捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます!
捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます!
「お初にお目にかかります。私はマドロール・ティドランですわ。本日からよろしくお願いします」
頭を下げるのは、美しい少女である。
彼女の名前はマドロール・ティドラン。ティドラン王国の王女である。
美しく煌めく銀色の髪と、赤い瞳。
齢十七歳のかわいらしい少女。
祖国では妖精のようだと讃えられた王女である。
彼女は同盟の証として、帝国へと嫁いできた。その国の皇帝は非道と噂である。今回の婚姻も、恋愛感情などというものはない。ただ結婚を求められ、丁度良かったからという理由でマドロールは婚姻を結ぶことになった。
――会ったこともない皇帝に嫁ぐことになったマドロール。
当然のように緊張していたわけだが……、顔をあげて皇帝の姿を見た瞬間、その緊張は消し飛んだ。
というのも……、
(きゃあああああ。ヴィツィオ様!! ヴィー様が現実に! 何と麗しいの!! え、しかも私ヴィー様と結婚するの? え、何、私死ぬの!?)
皇帝ヴィツィオを見た瞬間、マドロールは前世の記憶を思い出した。
そして結婚相手であるヴィツィオが前世の最大の推しであること、この世界が前世ではまっていた漫画の世界であること、自分がいずれ捨てられる皇妃であることも含めて思い出した。
推しであるヴィー様が現実に存在している。すなわち推しが生きている……その事実にマドロールは大興奮である。
そして先ほどまでの緊張した面立ちとはうって変わって、すっかりキラキラした目でヴィツィオを見ている。
突然の王女の変化にその場にいた者達は驚いた様子だったものの、そのまま挨拶を進めた。
マドロールが挨拶をした後に、ヴィツィオがマドロールに声をかけた。それだけでマドロールは死ぬかと思っていた。ただ一言、「ふん。貴様が皇妃になる王女か。部屋で休むといい」とそれだけ冷たく告げられただけだが……。
(はぁああああああ! ヴィー様が私に、私に声を! ヴィー様の麗しい美声……。素敵、ときめく。冷たい声もかっこいいぃいい!!)
本来のマドロールは、祖国で大変愛されていたのもあって皇帝のそんな様子に沈む。落ち込み、怯え、だけれども周りに味方もいない状況で夫である皇帝に縋る。
しかし実際のマドロールは前世の記憶を思い出したのもあって、ヴィー様が目の前にいるだけで幸せだと思っていた。冷たい言葉? それも推しの言葉ならばご褒美でしかないなどと思っている。
皇妃として与えられている部屋に案内されたマドロールは、今日はゆっくり休んでくださいと言われたので、お風呂に入った後ベッドに横になる。
(あのヴィー様が、マリアナには甘い声を出して……っ! はぁあああああ、人を愛する気持ちを知ったヴィー様の尊さはヤバい。ああ、でもあれよね、私はあくまで脇役だし、ヴィー様の傍にいられなくなる!? それは嫌だわ! 私がヴィー様の心の傷を癒してヴィー様から愛をいただこうなどは烏滸がましいもの。だから、ヴィー様から離縁されるのはまぁ、仕方ないわ。でもヴィー様の色んな一面を横で見たああああい!!)
すました顔をしながら寝転がっているマドロールだが、内面は大分暴走していた。
さて、マドロールが思い出したこの世界は『暴君皇帝と、聖なる乙女』の世界である。
暴君皇帝とは、マドロールの推しのヴィー様のことである。そして聖なる乙女というのはヒロインであるマリアナのことである。
マリアナは平民として生きていたが、貴族の庶子だということが発覚してお姫様のような道を進むことになる。何よりマリアナは心優しく、聖獣に認められた乙女という一面を持つ。
ヴィツィオはそんなマリアナに興味本位でちょっかいを出していたのだが、いつの間にか惹かれ、愛を知っていくというのがメインストーリー。
そしてマドロールの立場はといえば……捨てられる皇妃である。
ヴィツィオの皇妃としているものの、お飾りで……それでいて乗り気ではないヴィツィオの愛を求めている悲しき皇妃。そして愛おしい夫がマリアナに恋をしたのを見て大暴走し、結果として処刑される。そんな悲しき立場である。しかもマドロールの暴走のせいで、祖国まで帝国にやられてしまう。
(私は推しにならば何をされたって嬉しいけれど……! でもお父様たちに迷惑をかけるわけにもいかないものね。なんとか祖国には影響がないようにしないと! あと私がヴィー様を心から愛していることと、ヴィー様の意に沿わないことをしないことは言わないと! それに私、漫画の知識でこれから起こることもわかるし、それを使ってヴィー様からの信頼を得て……最終的にはマリアナが現れた時にはヴィー様をこっそりのぞける立場に是非なりたい! ああ、でもマリアナは私みたいな元皇妃が傍に居たら嫌かしら。でも……愛を信じていないヴィー様が、マリアナに愛を囁く姿を見たい!! はあああああ、しかもあれよね、それまでヴィー様の妻になれるとかなんてご褒美タイムなの!! 私のヴィー様が私の夫。あんなことやそんなことまで……はぁ、無理、考えただけで尊死しそう……。その思い出だけで私は生きていける!!)
