表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/71

第五十六話電車、つまり密室何も起こらない道理は無し

 休息という楽園から追放された俺達は、電車に乗るという単純労働を行っていた。


 前回は義務教育(中学)で習う程度には有名なユーロスターだったが、今回はエジプトに最近出来た特急である。


 俺達のいる車両はミラがなにか、手を回したのかはよくわからないが、俺達以外に誰もいなかった。


 もしかして、この貸し切りの座席を用意するための3日間の休暇だったのだろうか。


 そんなことを考え、名前の割にエジプト産のジャポニカ米に納豆をかけてかっこむ。

 

 納豆を脳に回すと急に休暇の理由がとても気になりだしたので、チャットアプリで問いかけてみた。


『3日間も予約できる日がないって、理由で休養にしたのはこのためですか?』


『そうだけど、なにか問題でもあったかな?納豆ボーイ』


『いや、少し気になっただけなので、ありがとうございました』


 スマホのクリップボードを叩いて、そう残して会話を終了した。


 最近変なやつや事に連続であっていたから、すこし、勘ぐりすぎたか。


 俺は視線を外の風景に戻した。


――


 アレクサンドリア班が解体された後、その後釜として撃墜班が後を継ぐ事になった。


(さて、面倒な姉貴がバカみたいな案を考えポシャって消えた今、権限が移行され俺達撃墜班は結構自由に動けるぜ。どうしたもんかな)


 撃墜班のボスは、先程出発した糸縁達が乗る列車の車窓から外の景色を眺める。


(楽しみだぜ、ノルトラが蔓延するって聞いて用意したが、姉貴がお前の任務にいらんだろ言われて解散させられた、俺の菌糸類特攻隊が火を吹くぜ)


 撃墜班のボスがそんなことを考えていると、仲間からの連絡が届く。


 内容は『お前はアレクサンドラ班みたいに無様にやられてくれるなよ?』というものだった。


(言われなくてもってやつだ、姉貴がヘマしたからな、その子分の立場であった俺が、そう思われるのも仕方がないことだろう。しかし、俺は姉貴の納豆パーティみたいなイカれてるとしか言いようのない作戦は取らない。ボスには悪いが、先に騒動を起こさせてもらおう)


 そう思った、撃墜班のボスはスマホを取り出して、情報を隠匿する系のアプリを開き、指示を打ち込む。


(最近は便利になったもんだ。俺達の同類の可能性を秘めている使い捨てのコマを、いくらでもネットで手に入れることが出来る。俺は特定できないところで、指示を送って多少の金を払うだけ。クックック、さて、納豆マンという一般人は俺達と違って、生粋の悪ではない一般人間爆弾にどう対処するかな)

 

 撃墜班のボスは不敵に笑った。


 そんな笑みを遠くからスコープで覗いていた人間がいる。


『ふっ、こんな内ゲバでいつ死んでも全然おかしくない状態で、よくもまあ。あんな笑みを浮かべられるものだ。ボスはあの胆力を見込んで多くの権限を与えたのか?』


 独り言をブツブツと呟いて、男は引き金を引いた。


『やっぱり、今の幹部は十二人と多すぎるし、権限が分散されすぎている。そんな先進国の政治システム三権分立みたいなのは、闇側の組織である我々にとって少しつまらんよ、ボス』


 男はボスに対して少々郷愁にも似た感情を覚えながら、タバコをふかした。


 スナイパーライフルから射出された弾丸は、カイロに向かっている列車と一切のずれなく飛んでいって、撃墜班のボスの頭に直撃した。

 

『撃墜班が仲間によって撃墜させられる。全くもって皮肉な話だな。さて、残りは八人ってところかな』

 

――

 

 ミラに急遽の休養の理由を聞いた後に、なにか通常ではありえない類の揺れを感知したが、俺達には関係なさそうだったので、無視してカイロに向かう列車での一時を楽しんでいた。


「そういえば、ヤッチ。お前のノルトラって酢酸菌だったよな」


「ああ、そうだな。前に伝えた通り、特定の物質を酢酸化させて『螺旋菌滅鎖(らせんきんめつじょう)』を出す能力だが」


「それなんだが、それってこの先何が起こるかわからない、闇の組織カサカサゾーンでも耐えられるのかと思ってな」

 

「ハッハッハッハ!大丈夫なんだな、これが。実は俺、NL先生に少し特訓を強要されてな。飛行機の墜落はなんと出来ないが、基本的な武力行使だったらなんとかなるくらいにはなってる」

 

「ほーん。少し気になるんだが、それって納豆菌はともかく他の発酵する菌と代償とか、ある感じのやつなのか?」


「聞いて驚け、見て笑え。なんと酢酸菌唯一なんの代償もなく、強力な力を使えるノルトラなのだ!」


「?」


「あっ、ただの納豆さんの常識にはない滅茶苦茶なこと言っちゃったから、バグちゃった!」


「納豆ボーイにも常識はあったのね。意外だわ」


 俺に失礼気味の感想を抱いたミラは、なにかに気がついたのか、意外と気の抜けた顔から真剣な顔に早変わりする。


「ジェーム。どうやら、ここにお客さんが向かってきているらしいわよ」


「そうか、なら俺が出るか?装備の準備なら十分だが」


「敵襲ですか?」


「ああ、そうだ。しっかし、こんな民間人を巻き込みやすいところで仕掛けてくるとは思わなかったな。もしかして、想定以上に俺達は警戒されているのか?」


「ジェーム、今は思考している場合じゃない。そうでしょ?」


「すまない、サンクス」


 二人が会話を終えると、アルマが何かを考えて、独り言をする。

 

「なるほど、ここに来るのは結構な大人数のようだ。ここは密室だから私のペストがよく役に立つとは思うが、逆に密室であるからこそ、敵のノルトラも効きやすい。注意がいる」

 

「そうだね。私は下手に流れ弾をもらわないように隠れているよ」


「分かった」


 あの揺れって多分今向かってきているやつに関係あったよな?警戒しておけば良かったな。


 まあ、後悔したって今は意味ないから、納豆の凄さを見せつけていくか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