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かみかみ  作者: 明日駆
3/102

第1話 “守哉、上陸す”

 神奈備島(かんなびじま)


 その島は、九州北西部・有明海(ありあけかい)に存在する、と電話口で聞かされた。しかし、地図を見る限り有明海にそんな島はない。

 地元の漁師の間に広がる噂では、深い霧の立ち込める早朝に、沖合いの最も霧の立ち込める場所に向かって船を進めると、巨大な鳥居を見る事があるらしい。その鳥居をくぐると、神奈備島へたどりつく事ができるという。

 その島の存在は半ば都市伝説と化しており、所詮噂に過ぎないという。信憑性はまったくない。実際今まで何度も深い霧の中で漁をしたが、鳥居を見つけたことはなかったと漁師達は言う。

 なのにも関わらず、守哉の乗った船は深い霧の中で巨大な鳥居を見つけたのだった。

 奇跡、ではないのだろう。



 ☆ ☆ ☆



「……都市伝説じゃなかったのか」

 守哉の目前には、巨大な鳥居があった。

 高層ビル並の大きさを誇るその巨大な鳥居を見上げれば、自然とそういう呟きが漏れるのも仕方がないだろう。それほどまでに、その鳥居は巨大だった。

 天を突くようにそびえるその鳥居には、何年もの間この海を守護してきた門番のようにも見えた。しかし、鳥居には傷一つなく、つい先日建てられたかのように美しい。妖しげな雰囲気を放つこの鳥居は、名を開闢門(かいびゃくもん)という。

「残念ながら違う。……神様が別の世界からやってくる時に通る門、と言われているんだ。不気味かもしれないが、神聖なものなんだぜ?」

 守哉の声に答えたのは、現在守哉の乗っている船・第三大鯨丸(だいさんおおげいまる)の船長・鯨田栄一郎(くじらだえいいちろう)だった。腹の贅肉がシャツの上からでもわかる、肥満体系の中年男性である。現在46歳、独身とのこと。その格好はサイズの合っていないTシャツにブリーフ。朝はいつもこの格好らしい。捕まらないのだろうか。

「俺は横浜ランドマークタワーを見た事があるけど……それよりも高そうだ」

 横浜ランドマークタワーの高さは約296mである。参考までに。

「誰が作ったのかもわからない、得体の知れない異質なものなんだとよ。本来なら神様しか通れないはずなんだが……ある条件を満たした者のみがこの門を通る資格を得られる、といわれている」

 左手の人差し指で鼻をほじりながら栄一郎は言う。右腕はブリーフの中に突っ込んでおり、とても漁船を運転しているようには思えない。

「あんた、ちゃんと操縦しているのか?」

「してないぜ。見ればわかるだろう?鳥居に引き寄せられているんだよ。向こうの神様がお前を気に入ったのかもしれないぜ?」

「勘弁してくれ。自動操縦じゃないのか?」

「こんな古い漁船にそんな機能あるわけないだろう。これだけスムーズに進むのも珍しいからな、潮の影響もあるんだろうよ」

 そうは思えない。栄一郎は開闢門が見える前から船の舵を手放していた。最初からこうなる事がわかっていたのかもしれない。

 守哉の不安を尻目に、漁船は確実に開闢門を目指して進んでいる。

(何でこんな事になったんだ)

 不安が守哉の心を侵食する。栄一郎の方を見ると、いつの間にやら栄一郎はうとうととまどろんでいた。慣れているのだろう。

 近づいてくる開闢門。この門を見ていると、得体のしれない何かが心の中に入り込んでくる気がする。見ている者の心を蝕む何かが、この門にはある。

 ずっと見ていては気が狂いそうだ。守哉は目を閉じて、昨日の出来事について思い返してみることにした。



 ☆ ☆ ☆



 身支度を整えろと言われても、守哉の荷物は部屋の隅にあるバッグだけだったので、守哉は特に何もする事もなく約束の日を迎えた。

 事故に遭った日、守哉とその両親は引越し先へと向かっていたのだが、引っ越し先の家に関しては白馬が話をつけたらしく、既に契約は無効にしてあるらしい。引っ越し業者に頼んで送ってもらっていた荷物は全て廃棄したそうだ。その中に守哉の私物は入っていないので、守哉にとってはどうでもいいことだった。

