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第三十五話冬休みのイベントと言えば、クリスマス

 あの後、納豆を堪能し風呂に入って賢花をいつでも守れる位置で就寝した。


「はー、朝だな。最近は肌寒いからホット納豆と言いたいところではあるが、それは刺すかにライン超え超えだからしないだが、したくなってくるな」


 俺が独り言のつもりで呟くと、地獄耳だったのかスマホを弄ってネットを見ている賢花に返される。

 

「そうだねー。そういえば糸縁、今日って何の日か分かるかな?」 


「納豆の日?」


 俺が回答すると賢花が、少しはにかんで、うししみたいな笑い方をしてスマホを見せてきた。

 

「残念、世間一般ではクリスマスイブだよ」


「あー、クリスマスね。俺にはあんまり縁のないイベントだったから忘れてたわ。あれだろ、真夜中にホッカホカに温めたチキンを用意して冷ますやつ」


「なんか、私の知っているクリスマスと違う気がする。まぁ、みんなのクリスマスの過ごし方はともかくとして、今日折角なんだからどこか行かない?」


「折角金をかけて日本に帰ってきたんだから、行くには行くんだが、クリスマスって言ってもどこに行く気だ?」


「うーん、どうしよう?」


「いや、誘ったんだから最適解はなくても、選択肢くらいはあるだろう」 


「糸縁はこれまで全然クリスマスに触れてこなかったからあんまり分からないだろうし、イルミネーションを見るタイプにも見えないしなー。…………取り敢えず、ケーキ買いに行く?」


「ついでにチキンと鮭を買いに行くか」 


「え?なんで鮭?」


「あの農産水産省がネットでクリスマスは鮭を食うべきと言ってるんだから、食うべきなんだろ」


「そういうことね。そうだね、それなら私が鮭シチューでも作ろうかな」


「別に俺が買うし、知っての通りだと思うが俺は壊滅的な料理センスではないし、賢花が料理する必要はないぞ」


「だって糸縁って、料理とかする時小学生がドリンクバーで遊ぶみたいに、合うか合わないかなんて気にしないで納豆いれるじゃん。それで変な暗黒物質(料理)を痩せ我慢かはわからないけど、目は死んでるのにうまいうまいって食べるじゃん。流石にそれはいたたまれないから私が作る」


「別にそういう時はたまたま目が死んでいるだけだから、心配しなくてもいいぞ」 


「まあ、何にせよ糸縁も連日の移動で疲れていると思うから、私も手伝うよ」 


「賢花がそう言うなら断らないが」 

  

 俺たちは身支度を終えて、街に繰り出した。


 街には何やらとある方向に向かっているカップルが多く見られる。


 それと同時に家族でフライドチキンチェーン店の商品を買って帰る家族も意外と見受けられた。チキンに関する飲食店は大体が満員でとてもチキンを買えそうな雰囲気ではない。


 チキン買う気持ちが冷めてしまいそう。冷めるのは本体だけにしたいものだ。


「周りの人達、カップルや家族連ればっかりだね」


 賢花は外気温が低いせいか、少々寒がりながら息を吐いて白い霧を生み、上がる。

 

「クリスマスに一人で外に出る蛮勇の勇者はそうそういないからな」


「そうだね。そういえば、全然チキン買えないね。鮭だけ普通に買えたけど、チキンはホントにぜんぜん」


「まあ、皆ボッチもカップルも皆等しくチキンのかぶりついて、過ごすのがクリスマスだと聞いている。チキンが全然なくても不思議ではない。揚げてあるタイプのチキンは諦めて市販品の鶏買って帰るか?」

 

「本当のことだったら、料理するのは少ないほうが良いけど、理想だけじゃ現実は回らないからね。仕方ない、ケーキを買うついでにスーパー寄ろうか」

 

 俺と賢花はスーパーに向かった。


 スーパーと言っても底まで大きなところではなく、納豆が売り切れになってしまうようなところである。


 そこまで大きくはなく、品揃えも素晴らしいとは言えないものではあるが、チキンは確かにあった。


 ………………冷凍のやつで温めるだけで出来る類のものではあったが。


「糸縁、どうする?一応、これだったらあるけど……もう一軒回るのもいいけど」

 

「そうだよな〜、確かにそう。冷ますだけのチキンだったらもうこれで十分だし、今年のチキンはこれにするか。そういえば、ケーキは見つかったのか?」


 俺がそう言うと、賢花は芳しくない表情をして首を横にふる。


「そうか…………流石納豆を在庫切れにしたスーパーと言ったところか。よし、今から行って間に合うかはわからないが、ケーキ屋に行くか」


「他のスーパーに行ったほうが確実性はあるけど、折角の糸縁と過ごせるクリスマスだから、美味しいケーキのほうが良いよね。そうしよう」

 

