第12話 買い物とお願い
10万PV達成しました!
みなさまこれからもよろしくお願いします<(_ _)>
結局あのPvPの後、ジーク達は俺に一言謝罪し去って行った。
まあ、口は悪いが、根は悪い連中ではないのだろう。
そこまではいいのだが……
「ねぇねぇ、うちのPTに入らない?」
「いやいや、君ならうちのPTのほうが活躍できるって!」
「ぜひうちのPTに加入してくれ!」
激しい勧誘合戦に巻き込まれた。
あの試合が終わった後、周りで見ていた観客が自分たちのPTに入らないかとひたすら勧誘してきたため、俺は身動きが取れないでいた。
最初も丁寧に断っていたのだが、ひたすらくる勧誘にそろそろ疲れてきたため、だんだんと断り方が雑になっていく。
……ええぇい、めんどくさい。
「すみませぇえええん!」
最終手段、強行突破だ。
俺は観衆から逃げるように広場から抜け出した。
「はぁはぁ……」
なんとか逃げれたみたいだな。
呼吸を整え、今日の一番の目的である冒険者ギルドへと向かう。
PvPなどで予定がいろいろとずれたが、なんとかなるだろう。
ギルドへ向かう途中、何度か視線を投げかけられたがスルーして本日二度目のギルドへと到着した。
この時間帯は人が少ないのか、ギルドは最初に来た時よりだいぶ空いていた。
あっさりと俺の番が来たので俺は換金所の受付へと向かう。
「お売りになる素材を提示してください」
メガネをかけた受付の少女が俺に向かってそう伝えてくる。
というか同じぐらいの年だよな、見た感じ……
俺は受付の少女が同年代ぐらいなのに驚きつつ、所持品からゴブリンやポイズンスネークの素材を片っ端から出していく。
「い、以上ですか?」
俺が素材を出し終えると若干引きつったような顔をして少女が聞いてくる。
「ああ、これで全部だ」
少女はどこか驚いたような顔をして換金額を計算していく。
う~ん、やっぱ眼鏡をかけた少女っていいよね、なんかこう理知的な感じで。
なんてくだらないことを考えていると計算が終わったのか、受付の少女が金額を提示してくる。
「全部で67,800cになりますがよろしいですか?」
相場など分からないが、ちょろまかしてはいないだろうと思い、俺は頷いて換金分の額を貰うとギルドを後にする。
だいぶ懐も温かくなったし消耗品を買いに行きますか。
そうして俺は大通りへと向かった―――――
『大通り』は普通に街の正門から広場へと続く一本道である。
フィールドへ行くにもここを通るので、大通りは基本的に人の交通量が多い。
それだけ人がいれば、当然その交通客を狙った商売人もいるわけで……
「いらっしゃい!うちの防具は性能良いし安いよ!」
「長剣、両手剣など様々な剣扱ってま~す」
「日ごろの疲れに一杯どうですか!」
とまあ、プレイヤーによる露店が大量にあるわけである。
にしてもさすがにすごい露店の数だな。
通りの脇にずらりと並んだ店の数々、武具やポーションなどありとあらゆる店があふれている。
俺は消耗品であるポーションを売ってる店を探してぶらりと露店を眺めながら歩いて行く。
ポーション以外にもいろんな武器や防具を見ているだけでも面白いな。
そんなことを考えながらぶらりと歩いていると、俺は一軒の露店の前で立ち止まる。
「回復薬?」
ほかの店ではポーション1個いくらなどが表記されているのだがこの店では回復薬、と表示させれている。
ポーションなら分かるが、回復薬ってなんだ?
俺は好奇心を抑えられず、思わず立ち寄ってみた。
「……いらっしゃい」
小声でフードを深く被った人があいさつをしてくる。
なんというかいかにも怪しい人です、って感じの人だ。
俺は店主に少し頭を下げ、露店の回復薬を手に取ると〈鑑定〉を発動させる。
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【回復薬】
消費アイテム
粉末状の薬草を水に混ぜ液体化させたもの。
飲むと使用者のHPを100回復させる。
ただし、通常のポーションと違い苦く、
飲むことでしか効力は発揮されない。
品質 6
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「なっ!?」
俺は思わず息を呑む。
回復量100とは市販されているポーションの2倍近い効力だ。
1つ飲めば現状俺のHPはほぼ回復するだろう。
これだけの回復効果があるなら欲しいと思ったが鑑定によるある項目に引っかかりを覚えていた。
(苦い……のか)
説明文にある苦い、という一文が買うのを少し躊躇わせる。
この世界でも味覚は存在し、俺の持つ料理スキルなどで作った料理にもきちんと味が存在する。
なので、普通はこういう苦いものは出来れば遠慮したいのだが……
「この回復薬を3つ売ってもらえるか?」
とりあえず、俺はこの回復薬を買っておくことにする。
苦いのは嫌だがデスペナルティを受けるよりはマシだろう。
「……本当にいいの?」
店主が微妙に気まずそうに俺に確認してくるが俺は頷き代金を支払う。
「分かった、気を付けて」
店主は代金を受け取ると一言残して先ほどと同じように無反応になる。
俺は礼を言うと再び露店めぐりを再開した。
最終的に買ったのは、ポーション10個、回復薬3個、毒消し5個だ。
ほかにも武器とか防具もあったのだがどれも現状俺の財布じゃとてもじゃないが買える値段じゃなかったため断念した。
買い物を終えるとそろそろ日が暮れてきたので宿へ帰る。
もはや、この街での拠点となってきたヤドリギの宿に入ると宿主のセザンさんが笑顔で迎えてくれる。
「おかえりなさい」
「ただいま、今日も一泊頼むよ」
俺は宿泊代を支払い部屋へ戻ろうとして、セザンさんに呼び止められた。
「シャオ君、ちょっとお願いがあるんだけど……」
「お願い?」
なにかあったのだろうか?
「昨日から娘のセラが風邪をひいちゃってねぇ、薬を与えてるんだけどその薬がそろそろ尽きそうなの」
セラちゃんはこの宿屋でよく宿のお手伝いをしている7歳の女の子だ。
俺もここ数日連続して泊まっているため何度か喋ったことがある。
「それで悪いんだけど薬の材料になる薬草を採ってきてもらえないかしら?もちろん報酬はキチンと支払うから」
薬草か……
「薬草ってどこに生えてるんです?」
「暗き森の奥深くに生えている薬草なんだけど、フォレストボアの縄張りにあるからなかなか普通の人は入れないのよ」
確かに、フォレストボアに一般人が挑むなんて単なる自殺行為だろう。
この宿屋にもお世話になっているし引き受けるか。
「分かった、いつまでにとってくればいいんだ?」
「あと3日分の薬はあるからそれが無くなる前に取ってきてくれるかしら」
3日かぁ……
ギリギリいけるか?
フォレストボアの縄張りと聞いて、嫌なことを思い出すがセラちゃんのためにも出来る限り協力はしてあげたい。
少し悩んだ末俺は依頼を受けることにした。
最悪、圭介たちに手伝ってもらうことになるかもしれないが、やれることはやってみよう。
「ありがとう!」
俺が依頼を引き受けたせいかセザンさんの顔がほころぶ。
「じゃあ、今日のところは休みますね」
「ええ、ゆっくり休んでね」
俺は自室に行きそのままログアウトした――――――――
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