第五十八話一人称のクセが強い
俺は驚いた。
それは第五感の上位互換である納豆力で、近づいてくるものがいないか探っていたのに、一切探知出来ず背後に回られたからである。
『ああ、そうだが。もしかして、貴重なノルトラを持っているって奴か?』
『はい、ナフヌは世間一般的に見ると、珍しいノルトラ、俗称としてファラオの呪いを有しています』
『ファラオの呪い?それってツタンカーメンの墓を調査した人間が次々に死んだっていうやつか?』
『その通りです。しかし、実際には呪いではなく古来から伝わる我々一族の保有するウイルスなんです。正式名称はないのでファラオの呪いとしか言いようがありませんが』
『それはなんとも、丁度いいところにって言いたかったんだが、いかんせん仲間と離れてしまったから、守ってやることしか出来ないんだが』
『そうなんですか!それならお願いします。今現在進行系で追手に追われているんです』
『そうか、それならここで追手とやらが来るまで待っておくか』
『大丈夫なんですか?貴方は施設から派遣されているということは、相当な実力の持ち主かと存じますが、追手は複数人で死神狩りを名乗る不審人物も中に紛れているんですよ?』
『大丈夫も大丈夫、ここには納豆がある』
『………………分かった。ナフヌは君の傍へつくことにします』
『分かればよろしい』
それにしても、死神狩りか。最近良く縁があるな。まっ、どう考えても圧倒的に悪縁だから切断するが。
今度はどんな煽りをしてくるか楽しみにしている自分がいるような、いないような。
そんなしょうもないことを考えていると、賢花が俺に話しかけてくる。
「ねえ、さっきからなに喋ってたの?戦闘になってないってことは、あの子は敵じゃないってことだと思うんだけど」
「あっ、もしかして賢花って、NLから完全同期型どんな言語でも翻訳を隠れ蓑にした盗撮&盗聴機を渡されていないのか?」
「何、その圧倒的に未来の凄い技術を使って作られた変なものは」
「そうか、あいつまだ賢花には手を出していないのか。なら、皆聞いてくれ!俺は盗聴等の機能を持った翻訳機が支給されている!それで…………あっ名前聞くの忘れてた」
『聞き忘れていた。便宜上、聞いておきたいんだが、なんて名前なんだ?』
『ナフヌの名前はクヌム・メリタテス。気軽にはあまり呼んでほしくはないですが、もしそういった関わり方をしたいならクフテスと呼んでください』
『了解。だったら俺はクヌムって呼ばせてもらう』
「ここにいるクヌムは俺達が保護する対象で、ノルトラはファラオの呪いらしい」
「それはなんとも、だな。圧倒的人生のジャンル変更を感じる、いつバトル漫画からパンデミック系のSFになったんだ?」
「安心しろ。パンデミック系のSFみたいな状況はもとからだ。後、もう少しでここに追手が来るらしいから戦闘準備をしてくれ」
「……数は5人か。しかし、実力はそこら辺の闇組織の比ではないね。しかし、糸縁がいるこの状況だったら問題なく対処可能だろうね」
アルマがお得意の推理でここは問題ないねと親指を立てて伝えると、ヤッチが申し訳無さそうに提案を持ちかける。
「いやー、ただの納豆さんが強すぎて俺の出番ないな〜。いや、本当にそろそろ仕事しないと、ミラさんから姑のごとく小言が飛んで出来そうだから俺に任せてくれないか?」
「確かに、最近全然仕事していないし、もしかしたら知らぬ間につけられているかも知れない査定がピンチになる可能性があるな。分かった。ここはヤッチに任せる」
「ありがとう。ただの納豆さん。それじゃ俺に構わず、先に行ってくれ」
「いや、同じチームだしもしものときがあったら、ヤッチの両親に顔向けできないからな。一応見ておく」
「まあ、確かに俺が死に急いだら父さんや母さんは悲しむと思うが、もうちょっと俺の実力を信用してださいよ」
そう言ってヤッチは背負ってきたリュックから金属を取り出して酢酸化させて、長槍にする。
顔は言葉の印象から受けるほど弱気ではなく、むしろ、どんな雑魚が来るのかたしみ〜のような感じを醸し出していた。
準備を進めていると、眼の前に明らかにこっちを追っているなと思われる怪しい者たちが現れた。
怪しい者たちは俺達が視界に入った途端発砲して、どちらが上かと見せつけようとしていたが。
おそらく反射で『螺旋菌滅鎖』を広げて障壁を作って全弾を阻んだ。
その後、一切の反撃は許さないと、『螺旋菌滅鎖』を長槍の形に変化させて、怪しい者たちに近づいて凪ぐ。
その攻撃で固まっていた怪しい奴らは全員バランスを崩して、地面に倒れる。
地面に崩れる瞬間全員がノルトラをしようとした。
しかし、ヤッチはそんな行為を許さず、全員の首に鈍器へ変形させた『螺旋菌滅鎖』を気絶する程度に叩きつけた。
「まあ……こんなもんですかね。」
そう言ってヤッチはなんの代償もなさそうな感じで少し、余裕そうに立っていた。
「結局、自称死神狩りは自称でしかなかったか」
俺が倒れていた人間を確認しながら呟いた。
「まあ、これで俺も戦えるってことが分かりましたかね?」
「ああそうだな。納豆には及ばないが、強くなったなヤッチ」
俺達が声を掛け合っていると、賢花とアルマが喋りだした。
「アルマちゃん、ここ凄く戦闘力高いんだけど、私達がいていい場所か推理してくれない?」
「賢花のノルトラなら、私の推理を使わなくてもわかる。あの二人にも並べると思うよ。その点私はどうなんだって話にはなるがね」
「大丈夫だよ。アルマちゃんは今でも十分貢献できてるから」
「それは嬉しいんだが、今後私のノルトラが通用しなくなっていったらと思うと少々ゾットするね」
そう言いながら、少しばかり顔を青くしたアルマに俺は「よし、保護対象も見つけたことだし。ミラさんのところまで行くぞ」と言って、合流するために歩き出した。