 守哉の怪我は決して軽いものではなかったのだが、病院側が未鏡家の要請で最新医療を駆使した結果、守哉の怪我は事故から一週間程度でほぼ全快していた。2度手術をしたとはいえ、驚くべき科学の進歩に守哉も少なからず驚愕している。

 ただし、医者いわく、最も酷かった右足ふくらはぎの裂傷に関しては一応は癒えたものの、手術中のミスで後遺症が残ってしまったらしく、激しく右足を動かすと強い痛みが生じる事があるらしい。なるべく激しい運動は避けるように、と医者に注意された。手術ミスは2度目の手術中に起こったらしく、その日は病院側の医師ではなく未鏡家が用意した医師が執刀したそうだ。守哉は医者にどんなミスだったのか聞いてみたが、その手術中は未鏡家の関係者が全て取り仕切っていたため、病院側も手術の内容についてはまったく把握していないのだという。白馬の計らいだろうか。だとしたらいい迷惑だ。

 両親の死にさえ無感動だった守哉だったが、後遺症が残った事は少なからずショックだった。次の日には走らなければいいか、と納得していたが。

「退院の準備はできたかね?未鏡守哉君」

 病室に入るなり、白馬はそう告げた。

 服装は前回会った時とまったく同じ、全身白ずくめだった。

「……どこに連れて行く気だ?」

 青いパーカーに白いシャツ、深い青のジーンズに身を包んだ守哉は、ショルダーバッグを肩に掛けながら答える。

「言ったはずだ、お前には神奈備島へ行ってもらうと。今日、島に行くわけではないがな」

「神奈備島ね……確かに前にも聞いたけど、詳しくは教えてくれなかっただろう。今、教えてくれ」

「知ってどうする」

「これから厄介になるんだから、知っておいた方がいいだろ」

 白馬は守哉の言い分を理解したのか、しばらく思案した後に答えた。

「福岡県の、有明海にある島だ。ただし、地図上には存在しない」

「地図上に存在しない?どういう事だ」

「どうもこうもない。言葉通りだ。地図上には存在しないし、世間的にも存在しない。だが、事実その島は存在する」

 不審に思い目をひそめる。そもそもこの男自体、どう見ても不審者にしか見えないのだ。連れて行かれる場所も、そういった場所だろうとは予想はできた。人体実験でもしているのか、はたまた暗殺者でも育てているのか。

 神奈備島がどういう島かは知らないが、どうせろくでもないところなのだ、と守哉は自身を無理やり納得させる事にした。これ以上質問するより、実際に行って見た方が早いと思ったからだ。

 今更ながら、以前白馬が言った事は正しいと思える。百聞は一見にしかず、というわけだ。

「ついて来い」

 白馬に促され、病室を出る。道中、これからの予定を聞かされた。

「今から飛行機で福岡へ向かう。その後、現地で明日お前を島へ連れて行く案内人を紹介する。実際にお前が島へ行くのは明日の朝だ。島に到着したらお前の身元引受人になる人間の指示に従え。藤原優衣子(ふじわらゆいこ)という女だ」

「身元引受人はあんたじゃなかったのか?」

「私がいいのか?」

「……絶対にイヤだ」

「ならばよかろう」

 白いリムジンに乗せられて、空港へと向かう。流されるままに飛行機に乗せられた。乗せられた飛行機も白かった。白くない飛行機の方が珍しいかもしれないが、白馬の趣味としか思えない。白馬に毒されているのかもしれない。

