Ⅸ 「離婚届」とママの決心
「お姉ちゃん、今日学校行かないの?。」
「うん。紗夜たちはちゃんと送って行くからね。」
パパにたたかれたところがあざになってしまった。
しかも、顔だからみんなにばれてしまう。それも一か所じゃなく・・・。
みんなに家のこと知られたくない。
知られたら、今までのどりょくは、水の泡になってしまう。
先生がここに来なければ、あざなんてできなかったのに。まったく・・・。
紗夜たちを保育園に送り届けると、家でたまっていた洗濯物を回したり、アイロンをかけたり、家事をこなした。
ママの部屋を掃除をしていると、机の上に一枚の紙が置いてあった。
なんだろう。
「離婚届」
わたしは、息をのんだ。ママの名前も捺印も押してある。パパのは書いてなかった。
離婚…。
確かにパパとママは毎日喧嘩しているけど、ここまで考えていたなんて…。
離婚届を良く見ると、涙の跡があった。
ママ・・・、そんなに決心が固いの?。
しばらくして、私は元の場所に離婚届を戻した。
「ごめんなさい、もうあなたとやって行く自信がないの。離婚して。」
夜。涼香を寝かし、紗夜に本を読んでいるところだった。
ママは、パパに言った。
「ハンコと用紙。」
パパは、ママに一言言った。
ママは、離婚届とはんこを渡した。
「ママ、パパ。喧嘩しないで?。」
私は、黙ってやりとりを見ていようと思ったが、紗夜が言ってしまった。
「うるせえ。」
パパが、紗夜を蹴り飛ばした瞬間、私の口が勝手に動いてしまった。
「ねえ。」
「ママとパパ。どうして結婚なんかしたの?。離婚するなら、結婚なんかしなくて良かったんじゃない?。」
私の口からは、思いもよらない言葉が。
「子供は黙れ。」
「…子供じゃない!!。私は、今まで家のことたくさんやってきたよ?。友達とも遊ばないで、部活にも入らないで、毎日家のこと頑張ってきたんだよ?。それでも、子供扱いするの?。」
殴られる。そう分かってるのに、なぜか口から言葉が言いたくないのに。
「うるさい!。でていけ。子供なんてうっとおしいだけなんだよ。涼香たちも連れて出て行けよ。」
パパは、私を蹴り飛ばし、言った。
「一花、これは大人の話しあいなの。はっきりいうとね、迷惑。」
ママも言った。
それから、私は、無我夢中でリュックに必要な荷物を詰め込んだ。
涼香をベビーカーに乗せ、紗夜を連れ、歩き出した。
もちろん、行く当てなんかない。
私のお金じゃ、ホテルなどに泊まることもできない。
裏切られた。私は、今青春の真っただ中にいるのに、家のことでなにもできなかった。
恋も、部活も、友達と遊ぶことも。
ぷっぷー
車のクラクションが後ろから聞こえる。
歩道によって歩いてるはずなのに、なんでだろう。
車は、すぐ後ろで止まった。車の窓が開くと、聞き覚えのある声がした。
「月影さん?。」
読んでいただきありがとうございます。
あと、半分でクライマックスというところでしょうね。次回もお楽しみに。