幸せ
「ねぇ、おとうさん、おかあさん」
まだ幼い娘が父親と母親を見上げた。
「これは、誰のお墓なの?」
不思議そうに少女が訊いた。
「おじいちゃんの?おばあちゃんの?」
父親は面白そうに笑った。
「おじいちゃんとおばあちゃんにはさっき会っただろ」
「じゃあ、いったい誰の?」
二人は顔を見合せて微笑んだ。
父親は娘の横に膝をつくと墓石を見る。
「ここはな、お父さんとお母さんの大切な友達のお墓なんだよ」
「お友達?」
彼女が繰り返す。
「そうだよ。この人はね、お父さんとお母さんの命を救ってくれたんだよ」
「お父さんとお母さんの大親友がいるところよ」
娘は驚いたように父親と母親の方を見る。
「お父さんとお母さんはね、車にひかれそうになったのをこの人に助けてもらった
の」
母親がそう言うと、娘はそっと墓に近づいた。
それと同時に目をつぶってお墓に向かって手を合わせる。
「はじめまして。谷北 るいです。
お父さんとお母さんを助けてくれてありがとうございました」
父親と母親、契とるなはそんな娘の姿をみて、幸せそうに微笑んだ。
爽やかな風が吹く。
もうすぐ春がおとずれる。
二人はまるで彼女が、琉依が優しげに微笑んでいるかのように感じた。
ねぇ、琉依、見てる?
私たち、とっても幸せだよ
ありがとう
大好きだよ
END




