第六十五話似非SAMURAI
ハイビスカスティーを手に入れるべく売店に来ていた俺は、明らかに怪しい人間を見かけていた。
その人間はいつぞやの死神狩りのような見た目をしていて、こんなことを口に出してしまったらルッキズムと批判されるかもしれないがあきらかに見た目から怪しかった。
うーん、あいつら確か、闇組織にくっついて出てくる兵みたいな空気を出していたが、こんなところにいるものなのか?
いや、ここに闇組織の連中がいるならその限りでは全く持ってないんだが、だとしても、こんな人がいるところに顔を出すか?
まあ、こういう時は賢花連れ去られるのが経験則からわかるから、急いで戻って安全を確認するのが常道だな。
と、考えて俺は身体強化をフルに使って面倒事を起こさないように、静かにその場から去る。
俺が元いたベランダに戻ると、賢花は相変わらず優雅にハイビスカスティーを飲んでいた。
俺が戻ってきていることに気づいたのか、賢花は、
「あっ、もう帰ってきてたんだ。早かったね。あれ、ハイビスカスティーは持ってないけど、もしかして何かあったの?」
と聞いてきた。
「ああ、普通に怪しい人間に遭遇したから賢花が攫われているんじゃないかなと思ったから、ハイビスカスティーも買わずに戻ってきたんだ」
俺の言葉を聞いた賢花は、先程までのただただ疑問に思っていた表情から一変して真剣な顔になって問う。
「…………それってどういうタイプの怪しい人間?」
「黒服、サングラス、黒いネクタイ。黒一色の日食人間タイプだ。怪しい人間のお手本と言っても信じるくらいのコテコテのやつだな」
「つまり典型的な悪そうに見える人間ってこと?」
「ああ、間違いない」
「それで私はどうすれば良い?隠れていたほうが良いかな。一応、足手まといにならないくらいには鍛え来ているんだけど」
賢花は覚悟が決まっているような目で俺のことを見つめた。
「いや、賢花の言う鍛えたってノルトラのことだろ。今の状態で使ったら、どんな跳ね返しが来るかわからないのに、むやみに使うべきではないな。ここは俺が護る。一応納豆糸で何重かに繋いでおくが、離れないようにしておいてくれ」
さて、ここからどうしたものか。ここが危険な場所と分かれば今すぐにでも護衛対象であるクヌムを俺の側において連れて行かれないようにしなければ行けないが。この状況で下手に動きたくはない。よし、クヌムは一旦納豆糸だけの捜索にとどめてこの場から去ってから探そう。
そんなことを思っていると、さっき見かけた奴とは違うが、黒尽くめのやつが出てきた。
取り敢えず、物理的干渉をされるのは面倒なので、賢花の周りにあらかじめ納豆糸でいつでも感知、防御する結界のようなものを生成する。
「賢花のいる周り半径一メートルくらいの周りに多目的結界を張った。これで一応は大丈夫だとは思うが、相手がどんなノルトラを使ってくるかわからい。警戒しておいてくれ」
「うん分かった」
俺と賢花が軽い確認を取った後、黒尽くめ奴が話しだした。
『私の名前は死神狩りNo.2。そこに見受けられるのは間違いなく死神のノルトラ持ちと見える。ならば、いざ尋常に勝負!』
謎の外国語侍かぶれが現れたか。しかし、真っ向から向かってくるのでは話にならない。
そう思いながら、俺は刃を潰した木刀状態にし『納刀』を作って、横に払うことによって叩き潰そうする。
が、外国語侍かぶれの体から大量に出てきたよくわからい気色悪い虫、あいつが言っていた嚢虫と思われるやつによって防がれる。
その後、持っていた圧倒手に日本の刀には全く持って見えない謎の刀による攻撃が飛んで来たので、簡単に俺の『納刀』を使って叩き落とす。
寄生虫か何かのノルトラによる攻撃は中々面倒なものがあるが、それ以外は問題ないな。
『なるほど、ただの雑魚侍って訳では無いらしいな。だったらこちらも同じ手で対抗するとしようか』
そういって、俺は『納刀』をもう四本ほど作って五刀流になる。
『そっちもSAMURAIだとお見受けしたでござるが、どうやら拙者とは違うSAMURAI魂を心に持っているように見える。しかし、それでも我が一撃を見切るとは見事なり』
俺はなにか言っている似非SAMURAIの言葉を無視し今度は遠隔操作をして、全部の『納刀』を使って、攻撃を仕掛ける。
当然、一本の『納刀』までは気持ち悪い虫によって防がれるが、残りで粉微塵にする。
『ふっ、拙者のノルトラを一回防いだとて、代わりならいくらでもあります』
そういって大量の気持ち悪い虫を生み出した。更にその後、似非SAMURAIは己の刀を構えて大量の気色悪い虫を纏わせて突進してきた。
俺は更にもう一本の『納刀』を盾にして攻撃を防いで、残りの『納刀』を使って払いのける。
しかし、ここで似非SAMURAIは驚きの行動を取ってきた。
銃を使って、俺の懐めがけて銃弾を飛ばしたのだ。
銃弾は問題なく納豆糸で回収したが、俺は怒りによって叫んでしまった。
『仮にもSAMURAI何だから銃を使うなこの頭幕末野郎!』
と、まあ、俺の小さな逆鱗に触れたところで、似非SAMURAIが俺の言葉を聞いて納得のような表情を浮かべる。
『確かに、銃弾は武士道としてどうかしているものでござったな。これは御免。しかし、これは任務なりて一寸も手を抜くわけにはいかぬ』
と、容疑者は意味のわからないことを言って、自らの行いの正当化に走った。
それにしても、こいつどこの居合のSAMURAIにあこがれているかはわからないが、連撃を放ってこないな。まあ、そんなことを気にしなくても納豆は最強だから勝つが。
『仕方あるまい。こうも互いの攻撃をぶつけて防御するだけになるとは、任務以前につまらんな。よし、納豆マン殿。この勝負次の一撃で最大の攻撃を放って終了というのは如何?』
『うるせえ、卑劣極まる攻撃を使うSAMURAIにはこれで良いんだよ』
そう言って、俺は似非SAMURAIの隙をつくように納豆糸で普段よりも大きくした大太刀版『納刀』を使って、回避するのはこんな一撃を放つ。
その攻撃自体は、まるでお茶の子さいさいとでも言わんばかりに避けられるが、あまりにも速すぎる『納刀』の一撃を防ぐのに集中していた似非SAMURAIは俺の作ったもう一つの刃に気づかなかった。
見事に残りの背後から迫る『納刀』が命中する。そして、黒尽くめの似非SAMURAIは倒れた。
厨二病的な名前とは裏腹に意外とあっけないやつが多いな本当に。まあ、それもこれも納豆が最強だからだな。納豆は凄い!




