過去4~家族~
琉依の家は三人暮らし。
父と母、そして琉依。
家族は仲が良く、とても明るくて賑やかで暖かい家庭だった。
そんな冬のある日、琉依は珍しく家に帰るのが遅くなった。
塾の講座が長くなってしまったのだ。
家に帰ると、誰もいなかった。
テーブルに置き手紙があり、『お父さんと二人で晩ご飯の材料を買ってきます。
琉依のこと待っていたけど、塾が長引いているようなので二人で行くことになりまし
た。すぐ帰るので待っていてください』と書いてあった。
琉依は言うとおり、大人しく待っていた。
宿題をして、予習復習をして、本を読んで…それでも時間が余ったのでテレビを見
た。
おかしい。
これは、遅すぎる。
時計を見ると、もう十一時半だ。
琉依は母のケータイに電話をかけてみようと思った。
琉依が電話の前に立ったその時だった。
突然電話が鳴った。
お母さんからかなと思い、受話器を取ると、知らない声が聞こえた。
『天草さんのお宅ですか』
「そうですけど…」
琉依は胸騒ぎを覚えながらそう答える。
『娘さんですか』
向こうはそう訊いた。
「あの…どなたですか」
そう問うと、向こうは一瞬の沈黙を返してきた。
『東郷第一病院です』
琉依は嫌な予感がした。
東郷病院はこの町で一番大きな病院で、事故があるとそこに搬送される。
「病院が…うちに何の用ですか」
その病院の職員は静かな声で諭すようにゆっくりと、両親が交通事故で病院に搬送さ
れたことを告げた。
琉依はそれを聞くなり、バッと受話器を置くと走り出した。
財布と生徒手帳と家の鍵とケータイをひっつかんで鞄に放り込んでマフラーや手袋を
するのも忘れて鞄をひっつかんでドアを思いっきり開ける。
震える手で必死にドアの鍵をかけると琉依は自転車に飛び乗った。