 俺達は会計を済ませてケーキを購入するために走った。


 走っている途中、気になるものがあったので少し寄ってみることにした。


 その気になるものは、ケーキが入っているらしき箱がたくさん置いてありサンタコスの人がクリスマスツリーの周りで箱を売っている広場だった。


 賢花が箱の中身が気になったのか、店員に尋ねる。


「あのー、この中身ってなんですかね?」


「これはどんなクリスマス関係の食品が入っているか分からない、クリスマス限定ドキドキボックスとなっているため、中身を言うことはできかねます。ちなみに50%の確率でケーキが入っています」 


「確率は五分五分か。成る程、結構面白い催しだな」


「糸縁はこれ買うの?」


「期待値的には2個以上買ったら大体ケーキが当たるからな。というか、もうこれでいいんじゃないか?」


「確かに、私も面白いと思うけど確率が確率だからなー。ちょっと怖いかな」


「まあ、四個買っておけばケーキも出ると思うし、折角だからな。楽しいくて思い出に残るクリスマスにしたいだろ?」


「それはそうかも知れないけど、そんな量で大丈夫?食べきれるの?」


「大丈夫だ、問題ない。店員さん、一番いいのを四個頼む」


「どれも見た目同じなので適当に選んでおきますね〜、お会計は4000円になります」


 代金を支払い、店員が袋に箱を詰めている様子をながめていると、賢花が、「えっ!おーい、糸縁!」と言ってきて視線を空の方に誘導した。


 空を見ると、ノルトラを使わず常識の範囲内で移動していたので辺りが暗くなっていたのに気づく。


 そして、空にそびえ立つような様相をしてライトアップされているクリスマスツリーが目に入った。


 あっ、綺麗。


 と思った俺の情緒を破壊するかの如く、次の瞬間には踊り狂う調理済み七面鳥が浮かび上がった。さらに謎にハイテンションなクラシックが2倍速で流れ出した。


 東の方面にある遊園地でもこんな演出しねえよ。


「えっ?」


 さすがの演出に賢花も困惑のあまり、出してしまっている。


 バイトか何かで駆り出されていて、何も知らされていないだろう女性たちも困惑していた。


 しかし、社員?のような落ち着きを持っていた店員は玉音放送の如く告げた。

 

「皆さん、幸せの七面鳥が現れました!今から半額セールですよ!」


 よし、帰るか。常人がいれる場所じゃねぇ。


 周りのカップルは酔っているのか、日和っているのかは、わからないが、空気に順応している。


 しかし、俺はそんな空気に心が離れており、物理的に離れたい衝動が体の中に溢れてどうしようもなかったので、賢花に話しかけた。


「…………賢花」


「多分、私と糸縁の思ってることは同じだと思うから、言いたいことはわかってるよ……」


「なら、もう言葉は必要ないな」


 俺達は箱を持って、その空間から全力前進で帰宅した。


 帰宅した俺達は若干の恐怖感を抱えつつ、クリスマス限定ドキドキボックスを開封しようとしていた。


 確率は二分の一。確率の邪神が笑わなければ、四個買っているため一個は絶対に出るはず。


 そんなことを思いつつ、箱を開ける。


 中から出てきたのはケーキではなく、そこそこ捜索して妥協して買うことになった元凶、七面鳥だった。


 なるほど、ハズレの場合は牛乳かクッキーでも入っているかと思っていたが、あの集まりはただのケーキ屋のイベントではないようだ。

 

 賢花が本心なのか、慰めなのかはわからないくらいのトーンで話しかけてきた。

 

「良かったね、こんな良さそうな七面鳥スーパーにあったら、速攻で売り切れてたよ」

 

 声を聞きつつ開封すること、2個、3個。


 両方七面鳥だった。


 はあああぁあぁぁぁぁぁあっっっっあぁあぁあ。二分の一とは。


 仕方ない、最後の一つに全力投球だ。


 俺は意を決して箱を開け、中身は。


 七面鳥だった。


「どうしてだよ!」


 オール七面鳥、酉年でもないのに鳥ばっか。ナニコレ、腹いせに今からオリーブオイルでカラッと揚げてやろうか。


 俺が台所に行こうとしていると、あまりの惨状に退避していた賢花とバッタリ会った。


「糸縁…………どうだった?」


「ふ、ケーキ?ナニソレオイシイノ」


「美味しいよ!っていうことはケーキ出なかったんだね」 


「仕方ない。こうなったら聖夜を染め上げてやるか」


 その後、俺は七面鳥をペーストにして納豆も混ぜつつ、庭でクリスマスケーキを作った。 


 俺のデータにはない異臭で騒ぎが起き、大変怒られた。

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