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かみかみ  作者: 明日駆
27/102

第25話 “墓参り”

 昼休み。高等部一年の教室では、皆友人と机をくっつけあって弁当を広げ始めていた。


 守哉も隣の忠幸と机を合わせて弁当を取り出した。七瀬が弁当を作ってくれる前は忠幸が自分の弁当を分けてくれていたのだが、今はその必要もない。たまにおかずを交換したりして、それなりに楽しい昼食を満喫している。これも七瀬のおかげだ。今度、何かお礼をしなければならないだろう。

 ふと、忠幸は守哉の弁当を見て言った。


「守哉、そのロールキャベツ美味そうだな」


 つられて守哉は自分の弁当を見る。均等に分けられた弁当の中で、おかずゾーンにちんまりと収まっているミニサイズのロールキャベツは、確かに美味そうだった。二つあるし、まぁくれてやってもいいだろう。そう思い、守哉はロールキャベツの対価を選ぶべく忠幸の弁当を見る。これといって自分が惹かれるようなおかずはなかったので、妥当に卵焼きにする事にした。


「忠幸、その卵焼き美味そうだな」

「んじゃ、トレードしようぜ。ほら」

「おう。ほれ」


 互いに相手の弁当箱のふたの上におかずを置く。守哉はロールキャベツを、忠幸は卵焼きを。二人は置かれたおかずを箸で摘み、自分の口に放りこんだ。

 ロールキャベツを食べ終わった忠幸は、目を見開いてうめぇな、と言った。


「いやぁ、藤原さん料理上手だったんだなぁ。ちょっと意外だ」


 そういえば忠幸にはこの弁当を作っているのが七瀬だという事を教えていなかった。別に隠しておく事でもないので、守哉は教えてやる事にした。


「いや、この弁当作ってくれたの藤原さんじゃないんだ」

「んじゃ、お前が作ったの?」

「違う。これは七瀬が作ってくれたんだよ」

「七瀬って……ああ、神代姉妹のか」

「知ってるのか?」

「神代家の事を知らない人間はこの島にはいないよ。そういやお前神和ぎだったな。訓練ついでに仲良くなったのか?」

「まぁ、な」


 今は仲が良くなったどころか、好意を寄せられてるんだけどな、と守哉は心の中でつけ加えた。とはいえ、守哉はその事に関していまいち納得していないのだが。

 すると忠幸は、少し不機嫌そうに口をとがらせた。


「ふーん。俺以外のやつと仲良くなってたのか。意外だな」

「七瀬は最初から俺に優しくしてくれてたんだよ。なんつーか、今は妹的な存在だな」

「妹ねぇ。いや、お前案外モテるんだな」


 何故そうなる。


「いやいやいや、モテるってお前な、俺がどれだけ嫌われてるか知ってるだろうが」


 実際、今でもクラスメイトの何人かは不快そうな視線を守哉に向けている。


「そりゃ知ってるけどさ」

「だろ?俺はモテないよ」


 自分で言って少し悲しくなる守哉だった。


「いや、それとこれとは違うと思うぜ。お前の場合、モテないんじゃなくて嫌われてるだけなんだよ」

「それ、どう違うんだよ」

「つまり、モテはするんだよ。でも、皆お前の事が嫌いだから人気者にはなれない。そういう事だよ」

「それって、モテないって事なんじゃないの?」

「違うよ。なんつーのか、ほら……お前、顔だけはいいじゃん」

「そうかぁ?」

「そうだよ。自分の顔、改めて鏡で見てみな。すっげー美人だから」


 守哉はぽりぽりと頭をかきながら後ろの窓ガラスを見た。うっすらと写りこんだ自分の顔を見つめるが、特に感想は思い浮かばない。いや、自分の顔をずっと見つめていると、少し悲しくなった。そういえば、両親は自分の顔だけは傷つけようとはしなかったな、と。