 福岡に着くと今度は白いポルシェに乗せられ、ようやく目的地であろうただの漁村に付いた頃には、もう夕方になっていた。

 その後、その日の内に鯨田栄一郎を紹介され、そのまま栄一郎の家で一晩を過ごした。

 そして、今に至るというわけだ。



 ☆ ☆ ☆



 守哉が物思いにふけっている間に、船は開闢門をくぐり終えていた。

 一瞬、凄まじい風が吹き―――次の瞬間、周囲に立ち込めていた霧がなくなった。

 同時に、いつの間にか開闢門もその姿を消していた。

「開闢門が……ない?」

「不思議だろう?開闢門をくぐると、開闢門が見えなくなるんだぜ。……ま、もしかしたらまた見る事になるかもしれねぇがな。ほれ、あれが神奈備島だ。漁師達は不知火島と呼んでいるがね」

 栄一郎の指差した先に、その島はあった。

 忽然と、その姿を―――現していた。

「どうなってんだ、一体」

「不思議、不可思議、摩訶不思議―――この島は、不思議に満ちている。……昔、俺がここに送り届けた男の受け売りだ。お前は、この島の最初の不思議を見た。知りたいだろ?知りたくなるだろう?この島の事を。だが、焦っちゃいけないぜ。お前は今日からこの島の住人になるんだ、いずれ知る事になる。そして―――度肝を抜く事になるだろうなぁ」

 いつの間にか守哉の隣に来ていた栄一郎は、そう言って豪快に笑った。栄一郎の汗の臭いが鼻につくが、そんなことは気にも留めなかった。

 神奈備島に向かって船は真っ直ぐに進んでいる。最初から船は開闢門ではなく、神奈備島に引き寄せられていたのだろうか。栄一郎のいう、向こうの神様が引き寄せているのだろうか。

 いや、もしかしたら―――神奈備島にある、何かに引き寄せられているのかもしれない。

「ほれ、着いたぜ。神奈備島だ。……これで俺の仕事は終わりだな。じゃあな、坊主。……幸運を祈ってるぜぇ」

 港に守哉を降ろした後、栄一郎はそう言いながら不敵な笑みを浮かべ、去っていった。

 漁船に乗って遠くなっていく栄一郎の背中を見つめながら、守哉はため息をついた。

「……不吉で、不潔な野郎だったな」

「まったくね」

 守哉が驚いて振り返ると、いつの間にか後ろに一人の女が立っていた。

 歳は20代前半といったところか。かなりの美人だ―――ややつりあがった目をやや半開きにし、腰に手を当てて真っ直ぐにこちらを見つめている。白くみずみずしい肌、澄んだ黒い瞳、高くすっと通った鼻、艶やかな唇……それはまるで、熟しきっていながらも、取る人を誘惑するように枝になる果実のようだった。プロポーションも見事なものだ。腰まで届く漆黒の髪は、首の後ろで縛られている。身長は守哉より10cm以上高くみえた。サイズの合っていない男物のカッターシャツに、黒いスラックスをはいている。

