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第二十五話不穏な函館

 喉を詰まらせてから数時間後。


 俺達を乗せた飛行機は墜落することなく、無事、函館空港に着いていた。


「さて、これからどうするかな〜」


「プランとかはないの?」  


「今回の旅行は、時間と金に物を言わせた基本ノープランぶらり旅だからな。移動手段と宿以外は行きたいところに行く、そんな感じだ」


「それじゃ、折角函館来たんだし、活いか釣掘でイカ食べに行く?」


「そうだな……折角だからな。食べるか!イカ!」


 と言うことで、俺達は贅沢にタクシーを使って移動した。


「賢花はここに来たことがあったのか?」


「うん。結構家族で北海道に行っていたからその時に、知ったんだけど、ここ凄いんだよ。イカが釣れるの」


「イカが釣れるのか、それはどこで出来るんだ?」


 そう言うと、賢花が多くの人が群がるようにいるでかい生簀のようなものに目配せをする。


 ああ、あれか釣りって言うから結構深い水槽とかと思ったが、アレなら釣れないことはなさそうだな。


 現在、12時。イカ釣りの開催している時間はあと一時間しかなかったらしく、イカがかなり残り少なくなっており、結構ギリギリのところで滑り込んだらしい。

 

 料金をし払って、店員の人から、「竿のこの糸の先につている針を下に沈めて、イカに引っ掛けて釣るんです」と釣り方を軽く教えられたあと、イカ釣りが始まる。

 

 俺達に渡された竿は一本。


「行くよ!」


 一番選手、賢花。


 賢花が勢いよく針をイカの近くに沈めて、イカにしっかり刺さるように70度くらい斜め横に引っ張る。


 そうすると、いとも簡単にイカに引っかかって、そのままの勢いで上へあげられた。


「よし!前よりもうまくできた」


「流石経験者は迷いが一切ないな。俺もそれにあやかりたいものだ」


 ということで、二番選手にして大取りの俺の出番である。

 

 釣りはそこまでしたことがないが、糸の扱いなら一家言あるからな、ここは華麗に決めよう。


 俺は素早く針を底に沈め、一気にイカに向かってさせると、今まであまり激しい動きはしていなかったイカ達が急に動き出し、瞬時に俺の針から遠ざかった。


 それだけに飽き足らず、絶対に捕まらないぞと高速で生け簀の中で泳ぎだした。

 

 は?なんで今まであんまり動いていなかったいかが動いているんだよ!!!


 頭に血が鯉の滝登りの如く上り、俺の顔を険しいものに変えていく。


 まあ、冷静になろう。相手は所詮、動物界(どうぶつかい)軟体動物門(なんたいどうぶつもん)頭足網(とうそくもう)鞘形亜綱(しょうけいあもん)十腕形上目じゅうわんけいじょうもくのイカで無脊椎動物。つまり、持たざるものだ。


 ここで持てるものである俺が本気を出し、いじめるのは少しアンフェアだ。ここはスポーツマンシップで。


 スポーツマンシップで。


 ………………スポーツマンシップで……………………。

 

 そんなことできるか!こっちは少ないかもしれないが、金払ってんだぞ。スポーツマンシップなんて乗っ取ってやる!


 俺は一般人であれば誰にも認識できないであろうレベルの速さで、竿の糸と納豆糸を入れ替えて、思いのままに高速で動かす。


 そして、カツオの一本釣りのごとく釣り上げた。


「取ったどー!」

 

 俺はずるして釣り上げたイカを掲げて、ある種お約束の言葉を発した。

 

「糸縁初めてにしては凄いね。すぐ取れちゃったよ!」


 あとになって思ったが、この時、納豆糸を直接イカに突き刺せば楽に釣れた。しかし、そうしなかったのは、まだ俺がスポーツマンシップを完全に乗っ取れていなかったということだろう。


――


 糸縁がムキになって本気でズルをしてイカ釣りをしているところを見つつ、イカ焼きを頬張って食べていた者がいた。


 (なるほど、あの動きかなり早い。情報通りならあの男が納豆男か、それにしてもおっかない顔だな、今にも人を殺しそうだ。本当に堅気(カタギ)か?あの気迫に、社会規範を守る気持ちがゆるキャラよりゆるそうな気配、どう見てもこっち側の人間にしか見えないが………………?)


 考えながら食べていると、いつの間にか食べ終えていたのかおかわりを注文する。


 (まあいい、どうせここまで尾行してきたんだ。必ず、忍び寄る死神はゲットする。いくら納豆男といえど、俺の変化球形ノルトラAnisakisアニ simplexサキス、にどこまでいっても腐らせる程度の菌が対応できるとは到底思えん)


 そう思った瞬間、どこからともなく謎の悪寒が賢花を狙っている者に襲いかかる。


 (………………それに仮に俺が負けて、忍び寄る死神をゲットできなくても、今回は大量の質のいい人材が投入されるだけではなく、ボスも出るからな。個人が負けようとも、我々が負けることなどありえない)


「イカ焼きお持ちしましたー」


「どうも」

 

 賢花を狙っているが持ってこられたイカ焼きを頬張る。


 (さて、いつ仕掛けるかな。流石に日が昇っているうちに仕掛けるのは愚策がすぎる。あいつらが疲れた頃を狙うか。いや、俺はなんで一人で行動することばかり考えていたんだ?普段の任務なら報酬関係で揉めるが、今回は成功すればそんな事を考えなくていいくらいの金が手に入る。ここは一旦他の仲間に報告しよう)


 賢花を狙っている者はスマホを取り出し、電話をかけた。

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