マドロール、自分が一般人だと知っているので、いずれ捨てられるのは受け入れている様子である。
ヴィツィオはマドロールにとって、前世の最大の推し。その推しが目の前で息をしていて、言葉を発していて、動いている。それだけで神様ありがとう!! という気持ちになっている。
なのでそれ以上のことは望んでいないので、とりあえずヴィツィオの傍で推しを見れる立場になりたいと野望を抱いている。
そういうわけで、マドロールはヴィツィオに溢れんばかりの思いを口にしようとしていたわけだが、残念なことに結婚式が行われるまでの十日程度の間にヴィツィオに会うことは出来なかった。
通常ならそれだけ放置されれば、花嫁は落ち込むだろうが……マドロールは推しが生きているだけで幸せなので常ににこにこである。
侍女たちにもヴィツィオと結婚出来ることが嬉しい、お忙しいだろうから会えなくてもいい、いるだけで幸せみたいな調子なので、彼女たちは何て健気なんだろうとマドロールに対する好意を深めていた。ただし本人は結婚相手だから推しについて、幾らでも侍女に語れるの幸せとなっているだけである。
*
結婚式の当日。
久しぶりに見るヴィツィオを前に、マドロールはもう死にそうになっていた。
(はぁはぁ……かっこいい! ヴィー様の真っ黒な髪と、黄色い瞳をこんな至近距離で……。というか、私ヴィー様の隣を歩いている。こんな素敵な花嫁衣裳を着せてもらって、こんな素敵な衣装を着たヴィー様の隣を歩けるとか、何ここ、天国?? ヴィー様と結婚とか、前世の私は特にこれといってよいことしていないと思うのに、こんなご褒美もらっていいの!?)
マドロールは頑張って澄ました顔をしているが、顔が少しにやけている。
ヴィツィオはそんなマドロールに対して興味がなさそうである。
その後、神父の前で誓いをし、誓いの口づけもした。
マドロールは義務的なキスとはいえ、推しの顔が、愛してやまない顔が、至近距離に近づいてきたことに気絶しそうになっていた。
(推しとキス。ヴィー様とキス。ああああぁあああ、柔らかかった。やっぱり此処は天国。完全なる天国。ご褒美タイムすぎる。はぁああ、ヴィー様が目の前にいるだけでも幸せなのに、妻として過ごしていいとか、ヤバい)
何だかんだ限界化しているものの、マドロールは仮にも王族なので何とかその場をやり切るのであった。
さて、その後が最大の問題である。
結婚式をした夫婦がその後何をするかといえば、初夜である。
「マドロール様、とても美しいですよ」
「これなら陛下も気に入ってくださるはずです」
そう言われて夜伽用の服を着せられるマドロール。
(うーん、すけすけ。いや、これから推しと初夜……。やばいわ。キスだけでもやばかったのにこれから推しと……? 私は死んでしまうのでは。しかし初夜の場でそんなことになったら大変だし、精神を強く持たなければ……)
そんなことを考えている間に、その部屋へとヴィツィオが訪れた。
「お待ちしておりましたわ。陛下」
……本当は心の中でヴィー様呼びしているので、そう呼びそうになっていた。
しかし流石にそんな風に砕けた呼び方をするのは不興を買うことなのでマドロールは王女としての仮面をかぶって笑う。
内心は推しが寝室を訪れたわけで、気が気ではない。
「王女、お前、何を考えている?」
「何を……とは?」
「侍女たちに良く分からないことを吹き込んでいると聞いた。それであいつらを味方につけて何をする気だ?」
警戒心に満ちたその黄色い瞳が真っ直ぐにマドロールを見ている。
どうやらマドロールが侍女たちにヴィツィオに夢中である様子を示していたことを勘繰っているらしい。
ヴィツィオに見つめられて、マドロールは落ち着かず思わず視線をそらしてしまう。
そんな様子にヴィツィオは距離を詰めて、その腕をつかむ。
「目をそらしたな。やっぱり何か企んでいるのか? 言っておくが、お前が何か企んだところで、どうしようもないぞ」
「……か」
「は? なんだ?」
「顔が……かっこよすぎる!」
「は?」
腕を掴まれ、顔をヴィツィオ側へと向けられたマドロール。出てきた言葉は、推しの顔がかっこよすぎるというそんな言葉だった。
「陛下の顔がかっこよすぎます。そんな風に見つめられたら落ち着きません!」
「は? お前は何を言っている?」
「本心です! ヴィツィオ様はかっこよすぎます! 推しが息をして生きているだけでも幸福なのに、こんな至近距離! かっこよすぎて、死にそう!」
なんとか結婚式までは取り繕っていたマドロールだが、流石にこんな至近距離で推しに見つめられてもう本性が出ていた。