 ……思わず見つめてしまっていた。昨晩、栄一郎の家で読んだ雑誌の影響かもしれない。

「鯨田が連れてくるっていう、転校生はあなたね?私は藤原優衣子。あなたが今日から住む、磐境寮(いわさかりょう)の寮長よ」

「じゃあ、あんたが俺の保護者?」

「そういう事になってるらしいわね。ま、問題だけは起こさないでよね。あんたの名前は?」

「白馬から聞いてなかったのか?まぁいいや……俺は未鏡守哉」

「未鏡……ね。じゃあ、未鏡君。今からあなたが住む磐境寮に行くわ。付いてらっしゃい」

 左手で守哉を促しながら港から離れていく優衣子。優衣子に見惚れていた守哉が我に返った時には、既に優衣子の背中が小さく見えるほど距離を離されていた。

「早くしないと置いていくわよ?」

 優衣子は、振り返って呆れ顔でそう言うと、守哉が付いてくるのを確認する事なく再び歩き出す。

「あ……悪い」

 小走りで優衣子に追いつく。ふと右足の後遺症が気になったが、どうやら小走り程度では痛む事はないようだ。

「なぁ、藤原さん。さっき、転校生って言ってたよな。それって、俺はこの島の学校に通う事になるのか?」

 呆れた顔で優衣子は答えた。

「当たり前でしょう。あなた、何歳?」

「16歳だけど……」

「なら、高等部一年でいいわね。言っておくけど、編入試験はないから安心していいわよ」

「それは助かる。……そうだ、学費は?俺の学費は未鏡家が出す事になるのか?」

「子供の質問にしては重いわね。大丈夫よ。この島の学校―――日諸木(ひもろぎ)学園の生徒は、全員授業料全額免除だから」

「それはまた凄いな。競争率高そうだ」

「競争率もなにも、日諸木学園は文部科学省に教育機関として認められていないわ」

「もぐりの学校かよ……本当にここは日本か?」

「さぁね。……ここが日諸木学園よ」

 二人の前には、学校があった。会話に気を取られていて気づかなかった。

 思いのほか広い校庭の先に、三階建ての校舎が見える。年季の入ったその校舎には、今は人の気配は感じられない。校庭に部活動に勤しむ生徒の姿も見えず、校庭の端、校舎に対し直角に位置する体育館にも人の気配は感じられなかった。

 休日なのかと思ったが、違う。何かがおかしい。

(待てよ……おかしいぞ、この島……)

 そういえば、ここに来るまでに、優衣子以外の島の住人には一人も会わなかった。

 そう、他人の気配を、感じていない―――

「なあ、この島には藤原さん以外に住人はいないのか?」

「いるに決まってるじゃない。ここは無人島じゃないのよ?」

 何を当たり前の事を、といわんばかりの顔で優衣子は答えた。

「でも、ここに来るまで一度も島の人を見かけなかったぜ?」

「ああ……それでね。あなたは何も聞かされていないようね。……詳しい説明は省くけど、島の人はいないんじゃないの。あなたには見えないのよ」

「見えない?どういう事だよ」

「詳しい事はそのうち誰かが教えてくれるわ。それに、明日には見えるようになるわよ」

「わけわかんねぇよ。仮に、俺に島の人が見えていないのなら、なんであんたは見えるんだ?」

「それは……ああ、説明が面倒くさい。明日、他の人に聞いて」

 投げやりにもほどがある。

 極端な面倒くさがりなのだろう。だからといって、ここで引き下がるのも気が引ける。

「今教えろよ」

「今教えてもどうせ理解できないわ。この島には常識が通じないの」

「はぁ?ここは異世界か何かなのか」

「そうよ」

 冗談で言ったつもりだった。本気じゃなかった―――なのに。

 優衣子は、どこまでも真面目で、淡白な声で答えた。

 そして、こちらを睨むように見据え、

「ここは、異世界。不思議、不可思議、摩訶不思議―――この島は、不思議に満ちている。……ここに住む以上、今までの常識は捨て去った方がいいわ。その方が楽よ」

 そう、言った。

「……同じ事を、言うんだな」

 栄一郎と。

 あのおっさんも、同じ事を言っていた。

 そういえば、あの男は誰かの受け売りだと、そんなことを言っていた気がする。

「寮はすぐそこよ、早く行きましょう」

 優衣子に促され、再び歩き出す二人。

 確かに、寮はすぐそこに見えていた。



 ☆ ☆ ☆



「ここが磐境寮よ」

 目の前に建つ建物を指さして、優衣子は言った。

 磐境寮は、旅館のような建物だった。学生寮と言うわりには大きすぎるし、中に入ればまずロビーがある。部屋は全部屋畳敷きの和室で、一階には食堂、地下には大浴場まであるらしい。

