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過去2
それから三人はたくさんのことを話した。
契はるなの話のネタにされ、琉依はその話に大笑いした。
琉依の話もした。
前の学校のことや家のことは話したがらなかったが、普段身近にある小さな、しかし
とても綺麗なことをたくさん話してくれた。
蜘蛛が一生懸命に編んだから、蜘蛛の巣は雨粒がつくときらきらと光っていてとても
綺麗なのだと言う話。
青々とした草に付いてきらきらとした朝露の話。
不意に吹いてくる透通った風の気持ちよさ。
道路の端から頑張って生えてきた小さな小さな花の芽の話。
彼女は、一つ一つの綺麗なもの、美しいものを忘れないようにすべて頭に残している
ようだ。
毎日彼らは、全員の部活が終わってから一緒に帰っていた。
契はサッカー部、るなはテニス部に所属していたが、琉依は何の部活にも入らなかっ
た。
三年だということもあるだろうが、それ以外の理由もあるのかもしれない。
彼女は毎日毎日二人の部活が終わるまで一人教室で勉強をしたり本を読んだりしてい
た。