第六話ややこしい探偵
パリ。エッフェル塔、凱旋門、オペラ座などの名所が存在しているフランスにおいて最も知っている人が多いであろう世界屈指の観光都。
そんな場所に凶悪なノルトラを使っている犯罪組織がいるらしい。
俺はパリに着いて早々買ったバゲットに納豆を乗せたもの物を食べていたら、疑問が湧いたので聞いてみることにした。
「そういえば、犯罪組織を潰すって任務だったが具体的にはここでどんなことをするんだ?」
「簡単だ。俺達はお偉方からの令状を持っているから、罪組織に潜り込んで正々堂々潰すだけだ」
そういうジェームの中指は天高くバベルの塔よりも高くそびえ立っていた。
「貴方達まだ引きずってんの?人も多いここでそんなことをしないでよ。これだから似たような味の乳酸菌飲料ばっかり摂ってる味音痴は」
「あん?やんのか?」
「はぁ、だからこんなところで戦おうとしないでよ」
なんだコイツら。
そう思いつつ、同意を求める目で賢花を見る。
あ、あれは「糸縁が言えたことじゃないでしよ」みたいな視線だ。
「あのー、周りの人とか見るといけないんでもう止めてもらっていいですか?」
「ああん?……ああ、すまなかった」
「ちょっと煽りすぎてしまったかもしれないわね、すまないわ」
そういえば賢花が止めるとストンと争いが止まるよな…………まぁ、一応エリートらしいし、これ業務中だし、ちょっとカッとなっただけで冷静になれるのかね。
そんな下らないことを考えつつ、エッフェル塔を背景にしつつ納豆を頭に乗せ、納豆が小顔に見えるよう余ったデカいバゲットで作った握りパンを添えて写真を撮った。
うん!いい感じに撮れたし後でZにでも投稿しよう。
なんてことをしていると一人の不審者が近食いてきていることに気づいた。
見た目はペスト医師が被っているようなカラスの仮面でパイプタバコのようなものを咥え、スタイルはかなり厚めな服装をしているらしく分からないが、一昔前の探偵像に可愛らしい黒いスカートを足したみたいな格好なので、恐らく男の娘か少女だろう。
ペスト医師の格好っていうことはノルトラはペストなのか?と思いつつ、相手にバレない程度に構えて納豆糸をいつでも出せる状態にする。
そして、しばらくしているとペスト探偵は俺の肩を叩いた。
「ボンジュ〜ル?」
「何なんですか?」
「いや、すまない。私の推理では君達はノルトラに深く関わる組織の構成員か何かと出ていてね。少しお茶をしないか?」
推理という割には占いみたいな言い方をするな、こいつ。
それはそれとして。
「申し訳ありません。現在、残念ながらそのような事をすることは、できない状況下にありますので、後日連絡ください」
俺は厄介事だと感じて、そう言って適当な数字を書いた電話番号もどきを渡して去ろうとするとミラが、
「いや、大丈夫です。このあたりのお店でお茶しましょう」
とミラが言ったため俺達は近くのカフェに移動した。
――
カフェに入って席に座り皆が注文を終えた後、俺は気になったことがある為小声でミラに話しかけた。
「なんで誘いに乗ったんですか?絶対厄介事に巻き込まれますよ」
「…………NLが言い忘れたかもしれないけど、私達の主目的は貴重なノルトラ患者の保護と、ノルトラ患者による犯罪組織などの取り締まりよ。あの子は普通に怪しくて犯罪組織とも関わりがありそうだし、それに貴重なノルトラの気配がするから乗ったのよ」
「了解です。それじゃこの場の交渉は任せました」
まぁ、あいつがヤバイ奴でも納豆の凄さを分からせればいいだけだからな。
俺とミラの話が終わるとやっとかという顔つきでコホン、と言って口を開いた。
「それで、話を聞いてくれているということは本当にノルトラに関する組織の構成員なのかな?」
「えぇ、そういう感じね。で、聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」
「別に構わないよ」
「貴方はこの辺りに活動している犯罪組織の一員?」
「…………違うね、寧ろ私はその犯罪組織バルクを探している側だ」
ペスト探偵は一息つき、出来立てのコーヒーを丁重に手つきで仮面の下にある口に運んで、熱かったのか飛び跳ねるような仕草を見せた後、何事もなかったかのようにアイスコーヒーを注文して話を続ける。
「そうだったら、話は早い。私も君達の任務である犯罪組織バルクの壊滅に手を貸してもいいだろうか?」
「条件を飲んでくれたらいいわよ」
「内容は?」
「まずその前に貴方のノルトラを正直に言って欲しいわ」
「私のノルトラ?この姿を見て何も思わなかったのかい?」
「フェイクのためかと思ったけど、そうじゃ無かったみたいね」
「そうだよ。私のノルトラはペスト菌だ」
「だったら条件はこの件が終わったら私達の施設に来てもらうこと、それでいいかしら?」
「私としてはあいつらを潰せすればいいからね。…………了承しよう」
「分かったわ。それなら話は早いわね。じゃ、早速犯罪組織バルクを探しましょうか」
「待ってくれ、私はこの見てくれをみればわかると思うが探偵だ。犯罪組織バルクの位置ならある程度掴めている。私の占いではオーベルヴィリエを拠点としている可能性が限りなく高い」
「へー、根拠は?」
「占いでそう出たからだ」
「ふーん、……………………えっ?占い?」
占い探偵、かなり奇特な組み合わせだな。
「情けない話だが、私はイギリス人の父の家業をただ継いで探偵になっただけで推理力があんまりないのでね。モノクルにつけている水晶で占うことによって推理力を補っているんだ」
「占いだけで探偵…………イギリスには随分変わった人がいるのね」
そう言ってカフェなのになぜか置いてあったジョッキビールを宴会並みの勢いで一気飲みした。
ここ、カフェインだけじゃなくてアルコールも摂取できるのか。役満じゃん。
「ここからはただの雑談なんだけど、イギリス人の父って言っていたけどダブルなの?」
「まぁそうだね。父はイギリス人、母は日本人だ」
「だから日本語が堪能だったのね。あと名前はなんて言うの?」
「こっちではアルマ・マーティンと名乗っているわ」
「それじゃ、あなたのことは多少知れたからこれからは仲間としてやっていきましょう」
そう言ってミラが手を差し伸べる。
差し伸べられた手をアルマはガッチリと握りしめた。