「な?美人だろ」

「……いや、特にそうは思わねぇなぁ」

「なんだよ、お前の美的センスは狂ってるのか?クラスを見回してもお前ほどの美人はいないぜ?ていうか、もしかしたらお前はこの島一番の美人かもよ」


 そう言う忠幸の顔には変な雰囲気が漂っていた。なんというか、まるで自分の彼女を自慢している男のような雰囲気が。


「そ、それは言いすぎだろ。つーか、俺、男だし。美人とか言われても嬉しくねぇよ」

「……お前、女装したらどうなるだろうなぁ」


 守哉の背筋に悪寒が奔る。なぜだか、忠幸から危ない空気が漂っているような気がした。


「考えてみたら、お前スレンダーだよなぁ。なんか、色っぽい感じだ」

「お前、ちょっと目つきが怖いぞ」

「髪型もショートヘアっぽいし、ちょっと目つきがつり上がってるのが勝気そうでイイな」

「つか、女装なんかしないからな、俺は」

「スカートよりもショートパンツが似合いそうだな。脚線美とか凄そうだし」

「お前、俺の話聞いてる?」

「化粧は……する必要もないか。ベースがこんな美人なんだから」

「あのさぁ、普通に引くんだけど」

「いつも着てるパーカーもイイ感じだ……綺麗なうなじがよく見える」

「……飯食い終わったし、授業の準備するからな、俺は」


 そう言って守哉がくっつけた机を離そうとすると、忠幸が両手で机をがっしりと固定した。強引に引き離そうとしても、机はびくともしない。忠幸は見た目は細いが、意外と筋肉質なのだ。


「は、離せよ。もういいだろ?飯は食ったんだから」

「いいや、俺の話が終わってねぇ。じっくりと話し合おうぜ?守哉」


 忠幸の両目が獲物を狙う鷹のように鋭く光る。この日、守哉は生まれて初めて自分の顔の美しさを怨んだ。



 ☆ ☆ ☆



 神奈備島の墓所は、学校を挟んで磐境寮の向かい側、つまり島の西側にある。


 墓標を掃除しなければならない人間はこの島にはいない。そのため、島中のあらゆる場所の清掃が許可されている人間……即ちトヨが時折掃除しにやってくる。しかしトヨは、島中を掃除しなければならないため、墓所を掃除しにくるのは一月に一度だけである。島で死人が出るのもわりと稀である事もあり、神奈備島の墓所は寂れ果てていた。

