第五十九話吹き飛んだもう一方
糸縁が今回の保護対象に接触していた頃。ミラとジェームは吹き飛んだ先でノルトラによって暴走した者たちの対処に追われていた。
(ちっ、あいつらノルトラに乗っ取られてやがるから止まらねえ!しかも、近づいたらすぐに爆発しそうな動作を繰り返すから、下手に攻撃もできねぇ。………………あんな思いをする人間なんてもう二度といちゃいねぇからどうにかして救いたいが、どうしたものか)
ジェームは険しい顔をする。眼の前にいるのは自分がこんなところを配属先として志望したきっかけになった相手と同類だからだ。
「ジェームどうする?あいつらを再起不能にするくらいなら、お茶の子さいさいだけど?」
「いや、あいつらは五体満足で持って帰る。そのためには気づかれないように近づいて俺のノルトラ乳酸菌を使う必要がある」
「でも、あいつ近づいたら菌糸類系のノルトラの特性である爆発しかけてたんだけど、大丈夫そう?それにあなたのノルトラって自分にしか効果なかったような気がするけど?」
「そんなことは既に知っている。能力は最近症状が進んでな。自分以外も掌以上の接触が必要にはなるが無効化できるようになった。ここからが重要だ。アイツラをどうやって無事に元に戻してやるかだ」
「まあ、あなたならそう言うって思っていたけど、どうする近接戦闘は厳禁の近づくな危険状態だけど」
「ミラ、麻酔弾って今あるか?」
「一応、保護対象が暴れた時ようにスナイパー分裂体のライフルに装填済みだけど、それで打って体を機能停止させてから乳酸菌を使うの?」
「ああ、お前ならできるだろう?」
「何言ってるの、私の辞書はカスタムで不可能は抜きにしてあるから大丈夫よ」
そう言ってミラは近くに置いていた分裂体の一体に意識を集中させ、他の分裂体も操作して射程圏内に入るまでスポーツカーで輸送し始める。
「少し待ってなさい。特務機関パワーを使って交通ルールを無視することによって、後三分もあれば到着するわ」
「了解。つまり俺はカップ麺ができるくらいの時間を稼げば良いんだな?」
「そうよ。でも、気をつけたほうがいいかもね。あいつさっきよりもこっちに近づいてくるスピードが格段に上がっている」
そういながら、ミラは近づいてきて爆発をもろに食らわせようとしてくる奴らから距離を取る。
しかし、急に引きすぎては駄目。相手を無駄に触発してしまえば、焦ってすぐにでもと、その場で自爆を始めて辺りが胞子で汚染されて立ち入りできないようになるからだ。
「さて、残りの三分間どうやってあいつを食い止めるかだな」
「カップラーメンでも作っておきましょうか?」
「いやいい、それよりもっと建設的なことを考えようぜ」
「まず、眼の前の患者はもともとの動きは遅めだけど、ノルトラの影響かは分からないが何故か時間が立つのと比例してどんどん速度を増している」
「そうだな。この感じだったら最終的に時速100キロ以上は覚悟しておいたほうが良いかもな」
「そのせいか、現在私達は一定のルートをぐるぐる回って鬼ごっこをしているわけだけど、ここから打開しようと思っても三分後に来る私の分裂体が来ないと手出しはできない。殺せるなら持っている銃でもできるけど、生きて帰らせるんだったら発砲はできるだけ避けたい」
「ああ、しかしこのまま走り続けるのは少々つらい。ミラ、分裂体で落とし穴を作ってハメるぞ。落とし穴を作っているときは俺が引き付ける」
「別に構わないけど、それをすると撃つ位置が限定されすぎて待ち時間が二分増えるけど良い?」
ジェームが、症状がすすんでいるのか苦しんでいる暴走した者たちを見て、返答する。
「よくないな。時間経過で症状が進んで爆発したら目も当てられない。仕方ない、このままチェイスするしかないか。いや、もう一度聞いておく。今回は俺が全責任を負うって言ったら、分裂体はどれくらいでここにつける?」
そのジェームの言葉を聞いたミラは、待っていましたとばかりにニヤリと笑って、自信満々に答える。
「それなら、今すぐにでも!」
そういった後、少々遠くから爆破音鳴り響いて、暴走した者たちはすぐに倒れた。
そこにジェームがノルトラを使って接触する。
触れた瞬間、手に熱が伝わる。
爆発の予兆である。
(前にあえ!)
しかし、熱を感じているということは手が触れているということ、暴走した者たちの中に乳酸菌が侵入する。
ノルトラが聞いた瞬間にその熱は沈静化した。
「ふー、こんなものか。とりあえず、こいつらをガムテームか何かで固定して施設に搬送だな」
「片付いたかしら、それなら納豆ボーイのところへ援護に行かないといけないわね」
「ああ、施設に搬送するのはお前の分裂体に任せていいか?」
「ええ構わないわ」




