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気持ち願い、そして…

彼女は、ただにっこりと笑っていた。


『久しぶりね。契、るな』


彼らは震える声で同時に彼女の名を呼ぶ。


「「琉依……!!」」


彼女は、あの時のままだった。


あの時着ていた制服。あの時のままの髪型。あの時のままの顔。あの時のままの声。


何もかも、あの時のまま……。


「琉依…どうして……」


琉依は恥ずかしそうに笑った。


『会いたくなったから…』


二人は何も言わずにただじっと琉依を見た。


『会いたくなったの。二人に。だから会いに来ちゃった』


琉依は微笑むと言った。


『二人に伝えたいことがあって』


その瞬間、二人の表情が硬くなる。


どんな恨み言を言われるだろう。


どんなに蔑まれても、どんなに詰られても文句なんて一つも言えない。


そう思って琉依の次のことを待っていると、琉依は呟くように言った。


『お願いがあるの。もう…自分たちのことを責めないで』


二人は石のように硬直した。


「え…?」


思わずるなの声が漏れる。


琉依はただじっと二人を見ていた。


責められ、詰られるのが同然な自分たちに、彼女は今なんて言った…?


「む、無理だよ!だって…だって私が気がついてさえいればあんなことには……」


るなが目にいっぱいの涙をためて言った。


しかし、琉依は首を振った。


『ううん。二人のせいじゃないよ。あれは事故だったの。


二人が私に包丁とか拳銃を向けたわけでも、私を屋上から突き飛ばしたわけでもな


い。ましてや、私を車の方に突き飛ばしたわけでもないもの』


二人はうつむく。


「それはそうだけど…」


力なく呟く彼らに、琉依は寂しそうな笑みを浮かべた。


『確かに、私はまだ死にたくなんてなかった。だってまだ十七よ?…ううん。


十七歳だった、と言った方がいいわね。だって、考えてもみて。


その年ならなんでも出来るのよ。私は、何もできなかったわ』


二人は唇をかみしめる。


『でもね』


琉依は静かに言った。


二人は琉依の方を見て絶句した。


彼女は……笑っていたのだ。


『あの時二人を助けたこと、後悔なんてちっともしてないの。これっぽちもね。


確かにそのせいで私は死んだけど、大切な親友たちが無事だったんだもの』


「る、琉依……」


『だからお願い。精一杯生きて。生きて生きて生きて!後悔なんてしなくていい。


私の分まで精一杯生きて!私は天国で待ってる。


貴方たちが精一杯生きた話を楽しみにしているわ!貴方たちが来るまで、私はずっと


二人のことを見守っているわ。貴方達が幸せになるのをこの目にしっかりと収める


の』


二人は何も言わずに、ただ泣きながらうなずいた。何度も何度も……。


琉依の顔を見ていたら、言葉を聞いていたら…許されてもいい気がした。


確かに、償わなければという気持ちはまだある。


でも、今までのように償い方を見つける償いではなく、自分たちが琉依の分まで精い


っぱい生きる。それを償い、そしてお礼にしようと思った。


「待っててね。私たちが行くまで…」


「俺たち、お前の分まで精一杯生きるから…!」


琉依は嬉しそうに微笑むと、手を振った。


「大好きだよ、契、るな。二人とも、大好きよ…」


この言葉を最後に彼女は空気にとけるように姿を消した。


琉依がいなくなった場所を二人は飽きることなく泣きながら見つめていた。

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