第十一話秘める病状
五件目、さすがにいろいろなパブを回りすぎて日が暮れてきた頃に到着。
外見としては特段変わったことはなく、メニューとしても特段面白いものもなく納豆すらなかったので布教しつつ、店内に何かないかと探ってはみたが、何もなかった。
かなり日が暮れて四軒目のこともあり、 納豆ひと粒すら見逃さないような念入りの調査によって、時間をドカ食いしてしまったのでかなり遅い時間になり、俺達は泊まるホテルを探すことにした。
が、案の定と言うかなんというか、時間が時間な為に時間な全然ホテルは見つからない。
ということで、現在俺達は希望か最終手段か却下したい手段しかなくなった。
因みに今は納豆に不可能は無いということで、希望ことにした。
「糸縁、さっき断られたホテルで何件目だっけ?」
「十五軒目だ」
「今日回ったパブの2倍の数だね。なんでこんなに断られているんだろう」
「四軒目で盗撮犯が見つかったからなくまなく探す必要があったんだ。仕方のないことだったんだ」
「それは分かるんだけど…………なんで時間のかかる料理注文してその上に納豆を大量に乗っけて、異臭騒ぎ起こしちゃって無駄に時間をパクパクしちゃったのは誰のせいだろうな〜?」
「そうだね。私も犯罪組織バルクに感づかれないように捜査を続けたいので、あのように目立つことは避けたいね」
「すまないとは思っているが、後悔はしていない。あの時ああしていなければ俺は俺でなくなるような気がした」
「まぁ、もう過去のことだから、言わないけど、今度から無駄なことをしないって約束してね?」
「分かった。あっ、最後の一軒が見えてきたぞ。もう時間がない走るぞ!」
そう言って俺は誤魔化すために指をさしてホテルの方に走って行った。
エントランス。そこそこ値の張りそうなホテルのような外見をしている。
俺と賢花はフランス語が使えない為、怪しくて断られそうなアルマに任せて後ろの方で見守っている。
少し待っていると、アルマが受付を終えて何とも言えなさそうな雰囲気の中こちらによってきた。
「どうだった?」
「一応部屋は取れたよ。話したいことがあるから部屋についてからにしようか」
俺と賢花は了承の意の返事をした後、アルマの後をついて行って部屋に向かった。
「まあ、見ての通りシングルベットの一人用の部屋だが」
「つまり…………誰が床で寝るか考えないといけなのか」
「ああ、そうだね。取り敢えずこの状態に気づいていない君は強制床に寝てもらうよ」
「まあ、こんな事になったのは俺のせいだからな。それでも構わない」
「糸縁が反省してる……?明日は空から何が降ってくるか警戒しないといけないわね」
「なんだ?納豆でも降らそうか?」
「止めてくれ。近隣迷惑で三権の一つに世話になりたくない」
「さて、冗談はこれまでにして、問題はどっちがベットで寝るかってことだと思うけど、私が床で寝るわ。糸縁を見張ってないといけないからね」
「俺は監視が必要なタイプの猛獣じゃないぞ」
「はいはい、納豆狂いタイプの珍獣だったねー」
「…………今日のことそんなに根に持ってるのか?そうなら本当にすまん」
「ふふ、ははは、冗談だよ〜」
「そういえば、糸縁と賢花はどんな関係で今ここにいるんだい?」
「簡潔に言えば、俺は護衛でその対象が賢花」
「へー、確かに君は行動面には目を背けたら、圧倒的な鎮圧力を持っていて護衛としては一流と言えるからね。そこでか」
「納豆は最高で無敵の発酵食品だから当然だ」
俺がそういうと、アルマが何を言っているかわからない声量でモゴモゴ言い出す。
「…………会話できる様でできない人種じゃないか」
「アルマ、納豆が絡まければ大体正常ではあるから安心して」
「賢花はケモミミがあるから、アルマが何を言っているのか分かるのか?あまり聞き取れなかったんだ教えてくれ」
「多分聞かなくても全然いいことだらか別にいいよー」
「なら別にいいか。あっ、そういえば俺はさっさと納豆食って寝るからよろしく。」
俺はさっさと常備している納豆を食べて、布団に入って目を閉じた。
――
「本当に寝た。護衛対象より先に寝るとは、前の発言を撤回したい気分だ」
「多分この部屋になにか仕込んでいると思うから、まあ、何か起こったら起きるんじゃない?」
「確かに抜けているようでやることはしっかりやるやつではあるな、では私は風呂に入ってくる、…………そういえば糸縁は風呂に入っていないな」
「大丈夫、糸縁の体臭はどんなことがあろうと納豆の匂いしかしないから」
「そうなのか………………では、気を取り直して風呂に入ってくるとしよう」
といい、アルマは着替えをもってバスルームに直行した。
私は何やら幸せそうな夢を見ているであろう糸縁を見た後にベランダに出て遠くに見えるエッフェル塔を見ながら物思いにふける。
来ちゃったな。こんなところまで、流れで。
私は自分自身のノルトラのせいでマフィアや犯罪組織に狙われている。
元凶となってしまったノルトラの正体。
それは狂犬病ウイルス。
能力は犬耳が生えたり、噛み付いた相手を絶対に死に至らしめ即死を使った場合一時的に使った感染者を暴走状態にするというものらしい。だから、忍び寄る死神と呼ばれて、一部の闇の組織で恐れられたりカモ扱いされる。
父さんが連れてきた研究員によれば|狂犬病ウイルス《Rabies virus》にかかっている人間は世界でも少なくて暗殺向で運用法次第では一人でミサイルにも勝る有用性がある、らしい。
そして、私がノルトラの研究のバイトとなった糸縁についてきた理由はここにその闇の組織なるものがあるからだ。
おそらくここで終わるはず、私と闇の組織との因縁が。
1回攫われた事があるから分かる、こういうときにあいつらは誘拐しようとしてくる。