ヴィツィオが怪訝そうな顔をしている。
「は? そんなわけのわからないことを言ってごまかす気か?」
「違います! 陛下の顔が良すぎるんです! 陛下の顔が素敵すぎて、近づかれるだけでやばいんです!」
「……お前は、会ったばかりの俺に惚れているとでもいう気か?」
「はい! 大好きです!」
ヴィツィオはそれはもう恐ろしい顔でマドロールを睨んでいるわけだが、マドロールはそう言い切る。
ヴィツィオが驚いた顔をしているのは、ヴィツィオが人の嘘を見破ることが出来る能力の持ち主だからである。ちなみにその能力については漫画でも示されていたのでマドロールはそのことを知っている。
(推しが驚いた顔してるぅ。可愛いぃいい。ヴィー様は嘘を見破る能力はあるけれど、私のヴィー様を心の底から大好きだもの。はぁ、可愛いぃいい)
マドロールはそんなヴィツィオの表情を見て、それはもうだらしない顔をしていた。
「ところで、陛下! 私、陛下にお話があります!」
「は?」
「先ほど、私が何か企んでいるって思われていましたけれど、私が陛下の意に添わぬことをするはずがないのです!」
「は?」
「なので、それを語るので聞いてください! あのですね、私には前世の記憶があって、あ、さっき思い出したんですけど。前世で読んだ漫画――物語の中で陛下が、ヴィー様がいて……」
マドロール、ヴィツィオと二人きりで話す機会もそうそう作ることは出来ないだろうと思い、この機会にヴィツィオへの溢れんばかりの愛を語ることにした。そして是非、無害だと信じてもらおうという作戦である。
物語の世界ではヴィツィオが出ていたこと。だからマドロールはヴィツィオの能力とかも含めて知っていること。
その中で自分は捨てられる皇妃だったけれども、物語の中のようには動かないし、邪魔もしないということ。
不興を買うようなことは何もする気はないので、側でヴィツィオの素敵な姿をただ眺めていたいということ。
原作知識でこれからのことも分かるので、是非この国の為に使いたいこと。
「それでですね、私は前世で陛下が、ヴィー様が推しだったんです! あ、推しっていうのは大好きな人って意味なんですけど、私、ヴィー様がとっても大好きで、ヴィー様のグッズとか沢山集めていて、ヴィー様のことばかり考えていたんですよ。でも前世だとヴィー様は創作物の中の人で、ヴィー様が目の前で動いているとか、声を発するとかそういうの見れなかったんです。だから、今、私はヴィー様が目の前で息をしているだけで凄く幸せで!! もう生きていてくれてありがとう!! ってそんな気持ちです。だからですね、侍女に語ったのは全部本心です。何か企んでいるとかじゃありません。大体何か企んでいたとしてもヴィー様から『何を企んでいるんだ?』って言われた段階で、私は全部白状しますよ。だってヴィー様の美声で、問い詰められて答えないなんてことはありえません! ヴィー様の麗しい声を聞けているだけで私は本当にもう幸せで。結婚相手がヴィー様だって気づいた瞬間からもう、本当に死んでもいいってぐらい幸せなんですよ? 今日の結婚式でキス出来ただけでもとっても幸せでしたし! 私ヴィー様が幸せそうに笑ってくれるといいなぁって思うので、ヴィー様が好きな人が出来た時はすぐに身を引きますからね。寧ろ私はヴィー様の誰かに夢中になっている姿を見れるだけでどうしようもなく幸せなので、それ以上のことはないですし。………だから、ヴィー様? 私はヴィー様の意に添わぬことはしませんからね!!」
マドロールはマシンガントークをしていた。
いかに自分がヴィツィオを愛しているかというのを長々と語った。
一気に語り切ったマドロールははっとした。流石に勢いのままにこんなに語ってしまったら引かれてしまったのではないか……と。
しかしマドロールがちらりとヴィツィオを見ると、耳を赤くしてそっぽを向いていた。
(照れてる!? ヴィー様が照れてる!? はああああ、死んでもいい。大好き!! かああああわいいいいいいいいいいい)
脳内で叫んでいるマドロール。
マドロールからの視線を感じたらしいヴィツィオは照れ隠しなのか、そのまま何も言わずにマドロールのことを押し倒した。
そしてそのまま初夜は決行された。
翌日目が覚めた時にヴィツィオはいなかったものの、マドロールは昨夜を思い出して足をバタバタさせていた。
(はぁあああ! 推しに、ヴィー様に抱かれた!! やばいやばいやばい。なんていう幸せなことなのかしら!! 本当にこの事実だけで生きていける!!)
