞっ!」
俺は声を張り上げ、茂みの音の正体が出てくる瞬間それを見た。
「「「なっ……!?」」」




