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棒を片手に俺はVRMMOを満喫する。   作者: かぼちゃ頭
第1章 新しい世界
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第16話 謎の生産職プレイヤー

俺たちはケディアが使用している武具を作った生産職の人の元へと向かっていた。


「いらっしゃい!」


露店に到着すると、明るい声が露店の主から発せられ、大通りによく響く。


「久しぶり、ルカさん」


ケディアはその明るく大きな声に苦笑しつつ露店の主―――ルカさんという女性プレイヤーに挨拶をした。


「おお~、ケディア君じゃん!どしたの?また装備の新調?」


「いや、装備変えたのこないだですし。今日来たのは別の理由ですよ」


矢継ぎ早に繰り出される言葉にケディアは顔を引きつつも今日来た理由をルカさんに話す。


「ふんふん、なるほど。それでその装備を新調するのは?」


理由を聞いたルカさんはケディアから、ティナ、ミーニャ、俺と順に眺めた後、ケディアに問いかけた。


「こいつです」


ケディアに指をさされ、ルカさんが俺を見る。


「シャオだ、棒をメインに使ってる」


「へ~、棒使いなんて珍しいね」


こちらを品定めするような鋭い視線が俺を射抜くが、すぐさまさっきまでと同じ明るいルカさんへと変わる。


「ま、それなりに力はあるみたいだしいいよ、あたしの装備を売ってあげる」


口元をニヤリと釣り上げたように笑うルカさん。

売ってあげる……とは大した自信だ。

ルカさんはメニューを操作し始め、俺用にいくつかの装備品を取り出し始める。


何故、メニューから取り出すんだ?と気になっていると、ケディアがこっそりと耳打ちをしてきた。


「ルカさんは気に入った人にしか武器や防具を売らないんだよ。露店に並べているのは失敗作らしい」


は?この露店に並んでいるのが失敗作?

鑑定をしてみてみたが、明らかに他の露店よりいいものが並んでいるのにこれが失敗作とは……


ケディアの発言を聞いて、どんな装備が出るのか俺ワクワクしながら取り出された装備を確認していく。


その中でもやはり目についたのは俺のメイン武器である棒だ。

俺の使っているただの棒とは違い、持ち手が付いたもの、豪華な装飾があるものなど様々な種類が取り出されたので俺は鑑定を使いながら見ていく。


----------------------------------------------------------------

【鉄の棒】

武器(棒)


熱く熱した鉄を均等に加工し棒状にした一品。

鉄を使用したことにより重量が通常の棒より重いが、

その分攻撃力が高くなっている。


Atk:+11


品質 7


----------------------------------------------------------------


----------------------------------------------------------------

【竹の棒】

武器(棒)


竹で出来た棒。

素材を生かした作りで部分部分に加工を施してある。

ただし、武器が軽いため攻撃力は低い。


Atk:+6 AGL;+3


品質 5


----------------------------------------------------------------



----------------------------------------------------------------

【夜木の棍】

武器(棒)


暗い場所で育った丈夫な木を丁寧に削って完成したもの。

暗い森の奥深くで育った木の芯は鉄すら凌駕する硬度を誇る。

また、木に模様を彫ることで特殊な効果を生み出している。


Atk:13 

付与効果:MP回復速度UP


品質 8


----------------------------------------------------------------



どれもこれも今使っている武器とは比べ物にはならない性能だ。


俺が武器を見ている間、ケディアやティナ、ミーニャもそれぞれ装備を見せられ感心したように装備に魅入っている。


確かに、これらの武器は使えればかなり戦力になってくれるだろう。

だが、これだけの攻撃力をもつ武器というのは昨日露店で見た時にはなかったはずだ。


(このルカさんって何者なんだ?)


ケディアが気に入った人にしか装備を売らないということや、明らかに他の生産職のプレイヤーを凌駕する装備の数々。


明らかに他の生産職プレイヤーとは違う。


そんなことを考えていると、ルカさんが俺に向かって声を掛けてきた。


「どうやら不思議に思ってるみたいだね」


「!?」


考えを見抜かれたことに驚いているとルカさんはあっけカランと笑いながら話を続けてくる。


「ニヒヒ、ケディア君も最初はそんな感じだったからね。ここの装備が明らかに性能が違う!って」


ケディアと同じというのは少々残念だが、確かにあいつゲームなら頭使うからな。普段から使えばいいのに……


「さて、ネタばらしだけど答えは簡単。私がβテスターだから」


βテスター。

なるほど、確かにそれなら他の人より性能のいい装備を作れるだろう。

βテスターはテスト時のスキルや装備をいくつか引き継ぐことが出来る。

それらを使って武器や防具を作れば、同じ素材でもスキルレベルの差で性能に差が出るわけだ。


だが、なら何故最初からその装備を展示しないのだろう?