マドロールがバタバタしているのを見て、侍女たちはにこにこしている。
ついでにいうと、マドロールに興味がなかったはずのヴィツィオが寝室から出る時にマドロールを気遣う言葉を口にしていたので、それも含めて侍女たちはにっこにこである。
(でもあくまでこの初夜は義務よねぇ。ヴィー様は私なんかを相手にし続けたりはしないだろうし。はっ、でもヴィー様は私のヴィー様への愛を信じてくれたのかしら? 私ってば、初体験でヴィー様ヴィー様としか言ってなかったもの。……その前にヴィー様呼びを勢いでしちゃったから、ヴィー様も、私が「陛下」って言ったら、「ヴィー様じゃないのか?」って言ってたのよね。これって、ヴィー様本人からヴィー様呼びを許可されたってことよね。はぁ、幸せ)
マドロールは、義務で初夜に来ただけなので義務としてしか夫婦関係はないだろうなぁと思っていたわけだが、予想外にもヴィツィオは翌日もその翌日も……連日でマドロールの元を訪れていた。
「ヴィー様!? 今日も来てくださったのですか?」
「なんだ、嬉しくないのか?」
「いいえ、とっても嬉しいです! 私はヴィー様が大好きですから」
「……ならいいだろ」
そういう会話だけした後、マドロールはヴィツィオに押し倒されたものである。
そのことを思い出しただけで、マドロールは幸せになっている。
(はぁ、私のヴィー様は案外肉食獣だったのね! でもそんなヴィー様も素敵!! 私は体力ある方だから連日でも問題ないけれど、マリアナは華奢だったはずだからもう少し手加減してもらわないと)
そんなことを思っているマドロールは、連日訪れる皇帝の姿を見て、すっかり皇帝が皇妃を溺愛しているという噂が出回っていることを知らない。
*
「陛下が皇妃様のことをそんなに気に入るとは予想外でした」
「……そういうのではない」
「それなら何で連日通っているんですか?」
「……無駄口聞く暇があれば、仕事しろ」
さて、皇帝ヴィツィオは昔なじみの文官の言葉を聞いて、そんな風に面倒そうに告げる。
どうして毎日通っているか……、それに関しては本人であるヴィツィオも理解出来ていない。
(あの女は、訳の分からないことを言っている。でも嘘は言っていない。それにあの女から告げられた未来に関しては役に立つ。……ただそれだけのはずだ)
ヴィツィオは、ずっとこの城でどろどろとした権力争いを見てきた。
その手で血の繋がった父親や兄を蹴落として、今、この地位にいる。だからこそ、ヴィツィオは愛なんてものを信じていない。
――『暴君皇帝と、聖なる乙女』の中でもヴィツィオは人を愛さない皇帝として描かれていた。誰にも執着せずに、愛なんて信じずに生きていた。そんな暴君が、マリアナと出会うことによって愛を知っていく物語……。それがその物語だった。
――大好きです。
だから大好きですと、全く嘘偽りなく、真っ直ぐにヴィツィオの目を見て告げてくるマドロールの言葉をばかばかしいと思っている。それでもヴィツィオがどういった存在か知っているのに、機嫌を損ねれば首をはねられるかもしれないと知っているのに――真っ直ぐにヴィツィオを見ている姿に、嫌な気はしなかった。
と、そこまで考えてヴィツィオは気のせいだと首を振る。
そんな中で、一人の侍女がやってきた。
「皇妃殿下から、お茶会のお誘いです」
そう言って手紙を差し出してくる侍女。
結婚式の後、夜には毎日会っているものの昼間にこうしてマドロールが会おうとしてくることは初めてだった。その場にいる文官は、その誘いでヴィツィオの機嫌が悪くなるのではないか……とハラハラしていたわけだが。
「……行く」
ヴィツィオがそう口にしたことに大変驚いていた。
そしてそういうのではないと言いながら、結局惚れているのでは? と皇帝が去った後の執務室では会話をされていた。
ヴィツィオがマドロールのいる部屋を訪れると、マドロールは満面の笑みを浮かべていた。
「陛下!! 来てくださったのですね」
「……夜に毎日会っているだろ」
「夜は夜です! 私は陛下のことを毎秒でも見ていたいんです!!」
真っ直ぐにヴィツィオの顔を見ながら告げるマドロール。
「でも突然お誘いしてしまってすみません! 陛下はお忙しいのに……。でも、私、陛下と昼間も会いたいなって思ってしまって……」
