第四十八話墜落とエジプト到着
「だれか、ここに機長とその他従業員を連れてきてくれ!ここは俺がなんとかする!」
俺が叫ぶと、ミラが名乗りを上げて機長室に走っていった。
「ただの納豆さん、流石にこの状況どうするんですか?ノルトラがどうこうできる事態ではないと思うんですけど」
「じゃ聞くけど、ヤッチここで黙って棺桶にぶち込まれるのを待つのか?まあ俺は納豆パワーで無傷だが」
「そんな訳はない。か、確かに個人が生き残る程度ならなんとかなりそうなやつはここに多そうだが、全員なんてどう助けるんだ」
ヤッチの問いかけに答えた人物がいた。ミラである。
「大丈夫よ、こんなこともあろうかと、分裂体が運転している自家用ジェットでこの飛行機をつけておいたから、ここの窓を破って飛び移る作戦よ」
その瞬間、突如飛行機内が震度7はあるんじゃないかというくらいに揺れた。
同時にミラの表情に納豆アイがなければ見逃してしまうくらいの微妙な焦りが現れた。
「……………………今の衝撃は何者かによって爆破された私の自家用ジェットのものよ」
「つまり?」
「敵からの攻撃によって私の救済プランは完全に粉砕されてしまったわ。つまり、私がここからなんとかすることは難しくなったってわけ。と言ってもこの状況をなんとか出来そうなのは私を除いて糸縁くらいしかいないけど」
「マジですか。ただの納豆さん。どうするんです?俺のノルトラはこんなところで使えるものじゃないですし。他の乳酸菌の人は対人向けの能力過ぎて応用効きませんし頼みの綱はもう納豆さんしかありませんが」
「問題ない、納豆は最強だ。ここから入れて助かる保険がある。それをするために俺の周りに全員集まってほしい」
そう言って飛行機の通路に立つと、さっき呼んできてもらったばかりの機長も合わせて瞬時に集まった。
よし、全員揃ったな。
俺は全員を包み込む形で納豆糸の障壁を作り出す。
「これで落ちても一切の傷はなく生還できる。安心してくれ耐久性は検証済みだ」
「うん、私の占いでも一切の問題ない」
『アルマが言うなら安心出来る。それはそれとしてこの飛行機ってもう落ちるしかないって言ってましたけど、いつどこあたりに落ちるんですか?』
ミラが機長に話しかける。
『墜落する時間となりますと後、三十分くらいでこの機体が下に40度ほど傾いて墜落します。幸いなのかは分かりませんが、エジプト上空なのでおそらく………………アレクサンドリア近くの砂漠に墜落すると思われます』
「そう、アレクサンドリアの近くの砂漠ですか…………。最悪、数日待って私の分裂体に運ばせて砂漠は抜けるとしてもその後どうしましょうか。アレクサンドリアからカイロって確か100キロくらいだった気がするから、結構距離あるのよね。もともと予約していたバスもこの感じだと時間に間に合わなそうだし、どうしましょうか」
「ここは普通に次の時間のバスを待ったほうが良いんじゃないですか?」
「いいや、ちょうどこの時間だったらアレクサンドリアからでている電車があるわ。それでなんとかしましょう。あと、従業員の方は私の分裂体が空港まで送るから安心してください」
ミラは最後の方を英語にして皆に伝えた。
「後は待つだけですね。あ、皆さん墜落時の衝撃で骨折するかもしれませんし、危ないので俺に掴まってください」
「ええ、そうなるわね」
「俺達、同じチームなのになんの役にもたってませんね。ジェームさん」
「仕方ねぇよ。俺の乳酸菌は対人にて最強だから、今回みたいな事態に対応できないのはある程度しかたがねぇことなんだ。それがいやなら黙って更にノルトラを活用できるように訓練することだな」
「ははは、流石プロの言うことは違いますね。確かに酢酸菌の『螺旋菌滅鎖』は集団戦には向きますけど、こういう時には何も出来ませんからね」
『本当に大丈夫なんでしょうか。私、心配で心配で』
キャビンアテンダントが不安そうにしていると、賢花が、
『大丈夫です。私もこんな感じに命が危険になったときでも大体なんとかなってますから。なんにも心配することはありません』
と英語で言いつつ、泣き止まない赤子をあやすように背中を擦る。
『申し訳ありません。本来であれば私が落ち着いていないといけないんですが、もう大丈夫です。ありがとうございます』
そんなこんなで各々が時間を潰していると、ついに墜落のときが来た。
バイキングのようにだんだんと角度が下がっていって下に勢いよく落ちていく感覚が電流のように迸る。
ジェットコースターが下るような浮遊感に襲われて、落ちた。
凄まじい衝撃が全体を襲う。
しかし、『ナットマン』で培った衝撃吸収構造により全くもって外傷なしである。
納豆糸の外ではおそらく落下エネルギーと地面が激突した影響で機内がぐちゃぐちゃになっているであろう。
「…………もう大丈夫です。離してもらっていいですよ」




