12/17
過去5
タクシーを拾う時間がもったいなかった。
自転車を飛ばせば二十分で着く。
だが、その時間ですら遅く感じた。
琉依はすべての信号を無視して、いや、気付くこともできずに全速力で病院に向かっ
た。
雪が舞っていることも、前が見えにくくなっていることも、誰かに注意されたことに
も気付かなかった。
病院には十五分で着いた。
自転車を入口の前に放りだすと鍵もかけずに病院の中に駆け込んだ。
「あ、天…く…さです。」
息切れしながらそう告げると受付の看護婦さんは何も言わずに手招きをして琉依をあ
る場所に連れていった。
『手術中』
その赤いランプが光っていた。
「しばらくここで待っていてね」
彼女はそれだけ言うと足早に立ち去った。
琉依は茫然とそのドアの前に突っ立っていた。
「う…そ…でしょ…?」
蚊の鳴くような声で栁依は呟いた。
そのまま床に座り込む。
「嘘よ…」
そう呟く。
「琉依!」
そう言う声が聞こえ、ゆっくりと後ろを振り向くと、母方の祖母が立っていた。
「おばあ…ちゃん…」
そう呟いた瞬間、右目から何かが零れ落ちた。
今まで我慢してきたもの、それが出てきたのだ。
「琉依…よくここまで…」
そう言って祖母は彼女をぎゅっと強く抱きしめてくれた。
「きっと大丈夫よ。二人は琉依をおいていったりしないからね」




