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日常
俺たちは、目の前の光景に目を疑った―――――――――
「琉ー依ー!」
名を呼ばれて高校二年生の天草 琉依は億劫そうにゆっくりと振り向いた。
彼女の名を呼んでいるのは、友人の滝沢 るな。
「もーっ、琉依は歩くの速いよー!」
走って彼女にやっと追いついたるなは頬を脹らませて文句を言った。
「ごめんごめん」
琉依は苦笑しながら言う。
「おーい。二人ともおせーぞ!」
そう後ろから怒鳴っているのは、友人の谷北契だ。
「ったく、契は逆に遅すぎだっつーの。後ろから偉そうに言うな」
そうるなが言い返す。
「契のこと待っててゆっくり歩いていたせいでいつもより十分も遅れちゃってるわ。
SHRに遅刻したら契のせいだから。もちろん、わかってるよね?」
琉依はにっこりと笑ってそう言い放った。
契はカクンと首を落として覚悟するように小さく返事をした。
「ねぇ、琉依…やっぱりその笑顔怖いよ…」
顔をこわばらせながらるながいい、契も小さくうなずいた。