第十三話事故ったNOW
ミラは酒気帯びと取っ組み合いに夢中で気づいていなかったが、全速力の車が銀行に突撃して、さすがに壊れたのか煙を上げており、エアバッグも露出していた。
「これ…………は、流石にまずいわね。酔いも覚めたわ」
「もう遅い」
「取り敢えず、降りて謝罪に行きましょうか」
「ああ、死んでも行きたくないが、お前の監督責任を俺に投げたやつのせいで行かないといけなくなったから、行くか……………………」
二人は冷静に降りて壊した壁から謝罪を言うために入ると、中には恐らく犯罪組織バルクの構成員であろう連中が銃を持って銀行強盗をしていた。
「ミラ」
「分かっている、やるわよ」
ミラは即座に銃を取り出す。
『手を挙げなさい!SDМBVFよ!』
『へっ、俺の腕の中にいる女は見えてねぇのか?見えてるんだったらさっさとその銃を捨てて、両手上げてさっさと帰りな』
(組織のトレンドマークのダサいサングラスをしているし、おそらく犯罪組織バルクの回し者よね。それにしても典型的な銀行強盗ね。…………でも、無駄にすばしっこい脳のあるゴキブリのような犯罪組織バルクがこんな馬鹿正直なことをする?もしかして、こいつは他の活動を誤魔化すためのダミー?まあそうだとしても、現状は変わらないし、取り敢えず黒幕はジェームに丸投げしましょうか)
ミラはジェームのそばに寄って耳打ちをする。
「ジェームここは私が対処して事故のことは有耶無耶にするわ、あなたは一人でさっきまで行こうとしていた場所に行って、何かわかったら1時間後くらいに電話してくれない?」
「いや、無茶振るな。まあ………………俺の勘が正しければできるが」
「じゃ、ということでよろしく」
そういうとジェームが次の場所に向かおうとすると、
『さっきから何かコソコソやっていたが、何かするつもりか!?一旦止まれ!』
と言いながら構成員の一人が人質をしっかり片腕でホールドしながらも銃をジェームに向ける。また、もう一つの腕を人質に向ける。
その瞬間、ジェームは出来るだけ堂々と目立つように両手を上げて抵抗する意思はないと見せる。
『オーケー、心配しなくても俺は今すぐここから出るからよ!』
『分かった。なら今からその体勢でノルトラを使わず後ろ歩きで下がれ、そうしたら人質には何もしねぇよ』
そう聞いた後に、ジェームはそそくさと去っていた。
(ふっ、やっぱりジェームは役に立つわ。何も言ってないのに勝手に行動して、構成員共の視線を誘導するとは。まぁでも、手間が省けた。感謝しておきましょう。)
『さて、人質を解放してもらいましょう』
『お前もさっきのやつみたいに出ていってくれればな』
『分かったわ』
ミラは構成員達のもとに歩み始める。
『何やってやっているんだこいつ!こっちに向かってきてやがる!いいのか撃つぞ!』
それでも、ミラの歩みは止まらない。
『撃てるものなら撃ってみなさい』
強気な姿勢で、おおよそ人質をとっている銀行強盗に対する態度ではない。
しかし、そんな馬鹿げている態度でも人質はミラの目から伝わってくる底なしの自信で黙っている。
『撃つぞ!』
その言葉と共に構成員の全てが銃を構える。
そして、一斉に銃のトリガーに指を近づけようとする、が。
飛んできた無数のスナイパーライフルの弾丸が、構成員達の銃を全て弾き飛ばす。
『酵母菌は強い。だから私は失敗しない』
そう言ってミラは吹き飛ばされた銃を取ろうとしている構成員達のもとに近づいて、一人一人気絶させた。
(いやー、一騎当千(物理)みたいなことができてしまうからノルトラ酵母菌は本当に強い。さて、次は銀行にぶつけちゃった件を話さないとね。)
遠くに配置しておいた酵母菌の能力《症状》で増やした分身体を回収するために、意識を分身体に向けていると人質の銀行員がよってきた。
『ありがとうございます!あなたがきていなかったら危うく犯罪組織にお金を渡してしまうところでした』
『いや、いや、こっちも早くここに突入して構成員を鎮圧するために車を突撃して、ちょっと銀行の壁を破壊してしまいたから。今度上に請求してください』
『大丈夫です、まだ駆けつけてもらうためにしかなくついてしまった傷を見ていませんからはっきりしたことは言えませんが、銀行強盗されたときの損失と比べ物にならないくらいには低いでしょうし、それよりも、ありがとうございます』
(これ以上会話を続けると面倒なことになりそうね。まくしたててササッと終わらせましょう。)
結論を出したミラは早口で、
『こっちはノルトラを使用した犯罪組織を潰していいって令状出されて、それをしろって言われているだけの人間ですから…………それはそうと、もし修理代が問題ある金額だったら、しつこい様ですがやってしまったことは、やってしまったことですから、壁の修理代は上に請求してください。後、この後のことは警察を呼んでおきましたので安心してください。私は別の任務に追われているのでこれで』
と言ってミラはそそくさと退散していった。