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第六十七話ミイラと

 『そういう訳で、ご同行いただけませんか。我らがファラオ?』


 と言われたクヌムの中には困惑が渦巻いていた。


『あなたのような存在は知りませんが』


『それは仕方ないね。私達は古代にも存在はしましたが、隠匿されるような重要な党派でしたから』


 その言葉を聞いて、クヌムは眼の前にいるのは家臣を語って自分たちを利用しようとする下衆だと判断した。

 

『いえ、そうであったとして(ファラオ)に仕えるものの党派であれば、ファラオ様から聞かされていないわけがないです。あなたは一体何者なんですか!』


 クヌムはそう説いて、戦闘に適した体勢に移行する。


『まあ、仕方ありません。あなた自体はファラオではないので、分かってもらわなくても結構です。――――――では力尽くでご同行願いましょう』


 そう言って、影はノルトラを使用しようと、体勢を変える。


 クヌムはさせるかと体を動かそうとしたが、一切動かない。


『くっ、この感じは、ノルトラですね。さっきの時間で時間稼ぎをしていたんですか。はめられたといったところでしょうか』


『これは失礼いたしました。不愉快な気分になられましたら謝罪をさせていただきますが?』


 影はクヌムに対して嗜虐的な笑みを浮かべて、やや声高くなる。


 それに対してクヌムは牽制するかのように、苦しみながら『けっ、結構です』と言う。


 その様子を見て何やら思い出したかのように影は言う。

 

『そういえば、秘匿されていた為に名前はファラオ様にも伝えていませんでしたね。でははじめましてでもあり、久しぶりでもありますので自己紹介をしましょう。私はこのエジプトにある犯罪組織…………いえ、こんな肩書はどうでもいいですね。私の名前はセクメと申します』


『自分が勝ちを確信したときに勝利宣言代わりの自己紹介ですか…………、いい趣味していますね』


 その言葉を聞いたセクメは不思議そうな顔をして尋ねる。


『おかしいですね。あなたがまごうことなき本物でしたら、この状況からでもチャンスが無いわけでもないので試合開始の作法として名乗っただけなのですが』

 

『よく分かっていらっしゃいますね!』


 クヌムは辺りから食料庫にあった材料にされる前の生物にノルトラを使ってミイラ化させて、自分のもとに連れて来る。


『流石は死して冥界の王になったお人の力だ!素晴らしいです。さっきまでただ死んでいただけの生物を動かすだなんて、やはりファラオ様は素晴らしいです』


 そう言いつつも、セクメは銃弾を使ってミイラたちをあしらおうとする。


『何をやっているんですか。私のことを知っているんだったら、ファラオに使えるような身分だったら、知っているんでしょう?ミイラは死後も生き続ける存在です。そんな攻撃は効きません』


『はい、そのようなことは既に存じ上げております。その上で私はあなたに傷をつけない足止めのためにやっています』


『そうですか。でしたら、これから総攻撃を仕掛けてもあなたはそこまでの攻撃は放てないのですね』

 

 そう言い、クヌムは食材倉庫から大量のミイラを作り出してセクメに差し向ける。


 しかし、それらは四方八方にばら撒かれたセクメの銃弾によって払われる。


 払われても、ミイラが使えなくなるわけではなく。何度でも攻撃が通るまで攻撃を浴びせる。


 セクメはまるでライン作業のように淡々と、ミイラたちを撃ち抜いて、攻撃をキャンセルさせる。


『埒が明きませんね。遊戯はもうこれくらいで良いでしょう?私とあなたの能力(症状)では互角というのは少し語弊がありがありますが、このままでは永遠にこの状況は変わりませんよ。もう諦めてご同行してくれませんか?』


『いいえ、ナフヌ(私達)には、頼もしい護衛がついています。なのでその人達が来るまで、耐えさせてもらいます!』


 そう言って、クヌムはさらなるミイラを呼んでセクメの周りを囲む。


『えぇえい!面倒くさいですね!もうこうなってしまえば、使いたくはありませんでしたが、強引な形でご同行願うしかありませんね!』


 そういって、セクメは銃弾を二丁持ちに変えて、クヌムに向かって放つ。


 放たれた銃弾はまっすぐ飛ぶ命を奪うための軌道では無く、若干横に曲がっている威嚇のための軌道で、クヌムの肌を擦って、少し出血させる。


MI(開発者)さんが、何も頼んでいないのに、いざというときに役に立つからと言って、ほとんど押し連れられるように貰ったこの力ですが、まさか使うことになってしまうとは。では今一度言いますご同行お願いいただけますか!?』


『いいえ、私は断固としてここから…………!?』


 クヌムは驚いていた。


 それはなぜか、自分の意思でも動かなかった体が動いていたからである。


 (これではいけません。これでっはっ!)


 もはや、自分の口を動かして喋ることも出来ないくらいに、クヌムの体の制御権はノルトラによって奪われていた。


 こうなってしまえば、一巻の終わり。どうすることも出来ずにただ連れ去られるだけだと思ったその時、セクメの目に異変が訪れる。


『おかしいですね。なぜ、私の視界の中にもやもやとした犬の様な存在がいるのでしょうか。私に向かってくるわけでもありませんし、ファラオ様のノルトラ産のものであるなら品種はジャッカルになるはずなのに、この犬はまるでその様な見た目には見えない。これはファラオ様とは一切関係なさそうですが………………』


 と、犬に対して疑念の感情をはらんだ目を向けつけていると、犬がセクメに向かって飛びかかっていた。


 当然、セクメはその犬を払おうとして腕を振るが、それは叶わない。

 

「あっ!クヌム発見!大丈夫?なにか襲われているのが見えたから、助けに来たけど。あっ、でも私の言葉は聞こえてないんだった。」

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