「別にいい」
「まぁ、本当ですか?」
マドロールは忙しいヴィツィオを誘うのを遠慮していたわけだが、侍女たちに「皇妃様がお誘いになるなら絶対来ますよ。誘いましょう」と言われて誘いの手紙を書いたのである。
マドロールは断られるかしらとドキドキしていたので、ヴィツィオが来てくれただけで嬉しくて仕方がないのかにこにこしている。
「それより……」
「何ですか、陛下」
「何で、陛下呼びだ?」
ヴィツィオは夜は散々、ヴィー様ヴィー様呼んでいるのになぜか陛下呼びになっていることが気になったらしい。
「な、なんか恥ずかしくて……」
「散々夜に呼んでるだろ。いつもそれでいい」
「えっと……じゃあ、ヴィー様」
「ああ」
「ヴィー様、ヴィー様……」
「何回呼ぶ気だ?」
「なんかこうしてヴィー様って呼べると、ヴィー様と親しくなった気がして!」
「親しいも何も、お前は俺の妻だろう」
「あ゛っ」
「……なんだその声は」
「ごめんなさい。ヴィー様が私のことを妻だって言ってくれたことが嬉しくて、変な声が。はぁ、幸せ」
ちなみに夜は部屋の中に侍女が居ない状態での会話だが、今はお茶会なのでこの会話をその場にいる使用人たちが聞いている。
思ったよりも仲がよさそうな様子に、周りの者たちは驚いている。何よりあの暴君皇帝が愛称で呼ばれることを許しており、マドロールのことを妻と認めている発言をしている。
その事実に何よりも驚いている。
「おい」
「なんですか、ヴィー様」
「……お前、何か欲しいものあるか?」
「ほしいもの?」
「ああ。お前、最低限の物しか買ってないだろ。俺の妻ならもっと何か望め」
「え。いいんですか?」
「ああ。お前のおかげで助かっている面もある」
「ふふ、ヴィー様のお役に立てて良かったですわ。でもほしいものですか……なら、えっと、その」
「何でもいいから言え」
「ヴィ、ヴィー様の色のドレスとか、アクセサリーとかほしいなぁって」
恥ずかしそうに顔を赤くしてマドロールはそんなことを言う。
そんな望みを言われたヴィツィオは驚いた顔をしている。
「なんで、そんなものを?」
「だって、ヴィー様の色を纏っていたら、こう……ヴィー様の物になった気分になりますし、私、ヴィー様の色の物沢山ほしくて。駄目ですか?」
「……好きにすればいい」
「本当ですか? やった。ふふ、ヴィー様の色の物を買って、いつもヴィー様の色を身に纏いますわ」
「……そんなことをしなくてもお前は俺の妻だろう」
「あ゛ぁぁぁ」
「何、小声でうめいている?」
「尊すぎて。ヴィー様が、かっこよすぎるのが悪いんです」
変な声をあげて、顔を押さえるマドロールをヴィツィオは何とも言えない表情で見ている。ただし不快に思っているわけではなさそうだ。
不快に思えばすぐに命を奪ったりするようなヴィツィオなので、そもそも自分の色を纏わせることを許している時点で大分、マドロールのことを気に入っていると言えるだろう。
その場にいる使用人たちは、「あれ、確か前にどこかの令嬢が陛下の婚約者ぶってその色を纏ってきれられてなかったっけ?」などと過去のことを思い出していた。
「ヴィー様が、お茶会に来てくれただけでも幸せなのに、妻って。はぁ、なんて幸福」
「……誘いたいならいつでも誘えばいい」
「いいんですか?」
「ああ。時間がある時ならきてやる。……それに昼間も遠慮せずにもっと自由にしてていい。お前は好きなように、好きなところを見て回ればいい。俺の妻であるお前の行動を制限出来るものなどいないからな」
「いいんですか? え、じゃあ、あの……ヴィー様に会いに行っても??」
「……好きにしろ」
ヴィツィオの言葉に、マドロールは本当に嬉しそうに笑っている。
ちなみにマドロールの祖国はこの帝国よりも小さい国である。国力の差は歴然なのもあり、マドロールは下手にこの城を動き回るのも……とちょっと遠慮していた。
でも本人から許可をされたので、会いに行こうと決意する。
皇妃としての仕事もしているので、忙しいと言えば忙しいけれども、それでもヴィツィオが良いと言ったのだから、会いに行ってもいいはずと大興奮である。
(推しが会いに行っていいって言ってくれるとか最高では??)
