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過去1

「今日から同じクラスの天草 琉依さんだ。みんな、仲良くな」


担任が転校生の紹介をする。


彼女は、ただ無表情に自己紹介をした。


「天草 琉依です。よろしくお願いします」


そしてぺこりと頭を下げた。


大きな黒い瞳、真っ白な肌。


綺麗な顔の少女だった。


ただ、綺麗な唇は硬く結ばれていた。


すらりとした体。


まるで、モデルのような彼女は、どこか違う世界から来たようだと、ボーっとした頭


で竹谷 契は思った。


彼女は隣町の中学校から転校してきたのだと言う。


家庭の事情で中学校最後の一年間を違う学校で過ごすことに決めたらしい。


彼女は契の隣の席に座ることになった。


一番後ろの窓側の席。


彼女は椅子に座った瞬間、窓の外を眺めていた。


その姿は、どこか寂しそうに見えた。


彼女は、積極的なタイプではなかったが、何事も穏やかで優しくて、勉強もよくでき


た。


彼女はすぐにクラスに馴染んだ。


だが、契は彼女が自分を装っているような気がしてたまらなかった。


何の根拠もない。


ただ、時折見せる悲しそうな、寂しそうな表情は契に疑惑を持たせるのには十分だっ


たのだ。


彼女が転校してきて二週間ほどした時、一人の女子が彼女のところにきた。


彼女は滝沢 るな。


契の幼稚園からの幼馴染だ。


彼女は隣のクラスなため、琉依と話す機会が無かったのだろう。


るなは琉依とは逆に積極的な女子だった。そして面倒見がよかった。


だからきっと転校生が来たと聞いて話すタイミングを見計らっていたのだろう。


契は偶然席に座っており、彼女たちの話を聞いていた。


「はじめまして!私、滝沢 るな。よろしくね!」


るなは彼女ににっこりと笑いかける。


彼女も微かに笑みを浮かべると「よろしくお願いします」と小さく言った。


「私、こいつの幼馴染なんだー」


不意にるなが契の肩を叩く。


驚いた契は思わず「は!?」と声をあげてしまう。


「えっと…確か、竹谷さん?」


一度全体の前で自己紹介しただけにもかかわらず、彼女は契のことを覚えていたらし


い。


契はぎこちなく頷いた。


「あれ?話したことなかったの?」


彼女はこくりとうなずいた。


するとるなは満面の笑みを浮かべる。


「じゃあ、今からいっぱい話そう!」


琉依は大きな目をぱちくりさせた。


「もう私たち、友達だよ!」


るなの一言で、琉依の顔はぱぁっと明るくなった。


彼女はにっこりと笑って頷いた。


なんてことない始まり。


だが、この出来事は彼らにとって大切な始まりだった。

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