第二十九話北海道といえば雪、なので儀式スタート
「仕方ないな。俺は納豆を嫌いではないが好きにはなれない性分を抱えている。これは実力行使でなんとかするしかなさそうだね」
半司参籠はすでに持っていたライフルを少しの間で片付けると、拳銃を懐から取り出す。
そして、慣れた手つきで玉を補充してこちらに向けてきた。
この国の銃刀法はどうなってんだよと言いたくなる銃の所持率だな。
俺は『真芽毘汐士・武人』の状態のまま、『納刀』で拳銃をバラバラに斬る。
「今の俺はどうあがいたって、今のお前程度じゃ勝てない」
「さて、それは本当にそうなんでしょうか」
半司参籠が懐から、またなにか取り出す。
「これは私一人だけじゃなく、複数人のノルトラで作り上げた代物だったりするんですが、これには勝てますかねぇ?」
そう言って半司参籠が取り出したハンカチのような布切れを、空中に向かって放り投げた。
俺は少々心配になったので、賢花に予備のガスマスクをつける。
放り投げてそこそこの高度を稼いだところで、起爆。
起爆して、おそらくこちらに不利へ導くと思われる物質が飛び出したが、俺はそんなことなど気にせず、半司参籠の服を斬った。
丸裸にした半司参籠の体を強度だけは確保している薄い納豆糸で包む。
「さて、お前は納豆の事を俺の前で納豆を嫌いとまでは言わなかったが、好きにはなれない性分をしているって言ったよな?安心しろその性分今から直してやる。あと賢花起きろ、死ぬぞ」
かまくらを作り、賢花を起こした。
「うぅぅ、あっ私眠らされてたんだ、そんなことよりも大丈夫糸縁!?」
「大丈夫だ。そんなことより、あっちに作ったかまくらに避難しといてくれないか?俺はあいつの戦意喪失させる最終段階だから」
「分かった」
賢花がかまくらに避難した瞬間、半司参籠の今まで空気を読んでいたとでも言いたげな口が開いた。
「私をどうするつもりだ。というかなぜ、あのハンカチ爆弾が効いていない!?」
俺は納豆糸でスコップを作り、爆速で半司参籠がちょうど頭を露出する形になる穴を掘る。
それとついでに木と木を擦り合わせて摩擦熱で火を起こし、そこら辺に倒れていた枝を焚べて、焚き火を作る。
「おい、無視するのか!答えろ、なんでお前は、専用のワクチンを打っていないのにアレを受けて平気なんだ!」
作った焚き火の上に枝で支えを作って、現地調達した後、厚着で隠し持っていた少量の米を取り出す。
そして、飯盒を取り出して雪を溶かした水と一緒に入れる。
最後に掘った穴を雪でコーティングしてから、半司参籠を中に入れた。
「どうだ。俺式北海道の自然の澄んだ空気を感じられる全く新しくて、暖かくないどころか、ひんやりしすぎている砂風呂の対義語、雪風呂は。俺はこれを全国チェーン展開しようと企んでいるんだが(まあ、嘘だが)」
「さっさとここから出せ、こんな拷問じみたもの誰が入りに来るんだ!」
そりゃ、(もともと拷問用だから)そうよ。
「そうか、快適か。なら好きなだけいて良いんだぞ。せっかくだし、このクソ寒い中半裸みたいな状態で人間はどれだけ耐えられるのか、実験するか」
「無駄だ。こんなことをしても私は何にもならない。せいぜい時間を無駄にすることだ」
「さて、準備もできたことだし、ミュージックスタート!」
俺はスマホから俺作曲の納豆の唄を爆音で流す。
リズム感は流石に俺でも分からないので、グチャのゴチャゴチャみたいなリズムとなってしまった納豆の唄で半司参籠に、人生で一度体験できないような貴重な空間を提供する。
「はい、はい、はいはいはい!!!あッ!納豆↓納豆↓納豆↓納豆↑納豆↑納豆↑納豆→納豆←納豆くんA納豆くんB!!!」
と、納豆の唄の独特の変なリズムとともに半司参籠のメンタルをギリギリまで削っていく。
作った本人がこう思うのも何だと思うが、何だこのコマンド入力みたいな歌詞。……深夜テンションで作ったせいか、やっぱり深夜テンションだけは用法用量をきちんと守って使わないとな。
納豆の唄に圧倒されて半司参籠が戸惑っている隙に1回溶かしてキンキンに冷えてやがる氷水のようなものを雪風呂に追加する。
ついでに納豆の唄のリズムに合わせて手を叩く。
「クソッ!寒すぎるし何だあの聞くもの全員の魂を刈り取ってきそうな壊滅的なリズムは!」
「寒いか、そりゃそうだな。だってここは日本でトップクラスに寒いところ北海道の更に寒い時期の冬だからな。そういえば、ここに良いものがあるんだ」
俺は準備してから30分も経っていないのでおそらくまだ炊けてはない米を木を掘って作った茶碗に入れる。
炊けてはいないが、温まってはいるので、外気との温度差の影響かホッカホッカでとても美味しそうである。
「本当は納豆の中にある栄養を損なわせるから、冒涜するに近しい行為だから、基本はやらないんだが。今回は特別に飯の上に納豆を乗っけたものをお前にやる。ほら、ありがたくいただきますと全ての納豆に感謝して食えよ」
そういって、納豆を乗せた茶碗を半司参籠に押し付けると、何故か跳ね除けた。
「うん?食えよ?美味しい納豆だぞ?」
納豆の唄がラスサビに入ってテンポがゆっくり目になってとてもエモく、とても最終回で流れてそうな感じになる。
「はいー、はいー、はいはいはいー!!!あッ!納豆↓ー納豆↓ー納豆↓ー納豆↑ー納豆↑ー納豆↑ー納豆→ー納豆←ー納豆くんAー納豆くんBー!!!m9(^o^)」
「おら、早く食えよ。飯は温かくなかったら、カッチカッチになってあんまり美味しくなくなるだろうが。バヤクタベディ!」
あまりに長く半司参籠がためらっていたのでそのまま口に納豆を突っ込んだ。
口に納豆を突っ込むと寒かったせいか、気絶してしまった。
「納豆は凄い」
その後、誰かがこいつの裸を見てトラウマを獲得するのを防ぐため、服を着させてあげる。そして、こいつらの持ってたら違法シリーズウェポンを横に添えて警察に通報した。
「賢花終わったぞー!出てきていいぞ」
そう言うと、かまくらからのそのそとなんだか名残惜しそうに賢花が出てきた。
「うぅぅぅぅ……意外とかまくらの中あったかくて快適だったのに……。それにしてもなに?その前の『ナットマン』だっけ?を豪華にして和風にしたやつは…………そんなことしたら後で腹痛地獄になるんじゃない?あと、私が寝てる間につけたと思うこのガスマスク何?」
「ふっ、ぬかったな。後じゃなくてもうすでにに若干結構痛い。まあ、終わったしさっさとホテルチェックインしに行くか」
「どっちなのかは定かじゃないけど、変な強がりをしていることだけは分かったよ。それじゃ、気を取り直してホテルに向かおうか」
俺達は電車に向かって歩き出した。
そうだ。もちろん、俺達の痕跡や儀式の跡は消してだ。あっ!大量の熊の亡骸、放置してたかもしれない。それは南無と言う事にしておこう。