そんな調子で嬉しくてたまらないマドロールは終始にこにこしているのであった。
そうして無愛想な皇帝と、終始笑顔の皇妃のお茶会は終わった。皇帝は無愛想であるが、途中で席を立つこともなかった。そのことからも皇帝が皇妃を気に入っていることは城の者達にとって周知の事実となったのである。
*
「ヴィー様」
「ヴィー様、かっこいい!!」
「ヴィー様、今、お時間いいですか?」
ヴィツィオから、会いに来てもいいという許可を得たマドロールは時間が空いた時にいつも「ヴィー様ヴィー様」とヴィツィオのことを呼んでやってくるようになった。
何よりもヴィツィオの周りの者達を驚かせたのは、マドロールがやってくるのをヴィツィオが拒否しないことだった。
愛称で呼ぶのを許し、満面の笑みでよってくるマドロールを拒否もしない。それでいて夜は毎日通っていて、会話を交わしている。
ヴィツィオの側付きたちは余計に驚いていた。
何故ならこの男、見た目が良いのもあり散々女性によってこられていた。気まぐれに身体の関係を持つこともあったが、それ以上の関係を女性と持ったことはない。そういう男である。
その男が、寄ってくるのを許している。
「はぁああ、ヴィー様って本当にお強い。かっこいいいい」
その日も、皇妃であるマドロールは許可をされたからと剣を振るうヴィツィオを見ていた。
ヴィツィオは皇帝であるが、その剣の腕も評判である。かっこよくて、皇帝で、そして強いなんて最強だと、マドロールはにこにこである。
目の前でヴィツィオが騎士たちを相手に訓練をしている。前世も含めて戦いの場なんて知らないマドロールであるが、その剣捌きも絵になっていて見惚れている。
(この世界にはどうしてカメラがないのかしら。画家を呼んでかっこいい、ヴィー様を描いてもらおうかしら? それか、私が描こうかしら!)
実は前世で趣味程度だが、絵を描いていたマドロール。推しであるヴィツィオのことは散々描いていた。カメラがないのならば、自分で描いてみようかと思い至ったマドロールは、「ヴィー様の絵を描いていいですか?」と本人に聞く。
それに対しても「好きにしろ」と言われたので、マドロールはよくヴィツィオの絵を描くようになった。
とはいっても本業が画家ではないので、その絵は上手いとは言い難い。ヴィツィオだとは分かるけれど、それなりの出来である。
「私の画力ではヴィー様のかっこよさが示せないわ!! なんてことでしょう!」
そんなことを言いながら中々マドロールはヴィツィオに完成した絵を見せなかった。
痺れを切らしたヴィツィオに見せろと言われて渋々見せたぐらいである。
「ヴィー様のかっこよさが全然描けてないんです!」
「そうか」
「はい。もっとヴィー様をかっこよく描かないと!」
「好きにすればいい。これは俺がもらう」
「え、ヴィー様! それはそんなに出来がよくないです」
「俺が欲しいと言っているんだぞ?」
「はい! 貢ぎます!」
「……お前、俺が言うのもなんだが、ちょろすぎないか?」
「ヴィー様にそんな台詞言われてあげないなんて選択肢はないです。本当にヴィー様ってかっこいいんですよ? 私の画力じゃヴィー様の良さは示せないのが悔しいです!!」
自分の画力の無さに怒りを見せている様子のマドロールはまたマシンガントークをしようとして、その口をヴィツィオの口に塞がれた。
大体、マドロールがしゃべりすぎるので最近よく口でふさがれているのである。
マドロールは推しに口づけをされると大体黙り込むのであった。
*
「わぁ、ヴィー様の色を纏ってパーティーに参加出来るなんて、幸せだわ!!」
「良かったですね。マドロール様。全身陛下色だなんて、愛されてますわ」
「ヴィー様は私なんか愛さないわよ。義務よ義務。嫌われてはないとは思うけど」
さて、これからパーティーが行われる。
結婚式を挙げた後の初めての大規模なパーティーである。
黒の生地に黄色の装飾がこれでもかとぐらい入っているドレス。
身に着けている装飾品も全て黒と黄色。
頭の先からつま先まで、この帝国の皇帝――ヴィツィオの色で染め上げられている。
ヴィツィオがそういう装いを許可した時点でよっぽど愛されていると侍女たちは思う。
しかしどうしてかこの皇妃様は、自分がヴィツィオに愛されているとは思っていないようである。そもそもそうじゃなければ毎日夜に寝室に向かわないし、お茶会などの誘いにも乗らないし、こういう装いをすることも許可しないだろう。
分かっていないのは本人だけである。
ちなみにここまでしていても、ヴィツィオは自分がマドロールに特別な感情を抱いているなどと認めていない。どっちもどっちな皇帝夫婦であった。
全身を推しの色で染め上げられているマドロールは、幸せそうに笑っている。
(ふふ、普段も服装の一部にヴィー様色を盛り込んでいるけれどもこんな風に全身をヴィー様色だなんて。私がヴィー様の物だって証みたい。なんて素敵なのかしら。ああ、もう本当にこの思い出だけでマリアナが現れた後も生きていけるわぁ)
