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第六十六話捜索

 俺は似非SAMURAを拘束してそこら辺をうろついていたミラの分裂体に事態を説明しつつ引き渡して一旦落ち着いてから、クヌムを探しに行くことにした。


 ということで、今は絶賛クヌム捜索中だ。


 クヌムは現代社会においては珍しく携帯を持っておらず、

 

 こんな状況もあろうかと、な感じで発信機をつけておきたかったが、人権意識的なものによってそれは拒否された。流石に正義側の存在が本人の確認を取らずに発信機はつけられない。


 こんなことだったら事前に聞いておいたほうが良かったか。


 現在は取り敢えず人気の多い場所にいるかも知れないということで、プールなどを捜索している。


 本当なら賢花と二手に分かれて捜索したかったが、この船には複数人賢花を狙っている存在がいる為に、護衛しながら探すことになっている。


 俺だけなら納豆パワーを使ってなんとかできないこともないが、俺はSDМBVFでバイトをしていている以前に賢花を護るというバイトもしているマルチワーカーなので、それはできない。


 なので、ただ時間を無為にするような地道な捜索方法しかできない。


 そんなことを考えながら、賢花をおぶって捜索をしていると、

 

「糸縁、もしかして私がいることで全力を出せていない?そうだったら私も別れて捜索したほうが良いよね?」

 

 と、言ってきた。


「いや、納豆に不可能はない。どんな過程を辿ろうとも、最後に勝利するのは納豆だからな。今の状態でも見つからなくても、絶対に探し出す。賢花が危険に身をさらして戦う必要はない」


「…………それって、もしかして強がり?大丈夫だよ。私も戦えないわけじゃないんだから」


「だが、その戦えるというのはノルトラの能力(症状)ありきだろう?変にノルトラを使って、容態が悪くなったら駄目だしな」


「でも、それは糸縁だって同じ条件じゃん。というか、激しくノルトラを使う戦いが終わってからの寝る時間がだんだん長くなっているじゃん。私はいつか糸縁が目覚めなくなるのが、怖いの」


 NLに言われた言葉が、俺の中でフラッシュバックする。

 

 君が今のままノルトラを酷使していると死ぬ。


 言われた相手は、専門外なのに軽々多機能を搭載した常時つけても違和感がない完全翻訳装置みたいな秘密な道具のようなものを簡単に作ってしまった人間。いわゆる天才。この人間を信用しないようではもう納豆以外何も信じられなくなる。

 

 確かに、最近は代償が大きくなっている気がする。これは賢花の言葉通りにしたほうが良いのだろうか。


「いやでも、ここには…………………………そういえば賢花にはあれを持たせていたな。よし、確かに、賢花の言う通りかもしれないな。分かった、最後にどうやって戦うのかだけ聞かせてくれ」 

 

「私のノルトラの能力を使う」


「えっ?確か賢花のノルトラである狂犬病ウイルスは一撃で相手を即死させるんだろ、公的機関が殺傷させるなんて駄目だと思うが」


「大丈夫、狂犬病ウイルスはそれだけのものじゃないんだよ。幻覚を見せることだってできるんだから、それで相手を戦意喪失状態にする」


「分かった。賢花の言葉を信用する。じゃ、これからは賢花の提案通りに分かれて行動するぞ。なにか見つかったら報告頼む」


 そう言って俺と賢花は別れた。

 

 賢花と別れたことによって、俺は背中に乗っているものを気にしなくて良くなり、捜索の効率が増す。


 それによって、目立った場所の捜索はすぐに終了する。


 しかし、そこにクヌムの影はなかった。

 

 人が多い場所を探したがいなかったので、今度は逆に人が少ない場所で探すことにした。


――


 糸縁が捜索をしている頃、捜索対象であるクヌムは船内で楽しく食事をしていた。


『やっぱり、故郷の味は格別ですね』


 と言いつつ、パンの一種であるエイシュをかじる。


 故郷にもあった料理を堪能するクヌムの側に、影が忍び寄る。


 影がクヌムに対して後ろから声をかけた。

 

『ふーん、ここで一人でいるなんて、こんな物騒な世の中なのに不用心な人なんですね、あなた。よかったら私が守ってあげましょうか?』


『気持ちはありがたいですが、ナフヌ(私達)は』


 クヌムは顔を振り向いて言葉の続きを言葉を紡ごうとしたが、その言葉は影の言葉によって覆われる。


『まあ、あなたの隷属が条件にはなってきますが』


 そういって、影は銃をクヌムに向かって突きつけてきた。


 反射でクヌムが声を上げようとするが、


『あ、無駄ですよ。ここで警備員を呼んだところで、この船には私達側の人間を多く乗っているので、揉み消せます』

 

 と、影に牽制される。


『あなたは何者ですか!なんでナフヌ(私達)を求めるんですか』


『それはね。私達の組織が代々君の中にいる”ファラオとその妃”に仕えている存在だからだよ』


 そう言って影は銃を向けつつも、残っている腕を上げてかしこまった姿勢になり言う。


『そういう訳で、ご同行いただけませんか。我らがファラオ?』

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