 そんな墓所に、一人の女性がたたずんでいた。藤原優衣子である。左手に花束を持ち、無表情で目の前の墓標を見つめている。


「……今年も来てあげたわよ。嬉しい?」


 そう告げる優衣子の顔には、普段の面倒くさそうな表情は欠片も見当たらない。かといって、死者の安らぎを祈っている風にも見えなかった。


「あんたがいなくなってから、もう3年よ。短かったようで、長かったようで……とにかく、複雑な3年間だったわ」


 優衣子は悲しげな微笑を浮かべた。


「ダメよね、私って。未だにあなたの仇を討てずにいるのよ?チャンスなら、いつでもあったはずなのに。なんなら、今すぐにでも殺しに行ってやってもいいくらいなのに」


 花束を握る左手に力がこもる。唇をかみ締めて、優衣子は言った。


「どうしても、できないのよね。私は臆病者だわ。あの時、戦いに赴こうとするあなたは、とても勇敢だったのに……」


 目を閉じて、優衣子は想う。自分を愛してくれた男の事を。自分が殺し損ねた男の事を。


「……やっぱり、今年も花束はお預けね。まだ、忘れられそうにないもの。あなたの事」


 そう言って、優衣子は墓標に背を向けた。俯いたまま、墓所を出ようとする。

 そこで、優衣子は気づいた。誰かが墓所の入り口に立っていた事に。その人物を見て、自然と優衣子の目が鋭くなった。


「誰かと思えば、お前かい」


 墓所に現れた人物……トヨは、優衣子を侮るようにふん、と鼻を鳴らした。その手には掃除用具が握られている。


「まだ引きずっておるのか?あの男の事を」

「お前には関係ない」

「わかりやすいヤツじゃの。そんなにあの男を好いておったのか。お前らしくもない」


 優衣子の目に憎悪が宿る。カッターシャツに隠れた右肩がうっすらと光った。


「それほどまでにわしが憎いか。お前の代わりにあの神さびを殺したわしが」

「黙れ」

「あの時、とどめを刺せなかったお前にわしを憎む権利があるのか?」

「お前に、何がわかる」

「わからんな。わかりたくもないわい。第一、あの時わしがとどめを刺さなければお前は死んでいたのかもしれんのだぞ。言うならばわしはお前の命の恩人じゃ。恩を仇でかえそうというのか、お前は」


 優衣子の肩の光が増していく。優衣子の左手が右肩を目指してゆっくりと動いた。


「無駄じゃ。いくら聖痕が輝けど、今は剣を抜く事はできない。お前もよく知っておろうが」


 左手の動きが止まる。ふと、優衣子は諦めたように微笑んだ。


「……こんな所で戦っても、しょうがないか」


 そう言うと、優衣子は墓所の入り口へ向かって歩き出した。トヨも掃除用具を持ったまま歩き出し、優衣子とは対照に墓所の中へと入っていく。

 途中、二人はすれ違った。すれ違う瞬間、トヨは不敵に笑って呟いた。


「……所詮、お前は女を捨てられなかった、というわけじゃな」


 瞬間、優衣子が動いた。強烈な裏券がトヨの後頭部を襲う。それをトヨは右手に握ったほうきで受け止めた。


「ふん!怒ったか?事実だろうに!」

「お前に何がわかる!!あいつを殺したお前に!!」


 優衣子は右手を引っ込めながらハイキックを繰り出した。トヨは素早く飛び退いてそれをかわす。いつの間にか身体強化の言魂を発動していたようだった。トヨは先ほどまでとは打って変わり、背筋を伸ばして仁王立ちしている。


「わからんのう。お前と違い、わしは当の昔に女など捨ててしもうたんでな」

「あんたなんかが女捨てようが捨ててなかろうが、どちらにせよ嫁の貰い手なんてないわ」

「そういうお前は、唯一の貰い手を失ったじゃろう。早くに女を捨てたわしと唯一の嫁ぎ先を失ったお前。どちらが幸せなのかのう?ふぇっふぇっふぇ……」

「黙れ!!」


 優衣子はトヨに向かって突進した。トヨの懐に飛び込むと、凄まじい勢いで拳の連撃を繰り出す。トヨはそれを右手のほうきと左手のバケツで受け止めた。ガガガガガ、とバケツに優衣子の拳が連続で命中し、瞬く間にバケツが変形していく。


「無駄な事をするでない。お前ごときがわしに勝てるわけがないじゃろう」

「それは、やってみなければわからないわよ!」


 優衣子の鋭い足払いがトヨを襲う。トヨはそれをジャンプしてかわした。それを見計らい、優衣子は片手を地面につけて回転しながら逆立ちし、そのまま両足を風車のように回した。見よう見真似だがカポエイラである。トヨはバケツでそれを受け止めるが、空中にいたためにふんばれず後ろに吹き飛んでしまう。

 トヨが地面に着地する前に優衣子は体勢を戻していた。トヨが着地した瞬間を見計らい、両手を前に突き出して握る。


「―――掌握!!」


 すると、トヨが着地した地面の周囲が突然盛り上がった。盛り上がった土はトヨの周囲を覆うように展開し、次の瞬間トヨに襲い掛かった。


「―――風よ!!」


 トヨの叫びに呼応して、土がトヨに襲い掛かる直前に烈風がトヨの周囲に吹き荒れた。風が土を巻き込んで、次の瞬間周囲に四散する。トヨの視界が開けた時、目の前には不敵に笑う優衣子の顔があった。


