大濠公園恋愛白書
「大濠公園の花火大会に行こう!」
急に教室で
男友達の颯太が声をかけてきた。
颯太は私に恋愛感情はなく
私のことをただの女友達と
思っているただの男友達だ。
私達は高校卒業後、
別の地方の大学に進学し
離れ離れになる。
福岡市という地理上、
進学先は鹿児島市や長崎市、
関西地方、関東地方とバラバラになる。
颯太は
最後に思い出を作りたかったのだろう。
花火大会当日、
私は可愛い浴衣を着て
髪型も可愛くアレンジして思い切り
オシャレをしていた。
ひそかに恋愛感情を持つ颯太に
恋心を告白するためだ。
進学後、私達はバラバラの地方に
住むから付き合う気はない。
ただ恋愛感情を伝えたかった。
花火大会では馬鹿みたいにはしゃいだ。
将来への不安を
消したいからかもしれない。
屋台でりんご飴を買い
颯太と一緒に食べた。
好きな人と一緒に食べるりんご飴は
最高に甘くて美味しかった。
大濠公園の夜空に花火が打ち上げられ
福岡市の空は華美に真っ赤に染まる。
だけど告白する勇気が出ない。
好きですという言葉が出なかった。
颯太は私に恋愛感情を
持っている気配もなく
楽しそうに笑顔で花火を見上げていた。
結局最後の告白はできずに終わった。
泣くな、私。
大濠公園の花火大会のフィナーレに
盛大な花火が打ち上げられる。
パラパラと炎が消える音がして
最後の花火の炎の灯火が消えた時、
私と颯太の青春の光が
真っ暗な夜空に飲み込まれ
消え去った気がした。