 どの部屋も空いているので、好きな場所を自分の部屋にして言いと言われた守哉は、六階建てという事であえて最上階の隅っこの部屋をもらう事にした。食事や風呂の度にいちいち階段やエレベーターを使わなければならないが、まあ景色はいいらしいので、ここは風情を優先する守哉だった。

「荷物はそれだけ?ずいぶんと少ないわね」

「悪かったな。余計なものは買わない主義なんだ」

 正確には、両親が必要なものしか買い与えなかっただけなのだが。

 不要になったものは、引越しの際に全て処分してしまった。

「真面目ね。面白味のない男」

「むしろ、面白味のある男がどういうものか、教えてほしいもんだな」

「そうね……常に不必要で非常識な小道具を持ち運び、その道具を使った一発ギャグを考えてる男、とか?」

「それじゃお笑い芸人だろ?馬鹿馬鹿しい」

「でも退屈はしないわ」

「結局、あんたが面白味を求めるのは自分のためかよ」

「そういうものでしょう?まぁ、私は芸人とは一生関わりあいたくないけどね」

「じゃあ男に面白味を求めるなよ……」

 雑談をしながら、二人は寮の最上階、六階一番奥の部屋にたどり着く。

 今日から守哉の自室となるその部屋は、旅館の客室そのものだった。

 部屋の真ん中に、テーブルを挟んで二つ置いてある椅子には座布団がしいてある。ご丁寧に浴衣と羽織も用意されていた。畳敷きのその部屋は、一人で使うにはやや広すぎるように思えたが、どの部屋もこんなものらしいので、守哉は気にしない事にした。

 扉には、607と書いてある。607号、つまり六階の七部屋目というわけだ。各階に七つ部屋があると考えると、この寮は42部屋しかない、という事になる。寮として部屋が少ないのではないかとも思ったが、そもそも学園に通っている生徒のほぼ全員が実家通いなので、寮生が入る事は至極稀な事らしい。そのため、普段は旅館として営業しているという。そもそもこの寮は、建てたのはいいものの利用客があまりにも少なかった為に、すぐ閉店してしまった旅館をそのまま使っていたものらしいのだが……本末転倒である。

 ちなみに、優衣子は女将と仲居を兼任している。従業員は他におらず、優衣子一人で旅館を管理している、とのこと。

「本当にこの部屋でいいの?言っておくけど、最上階の部屋は結構不便よ?」

「かまわないよ。どうせ旅館に住むなら、景色の綺麗な部屋がいい」

「私が不便なのよ。未鏡君に用ができる度に最上階に行かないといけなくなるから」

「……そいつは悪かった」

 風情を優先するといっても、他人に迷惑をかけるとなると話は別だ。

 すぐに部屋を変えると言う守哉だったが、優衣子はその申し出をやんわりと断った。

「別にいいわ。気持ちはわからないこともないしね。そうそう、夕飯は8時からよ。それまで適当に時間潰してなさいな」

「夕飯か……俺、昼飯食べてないんだけど」

 早朝5時から船に乗り、島に着くまでの間何も食べていなかったので、さっきから空腹気味だった。

 ちなみに、栄一郎の家で食べた朝食はパン一枚と随分貧相なものだった。栄一郎曰く、自炊はしておらず、昼と夜は外食するので朝はいつもパン一枚らしい。

 守哉がそれを優衣子に説明すると、優衣子は菩薩のような笑みを浮かべ、ご愁傷様、と言うとエレベーターで一階へ降りて行った。

「薄情者……」

 残された守哉は、一人盛大な溜息をついた。空腹を思い出したように、小さく鳴りだした腹の音が妙に耳障りだった。

「今は3時……であと5時間もあるのか。寝ておくかな」

 椅子にしいてあった座布団を折りたたみ、枕代わりにして横たわる。

 長旅の疲れからか、守哉の意識はすぐに深い眠りに落ちていった。

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