そんなことを考えて脳内では、大興奮。しかし皇妃なので、ちゃんと外面はキリッとした顔をしている。
そんな中で、ヴィツィオがマドロールを迎えに来た。
正装のヴィツィオを見て、マドロールはときめきすぎてふらーっとしている。
「おい、どうした?」
「ヴィ、ヴィー様がかっこよすぎて!! どれだけ私をときめかせるんですか! 凄く、かっこいい!!」
「……具合が悪くないならいい」
「はっ、ヴィー様、もしかして私のことを心配してくれたんですか? ヴィー様優しい。かっこいい。好き……」
「馬鹿なこと言っていないで行くぞ」
「はい!!」
そして二人そろってパーティー会場に入る。
ちなみにその場にいた貴族たちは、二人で仲良く入場した様子に大変驚いたのだという。
城の者たちはすっかりヴィツィオとマドロールが仲よくしている様子は周知の事実であるが、そうではないものたちは政略結婚なので所詮仲が良いというのは噂でしかないと思っていたのだ。
それがどうだろうか。
二人仲良く入場してきた。それに加えて、マドロールの恰好は、全身が皇帝の色である。
皇帝がその装いを許した時点で寵愛がうかがえるというものである。
マドロールはそのパーティーで、常にヴィツィオの傍に居た。
推しの側で、パーティーでかっこいいヴィツィオを見れることにマドロールは幸せを感じていた。
パーティーに参加している者たちは、時折ヴィツィオがマドロールに話しかける様子や、ヴィツィオに話しかけられてマドロールが嬉しそうに笑っているのを見て、マドロールはお飾りの皇妃ではなく、ちゃんとした皇妃なのだなと認識を改めている。
そういうわけで、貴族達からかしこまった様子で挨拶をマドロールはされていた。ちなみにヴィツィオの妻の座を狙っていた令嬢が所詮小国の王女だしとマドロールに何か嫌味を言おうとしたのだが、それはその前に騎士たちによって阻まれていた。
ヴィツィオが「俺の妻に不満を抱いている奴は近づけるな」と言っていたためである。その命令を聞いた騎士たちは「やっぱり皇妃様を溺愛してそうだ」と噂していた。ちなみにその話はマドロールは知らない。推しからそんな風に守られているとしったらきっとまた変な声をあげることであろう。
*
「陛下、皇妃様は可愛いですねぇ……って睨まないで下さいよ」
ヴィツィオの側仕えたちもすっかり「ヴィー様」とまるで飼い主を見つけたように駆け寄ってくるマドロールを見て可愛いなぁと思っている様子である。
「陛下も皇妃様のこと可愛いって思ってますよね?」
「……思ってない」
「素直になりましょうよー。陛下は皇妃様のこと、愛してますでしょう?」
「……俺は誰かを愛したりしない」
「とか言っちゃって、もしあの皇妃様が陛下以外の男相手にあんなふうに迫ってたら嫌でしょ?」
「あ゛?」
「うわ、なんていう凄みのある声あげているんですか。嫌なんでしょ? なら皇妃様のことが好きなんですよ。陛下は。そもそも好きでもない女を毎日抱くなんて陛下はしないでしょ。陛下、皇妃様が駆け寄ってきた時に自分で鏡見ましょうよ。嬉しそうな顔してますよ? それにお優しい皇妃様が騎士に話しかけたりしただけで凄い形相でしたよね? 皇妃様と仲良く話していた騎士に対してその後、しごきが酷かったでしょう」
……そんなことを言われて、ヴィツィオは何とも言えない表情になる。
ちなみに騎士にやつあたり紛いの行動をしてしまった自覚はヴィツィオにはあった。
マドロールはヴィツィオが訓練をしているのを見に、騎士たちのいる場所へとよく来る。顔見知りの騎士と仲良く話してる時もあるのだ。マドロールと騎士が楽しそうに会話を交わしていたのを見てイラッと来て、八つ当たりした。……ちなみにマドロールは騎士からヴィツィオの活躍を聞いていただけである。
確かに他の男相手に、マドロールがヴィー様と呼ぶのと同じぐらいの笑顔で寄って行っていたら嫌だという気持ちはある。
(だが、俺が愛など……)
そんなことを思っているヴィツィオだが、その日の夜、それを実感するのである。
……さて、その日の夜もヴィツィオはマドロールの元を訪れていた。初夜の時はマドロールが目を覚ました時にはすっかり部屋からいなくなっていたヴィツィオであるが、最近は朝までその部屋にいることも多い。
「はぁ……」
ヴィツィオに抱かれた後のマドロールは、変な声をあげたりしながら幸せそうにいつも息を吐いている。
そのまま眠ることもあれば、眠たくなるまで会話を交わすこともある。
「ヴィー様、私は体力があるからヴィー様に付き合ってあげられますけれど、ヴィー様が本当に好きな人が出来た時はもっと手加減してあげてくださいね」
マドロールがそんなことをヴィツィオに言ったのは、ただ単に後々ヴィツィオに愛される予定のマリアナのことを思っての言葉である。
毎日夜伽をしているくせに、相変わらず捨てられる気満々のマドロールであった。
