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棒を片手に俺はVRMMOを満喫する。   作者: かぼちゃ頭
第1章 新しい世界
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第18話 暗闇の中を進む

「こっち来いやぁああああぁあああ!」


ケディアがゴブリン達に向かって吠える。

ゴブリン達は一瞬硬直した後、ケディアの方へ向かって攻撃を再開する。


「あれが【挑発】か……」


【挑発】

重戦士や騎士といったタンク系のスキルが持つ【アーツ】の一つで、効果範囲のモンスターのヘイトを自分に向けさせる技だ。


その効果は凄まじく、先ほどまでバラバラに俺たちの方へ向かっていたゴブリン達はすべてケディアの方へと突撃していった。


迫りくるゴブリン達の攻撃を大楯で防ぎつつも、着実に片手剣で反撃するケディアに負けていられないと、俺も動き出す。


狙うはケディアの周りに群がるゴブリン達の外側。

集団から少し外れたゴブリン達に奇襲を仕掛け着実に1匹、また1匹と倒していく。


2,3匹仕留めた俺は一旦離脱し、もう一度奇襲する機会を伺っていると……


「おりゃぁ~」


若干間延びしたような明るい声を上げながらティナがゴブリンの群れに走りこんで行く中、先ほどの声で気づいたゴブリンが2匹ティナの方へ向かう。


ゴブリンは片手で持った木の棍棒を横にフルスイングしてくるが、ティナは軽くジャンプすることで棍棒を飛び越えそのままもう片方のゴブリンの上に着地し踏みつける。


「グギィ!?」


予想外の上からの攻撃にゴブリンは悲鳴のような声を上げる。


ティナはそのままゴブリンの上から棍棒をフルスイングしたゴブリンへ向かって、飛翔する。


ゴブリンを踏み台にした跳躍は地面スレスレを飛びながら一閃。


跳躍を生かした短剣の一撃。

すれ違いざまにゴブリンを斬りつけ、またゴブリンへと飛びかかる。


(すごい動きだなぁ……)


その光景を見ながら俺はそんな感想を抱く。

自分もAGLを重視したステータスだが、あのスピードには追いついて行くのがやっとだろう。種族の違いか、それともステータスの振り方が違うからか。


ティナの猛攻を見た俺は次にミーニャの方へと視線を向ける。


ミーニャは攻撃と回復の両方をこなせるため、俺たちから少し離れたところから援護をしていた。


いくらケディアがゴブリン達の攻撃を防いでいたとしても僅かな隙をついた攻撃がケディアのHPは削っていく中、ミーニャはその傷を癒しつつも、所々で火の魔法や水の魔法など多様な魔法をゴブリンの密集している場所を狙い次々とゴブリンを減らす。


