勇者様ご乱心?
勇者一行は苦しい冒険の旅の末ついに魔王と対峙した
「覚悟は良いか、魔王め」
メンバーの中で最も血の気の多い剣士が前に出て言い放つ。一歩下がって魔法使い勇者弓使いが並び更に後ろには聖女が控える。
「はへぇ?」
魔王が間抜けな声を上げる。何となればいきなり勇者が剣士を背後から切りつけ、返す刀で弓使いと魔法使いを襲う。理由のわからないまま倒れる3人
「そこの人、まだ生きているはずだから今のうちに拘束しておいて」
魔王の脇を固める兵士に声を掛ける。
「聖女は拘束が済んだら死なない程度に回復させて」「え?えぇ」
聖女もわけが分からないが、仲間を見殺しにもできないので回復魔法の準備をする。
もっと理由のわからない魔王軍の兵士も、チャンスではあるので3人を拘束する。
「この3人手土産ということで、あんたのところで雇ってくんない」
あっけらかんと魔王に声を掛ける勇者
「貴様、裏切る気か?」
聖女の回復魔法で意識を取り戻したま剣士が拘束されたまま叫ぶ
「裏切るもなにも、成り行きでここまで来たけれどいまいち仲間意識持てなかったんだよねー。せっかく平和に暮らしていたのに勇者召喚だとか理由のわからないことで呼びつけられて、帰る手段無いとか言われるし、どちらかといえば恨みしか無いわけだ。一方魔王には特に恨みとかないわけだ。更に厳しい修行とか強要されるし」
「あーわかるわかる。わたしもおんなじ状況。うん。わたしも魔王ちゃんのところで雇ってもらおうかな」
聖女が勇者に同調する。この二人は異世界から召喚されたのだった。残る三人は現地人だ。
「しかも魔王様は可愛い幼女だし」
勇者が続けて物を言う
「でもーもしかしたらロリババァという可能性もあるよー」
聖女がノリよくツッコミを入れる
「あ、ロリババァというのはね、外見は幼女だけど実は年齢的にはおばあちゃんのことだよ」
転生者である二人以外には意味不明だろうからと、聖女が説明する。
「妾はまだ14歳だ」
魔王が叫ぶ。そう、魔王は可愛らしい少女であったのだ。
「バカなことを言ってないで魔王をよく見てみろ。頭には角があり背中には羽根、更には尻尾まで生やしているではないか」
魔法使いが言うが
「えー、そこが可愛いんじゃん」
聖女は気にもとめない
「そうそう。人間だってエルフだのドワーフだの俺達から見ればおかしな連中だし、魔法とか使ったりとか。魔族だって意思疎通できるんだから結局五十歩百歩だろ」
勇者も同意を示す
「貴様ら無礼であろう。魔王様の御前で」
魔王の取り巻きの一人が咎めるが
「えー、いいじゃん。仲良くしようよー」
聖女はすっかり友達認定であった
「貴様ら人類がどうなっても良いのか」
剣士が再度声を上げる
「あ、まだ居たの?どうでもいいとは言わないけどそれと同等以上に魔族もどうでも良くないんだよね。異世界から来た立場からしたら人類も魔族も大差ないって、言っただろ」
「貴様には恩義というものはないのか。その強さだって修行をつけてくれた人たちのおかげだぞ」
「何いってんの?こんな強さ元の世界にいれば全く必要ないものだぞ。食い物もこっちの世界では豪華かもしれないが、元の世界のほうが美味かったし、ここに向かう道中は自給自足のクソ不味だったし」
「そーそー。勇者が料理できたからかろうじて我慢したけど、そうじゃなかったらと思うとゾッとするわ」
聖女が言うと
「お前も女なんだから料理ぐらいできるようにしろ」
「あー、女性差別いーけないんだいけないんだー」
「うっさい、じゃ女なんだからだけ撤回」
夫婦(?)漫才状態になってくる
呆れた魔王が
「妾はいつまで蚊帳の外に居れば良いんだー」
声を掛ける
「ごめんねー。勘違いくんたちをしっかり言い負かせておくからー」
魔王たちの置いてけぼりは当分続きそうである