将来的に漫画のようにヴィツィオの相手はマリアナではないかもしれない。でもどんな相手だろうとも、推しが愛を知り、幸せになってくれるならいいと思っているマドロール。
将来、推しが好きな人が出来た時のための言葉だったのだが、ヴィツィオは不機嫌そうな顔をしている。
「ヴィー様? 怒っているんですか? どうして?」
不思議そうに問いかけるマドロールを見て、ヴィツィオは溜息を吐く。
(この女は、この期に及んで俺が他の女に現を抜かすと思っているのか。毎日、来ているのに)
――そんな怒りがわいた。毎日毎日夜にやってきて、そしてマドロールも「ヴィー様ヴィー様」と毎日自分の名を呼んで。なのに、初対面の時に軽く言っていたように、まだ捨てると思っているのかと。
その怒りを感じたことに、ヴィツィオ自身が驚いた。
ヴィツィオはその怒りをもってして、マドロールを自分が手放す気がないこと。そしてマドロールにそんな風に思われているのが嫌なこと。……側仕えたちが言っていたように自分がマドロールを愛しているらしいことを自覚した。
「マドロール」
ヴィツィオはいつもお前とかおいとかそんな風にマドロールのことを呼んでいた。
なので、急に名前で呼ばれたマドロールはびっくりしたようにヴィツィオを見る。
「俺はお前以外にこんなことをしない」
「へ?」
「俺が、お前を好いているといったらどうする?」
じっと見つめられてそんなことを言われたマドロールはいっぱいいっぱいになっている。推しからそんな言葉を向けられるなんて思っていなかったようである。
「ヴィ、ヴィー様? 私のこと、からかってますよね?」
「からかってない」
「うっそだぁ。ヴィー様が私のことを好きだなんて夢みたいなことあるわけないですよね。ヴィー様、本気なら私に愛してるって言ってみてくださいよ。まぁ、言えるわけ――」
漫画の中のヴィツィオは愛を信じていなかったので、その”愛している”という言葉をヒロインであるマリアナに伝えるのも大分後半だった。自分がそんなものを異性に抱くはずがないと思っていて、だからこそ冗談では間違ってもヴィツィオが伝えない言葉。
だから、試すように言ったマドロールの言葉にヴィツィオはかぶせるように言う。
「マドロール、愛している」
「ひゃ? へ?」
「何度でも言ってやる。俺はマドロールを愛している」
冗談だろうと思っていたマドロールは推しから愛の言葉を告げられて、驚愕した。
固まっているマドロールに、ヴィツィオは口づけを落とす。
「お前が信じるまで分からせる」
「ひゃああああああ」
推しのかっこよすぎる顔と、その言葉にマドロールは思わず奇声を発するのであった。
*
その後、散々分からされたマドロールは自分がヴィツィオに愛されていることを実感した。
あの日以来、ヴィツィオは周りに使用人たちの目があろうとも、マドロールに愛を囁くようになった。そしてマドロールのことを甘やかすようになっていた。
(ま、まさか、ヴィー様が私のことを好きになってくれるなんて。そ、そんな夢みたいな現実が訪れるなんて。やっぱりこれは夢!?)
などと思っていたマドロールであるが、散々、甘やかされて流石にヴィツィオの本気を理解していた。
そういうわけで、捨てられるつもりの皇妃だったマドロールは捨てられることなく皇妃として愛されることとなった。
結婚式から二カ月後には妊娠し、子供を産むという皇妃としての役割もちゃんとこなしていた。
その後、マドロールの記憶にあるヒロインであるマリアナも現れたが、当然ヴィツィオはそれになびくことはなかった。逆にマドロールが「ヒロインのマリアナだ」とマリアナに気を掛け過ぎて、ヴィツィオが嫉妬していたぐらいである。
「ヴィー様がかっこよすぎて、私は今日も死にそうです」
「死ぬな。俺を置いて逝ったら許さないぞ」
「はぁ、ヴィー様を置いて逝ったりしませんよ。ヴィー様、大好き」
そうして暴君と、捨てられる予定だった皇妃はその後も仲睦まじく過ごすのであった。
完
急に書きたくなって書いた話です。個人的にこういう話が好きです。
マドロール・ティドラン
銀髪赤い瞳の美少女。嫁いだ時十七歳。
ヴィー様を見て、前世の記憶を取り戻し、捨てられるまでのご褒美タイムを満喫せねばっと楽しんでいたらヴィー様に愛された。
予想外だけどヴィー様大好きなので、このまま妻として入れるとか、幸福すぎると思っている。
夫の全てがかっこよすぎて、よく奇声を発している。いつもヴィー様ヴィー様言って、追いかけている。
ヴィツィオ
帝国の皇帝。黒髪黄色い目の美丈夫。誰でもいいと一先ずマドロールを娶った。ニ十歳。
割と暴走気味のマドロールと接しているうちに気に入る。皇族の家庭環境がドロドロしていたのもあって、愛など信じていなかった。漫画ではマリアナに愛を抱くが、マドロールのことが好きになった。その後はその気持ちを隠しもしなくなった。
『暴君皇帝と、聖なる乙女』
マドロールが前世で読んでいた漫画。ヴィツィオとマリアナの恋物語。その際、マドロールは捨てられる皇妃。