ケディアがゴブリン達を惹き付け、俺とティナが着々と数を減らし、ミーニャが後ろから援護する。


即席のPTとはいえ、初めてにしては上出来なほうだろう。


それから数分。

最後の1匹のゴブリンを俺が倒し、戦闘を終えると全員ため息をつく。


「森の奥に進めば進むほど敵が多くなるな……」


「だんだんと増えてきましたね」


ケディアが嫌そうな顔をして呟き、ミーニャもそれに同意する。


ラビットさんのお店を後にした後、俺たちは薬草の生える場所を目指して森の奥へと進んでいた。


「最初の方は数匹だったんだけどな……」


俺も苦い顔をしながら二人の意見と同じ思いを告げる。


森に入ったばかりのころはモンスターが数匹しか出てこなかったのだが、奥へ進めば進むほど一度に出てくるモンスターの数は増える一方。

先ほどの戦闘などついに2ケタの大台を超えたばかりだ。


「それで、薬草の生えてるところまではあとどれくらいなの?」


ティナが俺に向かって訪ねてくる。


セザンさんから貰った地図を広げ、俺たちは顔を寄せながら目的の場所を確認する。


「最初に入った場所がここだから……今はここらへんか?」


ケディアが地図をなぞりながら現在地を示してみるが、全員が微妙そうな顔をする。


「……直進したよな?」


「しましたよね……?」


俺とミーニャも今までの通ったルートを確認し、不安になってくる。


「途中で何度か地図は確認したよね?」


「ああ」


ティナが確認をとり、ケディアが肯定する。


一応マップ機能はあるのだが、フィールドマップは自分で言ったところまでしか記録されないので未知の場所は基本手探りで進んでいくしかない。


「とりあえず、さっきまでと同じように直進すればいいんじゃないか?一応、最初に入ったところからまっすぐ行けば薬草の群生地にたどり着くはずなんだし」


「まっ、考えても仕方ないか」


男子組の能天気さが伺える発言だが、現状打つ手無しなので女子も賛同し俺たちは再び森の奥へ進むことにする。




進めば進むほど暗くなっていく視界。

森の奥へ進めば進むほど、森の木々は大きく育ち俺たちの頭上を覆い隠す。

今も僅かに降り注ぐ日の光を頼りに進んでいる状況だ。


「ここまで入ったのは初めてだな」


「私たちもこんな奥までは来ませんでしたね」


「普段はもっと浅いところでレべリングしてるしね~」


全員、こんな森の奥深くまで入ってくるのは初めてらしい。


俺とティナが気配察知を使いながら進んでいるが、特にモンスターの気配はないので俺たちは適当に話ながら森の奥を目指す。


「これなら明かりを持ってくればよかったかもな」


「でも、それじゃあモンスターたちに見つかりやすくなるんじゃ?」


「それもそうか」


ケディアとティナは二人してゲームの話しているので、俺も暇なのでミーニャと会話することを試みる。


「そういや、ミーニャはなんでNWO始めたんだ?」


「始めた理由ですか?」


「ああ、あんまりゲームしそうには見えないからな」


俺は苦笑しながらミーニャに尋ねる。

普段大人しく優しい中島がゲームをしているなど想像もできないので気になっていたのだ。


「そんなに可笑しいですか?」


少し困ったような、恥ずかしそうな複雑な表情をしながらミーニャはこのゲームを始めた理由を教えてくれた。


「実は私魔法を昔から使ってみたいって思ってて……、それでこのゲームなら本物みたいに魔法が使えるって聞いて……」


言ってるうちに少しずつ顔が赤くなっていくミーニャ。

きめ細やかな白い肌がほんのりと朱色を帯びていく姿は見ているものを魅了する独特な雰囲気があった。


「そっか、それでNWOを始めたのか」


「はい」


俺は思わずまた見惚れてしまったが、気づかれないよう少しそっけなく答える。


やっべぇ……、さすがは学年トップクラスの美少女。

ゲームの中ですら可愛すぎて見惚れるわ……。


しばらくすると前を歩いていたケディアとティナも話に加わってくる。

ゲームの話やあの先生が嫌いだの、この教科が嫌いだの学校でのくだらない話の話題は尽きない。


なんか気抜けてきたなぁ……なんて思いつつも俺たちは着実に足を進めていく。


気配察知に今のところ気配察知にモンスターは引っかかってはいないし、しばらくは大丈夫か……


戦闘と戦闘の合間。

ほんの少しの時間だが、最初よりは4人の距離が縮まったような気がした俺は再び話の輪の中に加わっていった――――――

ステータス


名前:シャオ

種族:ヒューマン

性別:男

Lv12


HP:360

MP:60(+13)

STR(攻撃力):22(+13)

DEF(防御力):15(+21)

INT(賢さ):12

AGL(素早さ):39

DEX(器用さ):15(+2)

MND(精神力):8

LUK(運):19


【ステータスポイント】:0


【スキル】

〈棒術Lv18〉〈気配察知Lv11〉〈回避Lv4〉〈足技Lv3〉〈鑑定Lv3〉〈風魔法Lv5〉


【スキル控え】

〈料理Lv1〉



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