あのレべルの装備なら買いたい人など山ほどいるはずだ。


それについて尋ねると……


「う~ん、正直私が作った武器を使ってほしい!って人に使ってもらうほうが作り手として嬉しいからかな。あとは他の生産職プレイヤーへの配慮もあるけど」


「配慮?」


「シャオ君、もしβテスターの武器が大量に出回ったらどうなると思う?」


どうなるって……そりゃあ、みんな狩りの効率が上がったりするだろう。


「確かにそれもあるだろうけど、私たち以上の装備が作れない新規プレイヤーはどうなるかな?」


俺はそれを聞いて、納得した。

確かに、βテスターが作る装備が出回ったら新規のプレイヤーが作る装備なんて誰も買わなくなってしまう。


それを防ぐために露店に失敗作を並べているのか。


「そういうこと。他の知り合いの生産職のβテスターと相談してしばらくは出し惜しみすることにしてるの」


ルカさんは笑顔で言っているがこれはすごいことだ。


自分たちが売れば利益が出るのを分かっていてやらない。

他の人へ配慮しながらプレイなんて俺には考えたこともないことだからな。


「まあ、そういうことだからあんまりこのお店のことはしばらくは言いふらさないでくれると助かるかな」


「分かりました」


そういうことなら喜んで協力しよう。

俺が頷くと、ルカさんは満足そうに微笑む。


「っで、シャオ君はどの装備を買ってくれるのかな?」


っが、そんな平穏なやり取りはすぐさま終わった。

こちらが何を買うのか聞き始めると明らかにルカさんの目が変わっている。


目が$だ、マジで$だ。


俺は冷や汗をかきつつも、先ほど見た3本の棒の値段を聞いてみる。


「鉄のやつは15000c(セル)、竹は9000c(セル)、夜木は入手困難素材だから31000c(セル)かな」


やっぱり高い……

他の店の2倍はする値段だ。

これから防具も揃えなくてはいけないので、出来れば支出は押さえておきたい。


「さてさて、どれを買うのかな?」


商売人の目をしたルカさんがニヤニヤとこちらを見ている。


「この竹や鉄の棒は今私が作れる中でも最高のレベルだね。他の露店じゃあ見かけられないだろうから迷うなら買っとくべきだね。夜木の根は素材が希少だから現品限り、なかなかお目にかかれないと思うから、もし買うなら今のうちだよ?」


ルカさんは言葉を巧みに使い、上手いことこちらの購買意欲を煽ってくる。



恐るべし、βテスター!

とルカさんに軽い戦慄を覚えながら俺は悩む。

正直なところ、どれも捨てがたいのだ。

鉄は申し分ない攻撃力だし、竹のAGL上昇も魅力的だ。

また、夜木の棍のMP回復速度上昇もあれば魔法を使える回数が増える。



俺が悩んでいる間に、ケディア達もそれぞれ装備を買っているようだ。

ルカさんは笑顔で代金を受け取りながら、装備を手渡している。


「お~い、シャオ。まだ決めてないのか」


「ああ」


ケディアがちょうど買い物を終えたのか話しかけてきたため少し相談してみることにした。


「う~ん、ぶっちゃけお前のプレイスタイルなら竹でもいいんだが火力がなぁ~」


現状、俺の一番の改善点は火力である。

棒という武器を選んだので火力が低いのは仕方がないが、それでもある程度の攻撃力は必要だ。






悩むこと数分。

他のメンバーが買い物終え、見守る中俺はついに決断を下す。


「この夜木の根をくれ」


「ニヒヒ、毎度あり~」


結局俺は一番高い夜木の棍を買った。


決して、現品限りなど、希少な素材を使ったということに誘惑されたとかではない。ほんとに、そんなことに誘惑されたわけじゃないから。


ニヤニヤと笑う、ルカさんに代金を渡し夜木の棍を受け取る。


「まあ、君の活躍を楽しみにしてるよ。こないだのPvPみたいにね」


「!?」


ぼそっと装備を受け取る瞬間、耳元でささやかれた発言に俺は驚愕の表情でルカさんを見つめる。


「ニヒヒ」


喰えない人だ。

一体いつから気づいていたのか……


「ああ、それと防具を整えるならここに行くといいよ」


そういって俺たちに渡してきたのは一枚の紙切れ。

そこには防具いろいろ取り揃えています!と書かれ、大通りの端っこの方に矢印がある。


「私と同じβテスターがやってるお店だよ、私からの紹介だって言えば売ってくれるはずだよ」


「ありがとうございます」


俺は頭を下げ、礼を言う。


「ニヒヒ、まあ今度来るときは面白い土産話でも期待してるよ」


そうして俺たちはルカさんの店を後にする。


残り財産は2万ほど。


防具買えるのだろうか、と不安になりながらもケディア達と紹介された店へと向かうのだった―――――






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