病院
琉依はすぐに到着した救急車で病院に搬送された。
契とるなは付き添いとして一緒に救急車に乗り込んだ。だが、何もしなかった。
いや、何もできなかったのだ。ただ座っていただけだった。
琉依をまともに見ることもできずに、二人はただ身動きもせずに座っていた。
琉依は病院につくとすぐ、緊急手術を受けた。
二人は倒れた時にできたらしい擦り傷を簡単に治療してもらってから、治療室の前に
ある椅子に案内された。
傷ができていたことなど、ちっとも気が付いていなかった。
何も考えずに、何も話さずに放心状態で座って待っている間に琉依の祖母が来た。
琉依は幼いころ両親を交通事故で亡くし、母方の祖母に育てられていたのだ。
「琉、琉依は…。私の孫は…?」
「緊急手術中です。ここでしばらくお待ちください」
看護婦からそれを聞いた琉依のおばあさんは、崩れ落ちるように近くにあった椅子に
座った。
二人はおばあさんと知り合いだったが、話しかけられなかった。
何も言えなかった。
自分たちがふざけずに突進してきていたトラックに気付いてさえいれば、彼女はこん
なことにならずに済んだのだ…。
琉依がこんなことになったのは自分たちのせいだ…そう思った。