「!!」


 優衣子のハイキックがトヨの頭を襲う。驚いていたトヨはガードする暇がない。キックが直撃し、トヨは真横に吹っ飛んだ。さらに追い討ちをかけるように優衣子が駆ける。空中でトヨの首を掴むと、そのまま地面に―――いや、たまたま近くにあった墓標に叩きつけようとする。


「―――甘いわ!!」


 トヨの叫びに呼応して、風の刃がトヨを掴む優衣子の右腕を包み込んだ。瞬間、凄まじい激痛が優衣子の右腕を襲う。右腕の握力が弱まり、トヨは優衣子の腕から抜け出して空中で一回転すると、墓標の上に着地した。


「罰当たりね」

「お前が言うか」


 優衣子は傷だらけの右腕をトヨに向かって振るった。血液が飛び散り、瞬時に硬化してトヨの顔面に襲い掛かろうとする。トヨはそれをバケツで受け止めた。更に右腕に持ったほうきを振り回し、優衣子に向かって投げつける。


「そんなもの……っ!」


 優衣子は投げつけられたほうきを受け止めようとした。しかし、直前でほうきが刃を孕んでいる事に気づき、しゃがんで避ける。そこに、血液が入ったバケツが飛んできた。慌てて優衣子は転んでかわす。


「甘いのう」

「!!」


 体勢を崩した優衣子の真上からトヨの声が聞こえる。優衣子が上を見上げる直前、トヨの強烈な頭突きが優衣子の頭に直撃した。頭の中に火花が散り、一瞬優衣子の動きが鈍る。

 優衣子に出来たその隙をトヨは見逃さなかった。優衣子の目の前に着地したトヨは、優衣子のみぞおち目掛けて手刀を突き出す。凄まじい勢いで突き出されたその手刀は、カッターシャツを突き破ってわずかに優衣子のみぞおちに突き刺さっていた。


「がはっ……!!」

「まだまだじゃな」


 トヨが手刀を引き抜くと、優衣子は地面に膝をついた。ふらふらとよろけながら立ち上がろうとする優衣子に、トヨは右ストレートを放つ。たまらず優衣子は地面に転がってしまう。


