第四十話突き止めよ!賢花の居場所
さらわれた。
もう二回目になるから、目隠しを付けられていてもこの窮屈さで大体わかってしまう。
前とはぜんぜん違って周囲の音は一向にして聞こえてこない。探った手先の感覚的に持っていたスマホは全部没収されたのがわかった。
全く持ってどこだかわからないという状況に恐怖を軽く覚えつつも、糸縁なら絶対助けに来てくれる、大丈夫。と心に言い聞かせて平静を保つ。
更に心を落ち着けるために状況を整理しましょう。口を動かそうとしてもちっとも動かいないから頑丈な口枷をつけられているし、これをつけているということは誘拐した相手は多分お父さんの財産じゃなくて狙っているのは|私《ノルトラ狂犬病ウイルス》。
どこでさらわれたのかはあんまり記憶にはないけど、多分糸縁を少しでも労うために納豆を買いに行こうと玄関を出たときかな。
はあー、結構早朝に糸縁のためと思って買い出しで、迷惑をかける事になるなんて思いもよらなかったけど。
で、さらわれる途中で聞こえた音的に人によって、ここまで運び込まれているからそこまでの距離は移動していなとは思うんだけど、全く持って見当がつかない。
まあ、ついたところでスマホがないからなんの意味もないんだけど。
そうやって思考を終了させると、今度はノルトラのことについてふつふつと気持ちが湧いてきた。
ノルトラ、私をこんな犬みたいな耳と尻尾を生やし、世界中各地の闇の組織から狙われるようにしてくれた原因。
私を狙ってく連中は私を忍び寄る死神なんて物騒な二つ名で呼ぶけど、最近忍び寄られているのは寧ろ罹った方なのではないかと思っていた。
なにせ、持っているだけで各地から狙われる上に、下手をすれば暴走してしまうかもしれない。実際に世界的にはそこまで数は多くないが、狂犬病ウイルスのノルトラになって体を蝕まれて狂ってしまった人がいる。
症状的には通常の狂犬病と変わらず、怪談か何かだと思ってしまいそうになるが、水を怖がってなにか恐ろしいものを見て狂ってしまうらしい。
スマホでその記事を見て知り、それが流れてくるたびに今度は自分かもしれないと心は震えていた。
実際、最近収まってきていた発作が今になってやってきている。
最近の調査を見る限りだと、ノルトラによって狂ってしまった人が正気に戻った例はない。
狂ってしまったら一生そのまま………………。
考えただけでも恐ろしく背筋が冷える。
そうでなくても、GPSとかつけていたものは全部捨てられているから。私を糸縁が探すときは完全なノーヒント。見つけられなくても不思議じゃない。
仮に見つけてくれたとしても、今のままじゃ暴走してしまう気がする。早くこの発作をどうにかしないと……。
――
港から場所を移していた俺は、なんのヒントもなしから賢花を見つけるために納豆ダウジングを行っていた。
やり方は簡単。糸引いた納豆を二粒持って方角を指したときその方向に行くだけである。
正直な所、納豆ダウジングは精度良好で良いんだが、食品ロスという点で大罪スレスレの行為である為、なんのヒント無しからでも答えにたどり着けるアルマがいてくれたら良いのにと猛烈に思う。しかし、俺の勘ではアルマはここから遠く離れたところにいるので加勢は期待できない。
現在、俺は地獄から来た使者もびっくりな速度でビルの間を納豆糸を使って移動している。
全力は残念ながら出せていないからあまり速度は出るものじゃないが、地上で走るよりも周囲にかける影響が少なく移動できるので仕方がない。
さすがの納豆でも法律には…………勝てないことはないが。今は勝つときではないからな大人しく移動する他ない。
そんなことを考えると俺に向かって大声を発している存在に気づいた。
「おーい!ただの納豆さんー!何やってるんですか!降りてください!」
内容からおおよそ誰が吐いた言葉なのかはわかったが、一応声の方向を向くと、そこにはヤッチがいた。
あまりにも堂々とネットのノリをするヤッチが見ていられなくなって、歩道に降りた。
「何だヤッチ。こっちは賢花がさらわれて行方不明だが」
「まじか、信仁さんがさらわれた!?ただの納豆さんがいながら?」
「ああ、俺の警戒が薄かった早朝を狙われた。それでようがあるなら一刻も早く伝えてくれ。こっちは大事なものがかかっているんだ」
「了解。なら、止めてしまった謝罪としてお前に協力する」
「いいが、そういえばお前のノルトラって何なんだ?」
「”|酢酸菌《Acetobacter》”だ」
「そうか、ならついてこられそうだな。よし、俺に掴まれ!速攻で賢花を見つけに行くぞ!」
「しっかし、これで俺も人生の谷と山の周期爆速勢になってしまうのか。まあ、いい!親友のピンチに駆けつけないやつはいないからな。ああ、行くぞ!」
ヤッチは俺の背中につまり、俺は届く範囲限界まで納豆糸を射出して翔ぶ。




