第14話 閑話 ジークという男
1話から13話までいくつか訂正しました。
かなり変わっている部分もあるので、
戸惑うかもしれませんがご容赦ください<(_ _)>
「おぉらぁああああ!」
手に持った両手剣を力強く振り切り、ゴブリンを切り倒す。
気合の込められた一撃は押しつぶすようにゴブリンを屍に変える。
だが、1匹倒したところで敵の数がは大して変わらない。
「「ギギィ!」」
仲間を倒されたことで興奮したゴブリン達がジークの元へと迫ってくる。
ジークはそのまま一人、10数匹もいるゴブリンに単身突っ込もうとして後ろから、制止する声が掛かる。
「下がれ、ジーク!」
同じPTを組んでいるライルから制止の声が飛んでくるが、ジークは耳を貸さずゴブリンの群れへと斬りこんで行く。
幾度も、幾度も両手剣を振るい、ゴブリン達を屍へと変えていくその姿は鬼気迫るものを感じさせる。
「なあなあ~、ライル。アレいいのか?」
ジークとPTを組む最後の一人、ビスタが若干声を抑えてライルに相談するように呟く。
「よくは無いんだけどな、聞く気配が無い」
ライルはPTとしては一人で突っ込み過ぎているため、何度か注意はしているのだがジークは一向に聞こうとする気配はない。
「こないだのあれが原因だよなぁ~」
ライルとビスタは二人揃ってため息をつきながら、数日前の一件を思い出す。
数日前、ギルドにいた棒使いの少年とのPvP。
棒使いは開始直後は少ないながらも普通に見かけられたが、日が経つに連れて棒の扱いずらさ、威力の低さに嫌気を差した人は次々と別の武器へと乗り換えていった。未だに数人はそれでも諦めず使っているようだが、その扱いずらさ、威力の低さは地雷武器と言われるようにまでなっている。
その地雷武器と呼ばれる棒をまるで手足のように使いながらジークに勝って見せた少年には驚きを禁じ得なかった。
βテストのころからプレイしている俺たちはもちろん始めたばかりの頃よりは1,2段上の装備とスキルを引き継いでいる。始めたばかりのプレイヤーが数日では追いつけない数字だ、確実に数レベル下のはず。
それをあの少年は初期装備で、しかも棒を使って勝負を挑んできたときは笑っていたが、試合が始まるとその笑いは驚きへと変わっていった。
決してジークな弱くはない。むしろゲームの中でもトップクラスの実力を兼ね備えている。βテストのときも、攻略組の一人として最前線でモンスター相手に奮闘していたのだ。
そのジークの攻撃をいとも容易く躱したり、受け流し、弾き飛ばす少年のプレイヤースキルのほうが異常なのだった。
正確な防御、そして隙をつくカウンター攻撃。
一体どこで覚えたんだか、と呆れるような技の豊富さ。
間違いなく、攻略組でも1,2を争うプレイヤースキルを持っているだろう。
装備を整えれば余裕で攻略組とも互角以上に渡り合えるはずだ。
そんな技術の差を見せつけられて、火がつかないわけがない。
ましてや、あの負けず嫌いのジークだ。
それが分かってしまうからこそ、ライルはジークの無謀なまでの突撃を強く咎められなかった。
「まあ、しばらくはあいつが死なないようにサポートに回るしかないな」
「結局俺らはあいつのサポートかぁ……」
ライルが諦めたように呟き、ビスタはがっくりとうな垂れる。
こうして3人はひたすら森でモンスターと格闘するのだった―――――
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