第三十三話フォーエバー北海道
今までにあったことをありのまま話す。
VR楽しんでいたら、賢花の方から物音がしたので、お化け用に本当に用意していた塩を反射で投げてしまった。しかも、何故か男性が賢花を抱きかかえて、病院まで歩きで搬送するとかいう鋼鉄の足を見せつけようとした時に、俺が例の質問をしたら嘘ぽい回答が来てちょっと疑ったら、賢花をかえして立ち去りやがった!
お前は鋼鉄の足を持っているんじゃなかったのか。逃げるな!日和野郎!お前の活躍を待っているオーディエンスがいるんだぞ、と思った。
救急車を呼ぼうとしたが、忙しかったのか2時間待ちだった。
仕方がないので、俺が鋼鉄の足を見せることになって、現在は病院である。
賢花を看病していると検査の結果を言うためか医者がやってきた。
「検査の結果、ただ眠っているだけということが分かりました」
「本当ですか!でもなんで寝たんだ?俺はそこまで弾丸旅行ではないと思っていたが、もしかしたらそれは納豆の恩恵を受けている俺だけで、賢花はつかれていたのか……。それはすまないことをしてしまったな」
「その件については大丈夫だと思います。賢花さんの太ももの部分にエピペンを打ったような跡が残っていました。最近はノルトラだ何だと言って物騒ですからね。その影響でできたエピペンのような簡単に注射できる麻酔を撃たれたんでしょうね」
「マジですか」
「賢花さんが倒れたのはどこの辺りですか?一応こちらの方で通報しておきます」
「倒れた場所は博物館の方の網走監獄です。通報緊急搬送抜き消防車抜き丁重最長慎重好調シングルベンティキャラメルアーモンドヘーゼルナッツモカホワイトモカツーパーセントチョコチップエキストラホイップ キャラメルソースチョコソースジェリーバニラクリームフラペチーノストレートで通報お願いします」
「えっ?後半の方なんて言いました?まぁ取り敢えず網走監獄辺りに出たと通報はしておきますが。あと、後遺症の心配等はないので安心して、目覚めるまで待ってあげてください」
「分かりました有難うございます」
医者は忙しそうに一礼をして出ていった。
さて、どうしようか。まあ、俺の冴えた納豆ブレインが弾き出した結果とほぼ一致していた。ということは、まだ、賢花を狙っている闇の組織の連中がいるってことだ。
どう対策したものか、接敵したら納豆の最強パワーで何となるんだが、相手は潜伏してきているからな。一般人のあいだに紛れ込まれてしまったら流石に俺に向かってくる攻撃以外は完璧には感知できないからな。
普段はそれを補完するために納豆糸を張り巡らせているが、流石にこんなところでやるのはな。うーん、賢花に俺が細工した鈴で持ってもらって強い衝撃を受けた時だけなるようにするか?
そんなこんな考えていると、知らぬ間に夜へ日が変わっていて明けていた。
朝日に照らされて少し眩しかったのか、賢花のまぶたが動いた。
「あれ、まるで病院のような天井…………」
俺は起きた賢花に近づいてゆっくりとした口調で事情を話そうとする。
「落ち着いて聞いてきください。賢花は長い間、麻酔によって眠らされていました」
「えっ!どれくらいの時間眠ちゃってたの!?」
「落ち着いて、落ち着いて。賢花が寝ていた期間ですが、まる一日ほどです」
「じゃあ昨日泊まる予定だったホテルは?」
「落ち着いて、落ち着いて!…………必要がなくなったから、自己都合でキャンセルした」
「そんなに言わなくても落ち着いているよ。でも、そうなんだ……少し残念だね、せっかく予約していたところなのに。こんな事になってキャンセル料だけ取られて何も体験できないなんて」
「まあ、そうだな。キャンセル料は事情を説明したら、哀れみか何かでなしにはなったが、体験できなかったのは事実だからな。で、どうする?この後の行き先」
「確かに北海道で全然いいことなかったからね。いやまあ、楽しいこともあったけど……でもこのままここにいても、私を狙っている人のせいで満足に観光できないかもしれないし、あんまりいいことなさそうだね。ここは一旦帰ろうか、私達の故郷に」
「そうだな。帰るか」
俺は今夜旅立ちフライトを手配して医者を呼んだ。
賢花はその後再び、いろいろな検査を受けて問題ないと判断されたので、無事病院から出れた。
そして、俺達は空港に移動して、予約した便が着くまで、椅子に座って待っていた。
「そういえば糸縁、ちょっと気になることがあるんだけど、いい?」
「別に賢花に言ってそうまずいことはないから良いが」
「糸縁の両親の顔ってあんまり見たことないんだけどさ、もしかして海外で働いている人なの?」
「違うな。母親は、俺を生んだ頃に離婚して今頃は再婚していると思われて、父親は俺が物心ついて間もない頃に交通事故で亡くなった」
「え!?ちょっと、不謹慎で糸縁の両親の話より気になるんだけど、だったら今までどうやって暮らしてきたの!?」
「ああ、それについては父が株か何かをやっていたのか、何故か通帳の中にぎりぎり暮らせるだけの金があったからな。学費に関しては死ぬ気で頑張って得た奨学金でなんとかした」
そういえば、俺にも降って湧いてくる収入あったわ。これはタロッサのこと何も言えないな。
「謎の不労所得があったのは良かったけど、よくそれで大丈夫だったね。というか私のお父さんが言っていた糸縁の両親には許可を取ったってなんだったんだろう」
「それについては、俺もあんまり興味ないからわからないが、多分母のところにでも行ったんじゃないか?」
「そうなんだ、それだったら、再婚した先で生まれた子どもが気になって訪ねてくるかもしれないね」
と、賢花は冗談ぽく言った。
「まああり得ないだろう。そもそも、母に連絡が行ったんじゃないかという予想だけだからな。本当に来るなんてそんな奇特なやつはそうそういないだろう。あっ、そんなこんな言っていたら便が来たぞ」
俺達は椅子から立ち上がって、手荷物検査を突破して飛行機に搭乗した。
座ってから少し経って、いつもの案内が終了すると飛行機が離陸する。
窓から見える遠ざかっていく北海道の景色を眺めながら、さらば、北海道。さよならフォーエバー。と思った。