「前線から退いたお前が、現役で戦うこのわしに勝てるわけがなかろう。ここで大人しく寝ていろ」


 そう言うと、トヨは変形して使い物にならなくなったバケツを拾って墓所を出て行った。恐らく、新しいバケツと取替えにいったのだろう。

 優衣子は腕に力を込めて立ち上がろうとしたが、すぐに力尽きて地面に転がった。仰向けになって空を見上げ、優衣子は呟いた。


「……無様だわ」


 涙は出なかった。ただ、虚しさが優衣子の心の中を満たしていった。



 ☆ ☆ ☆



 放課後。守哉は、授業が終わるとすぐに磐境寮ではなく神代家に向かった。


 理由は簡単で、寮に帰っても特にやる事がないからだ。逢う魔ヶ時までまだ時間はあるし、それならば神代家で暇を潰す方が効率がいい。何より、七瀬が喜んでくれるのだ。

 インターホンを押すと、ぱたぱたと足音が聞こえてきて七瀬が出迎えてくれた。嬉しそうな顔で七瀬は守哉を招き入れる。


「……いらっしゃい、かみや」

「お邪魔しまーす」


 お茶を持ってくる、と言った七瀬と別れて守哉は客室へと向かった。客室の障子を開けると、そこには先客がいた。神代七美である。


「あれ、珍し……くもないか。最近は」

「うっさいわね。早く入んなさいよ」


 急かされて守哉は客室に入ると、七美の向かい側に座布団を敷いて座った。


「あんた、なんでここにいんの」

「逢う魔ヶ時まで暇潰しに来たんだ。どうせ後で来るんだし、ちょうどいいかと思って」


 あっそ、と興味なさげに七美は言った。


「まぁあんたなんてどうでもいいけど、あたしの邪魔だけはしないでよね」


 七美は本を読んでいたようだ。テーブルに大きな古い書物を広げている。


「何読んでるんだ?」

「神奈備島古事録よ。呪法の勉強してんの」

「ふーん……」


 守哉はちょっと意外に思った。七美はトヨを嫌っていたので、こういった事には無関心だろうと思っていたからだ。

 守哉の視線に気づいたのか、七美は顔を上げた。


「な、なによ」

「いや、ちょっと意外に思ってさ。なんで勉強しようなんて思ったんだ?」


 そう言われて、七美はぷいっと顔をそむけた。気のせいか少し頬が赤くなっている。


「それは……別に、大した理由じゃないわ」

「だったら教えてくれよ」

「た、大した理由じゃないから」

「大した理由じゃないんなら教えてくれても……」

「う、うっさいわね!別に大した理由じゃないって言ってるでしょうが!」

「なんで怒るんだよ」

「あんたが聞くからでしょー!!」

「聞いちゃいけなかったのか?そりゃごめん」


 なんだかよくわからないやり取りをしていると、七瀬がお茶を持って入ってきた。二人の様子を見て不思議そうに首をかしげている。


「……どうしたの?かみや」

「いや、なんか突然七美さんが怒り出して」

「怒ってないわよ!」

「怒ってるじゃん……」


 顔を真っ赤にして怒る七美と脱力してうな垂れている守哉を見て、七瀬はくすくすと笑った。


「……二人とも、まるで姉弟みたいだよ」

「それって、喜んでいいのか?」

「いいわけないでしょ!!なんであんたなんかと!!」

「……とっても仲良さそうに見えるもの。わたし、嬉しいな。二人が仲良くなってくれて」


 七瀬はにっこりと笑いながらそう言った。七瀬の本当に嬉しそうな顔を見て怒気が抜かれたのか、七美はため息をついて僅かに微笑んだ。


「……まぁいいわ。それより、呪法の勉強よ。七瀬、続きを教えてよ」

「……うん。でも、かみやはどうするの?」

「俺?うーん、どうしようかな」


 どうも七美は真面目に勉強しているようだし、自分がいると勉強の邪魔になるかもしれない。そう考えた守哉は、別室を借りて昼寝でもする事にした。


「んじゃ、俺は別の部屋で昼寝でもするかな。七瀬、時間になったら起こしてくれよ」


 すると、なぜか七瀬と七美は不満そうな顔で守哉を見つめてきた。


「な、なんだよ」

「……かみやはいっしょに勉強しないの?」


 とても悲しそうな顔で七瀬が言った。少し申し訳ない気持ちになりつつも守哉は答える。


「いや、俺がいたら邪魔になりそうだし……」

「別に邪魔じゃないわよ。邪魔だけど」

「どっちなんだよ」

「……かみやがいてくれた方が、わたしは嬉しいな」

「でも、七美さんがなぁ」

「あ、あたしはあんたなんて邪魔なんだけど、七瀬がいてほしいって言ってるんだからいてあげなさいよ」


 七美は顔を赤くして言った。何かと七美の顔は赤くなるので、まるで信号機のようだと守哉は思った。本人には口が裂けても言えないが。


「本当にいいのか?俺がいて」

「い、いいわよ?別に。七瀬がいてほしいって言ってるんだから仕方ないもの」

「……かみや、おねえちゃんもかみやが傍にいると嬉しいの。だから、いっしょに勉強しよ?」

「ち、違うわよ!なんでそうなるのよ!あたしはこんなヤツ邪魔なのよ!」


 七美は慌てて七瀬の言葉を否定した。いい加減面倒くさくなった守哉は別室で昼寝したくなった。


「なら、俺は別室で……」

「……かみやー……」

「あんたはここに居なさいよ!邪魔だけど!」

「はぁ。でも、すっげぇいづらいんだけど」

「いいからいなさい!!」

「あー……。わかりましたよ、もう」


 なんだか抵抗するのも馬鹿馬鹿しくなってきたので、結局守哉は客室に止まる事になった。呪法の勉強を七美と一緒にするかどうかはさておいて。


 乙女心は難しいなぁ、と守哉はぼんやりと思った。

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