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第61話 ナスターシャ魔法学校

大変お待たせ致しました、本日より第二章の投稿を再開致します!


本作の書籍化につきまして、詳細が発表されていますので改めて記載させて頂きます。


レーベル:電撃の新文芸 様

発売日:2023年2月17日

イラスト:松うに 様


となります!

私や電撃の新文芸様のtwitterに書影も上がっていますので、見て頂けると嬉しいです!


 帝都の魔法学校────『ナスターシャ魔法学校』は、帝都の中で最も歴史のある学校とされている。


 卒業後は魔法省を始めとする行政組織や魔法具の有名ブランドに勤める者も多く、結果的に帝都で重要な役割を担っている人物の殆どが魔法学校出身となっている。入学時に家柄や才能で選別される訳ではない事を考えると、ナスターシャの教育レベルがいかに高いかが分かるというものだろう。


 最近の卒業生でいえば歴代最年少で魔法省長官補佐まで登り詰めたジークリンデが有名だ。俺が在学中の頃は卒業生で最も有名な女性と言えば間違いなくエスメラルダ先生だったが、もしかすると今はジークリンデかもしれないな。一緒に街を歩いている時の周りの反応を見ても、ジークリンデの顔は帝都中に知れ渡っているようだった。


 そしてそのジークリンデは今────魔法学校の大きな正門の真ん中で多数の父兄や子供、魔法学校の職員を始めとする周囲の視線を一身に受け、一歩も歩けなくなっていた。


「あれジークリンデ長官補佐よね…………? お子さんがいらしたの…………?」

「お仕事大変でしょうに娘さんまでいらっしゃるなんて、立派ねえ」

「ジークリンデ様…………結婚してたなんて…………うう…………」


 注目されている原因は明白で、魔法省高官の制服に身を包んだジークリンデがまるで入学式に参加する母親のようにリリィと手を繋いでいるからだろう。子供を真ん中に三人並んで手を繋いでいるその姿は、どこからどうみても仲睦まじい親子に他ならない。


 横目でジークリンデの様子を伺ってみると、どうやら周囲のひそひそ話は聞こえているらしく耳まで真っ赤に染めていた。その更に奥では、カヤが最寄りの魔法省職員を捕まえて「私は魔法省関係者よ! ご馳走の元に案内して貰おうかしら」とふんぞり返っていた。あいつはどうしていつも偉そうなんだろうか?


「な、なんだこれは…………?」


 ジークリンデは自分がここまで注目されるとは想像していなかったらしく、恥ずかしさの中に困惑の色を見せていた。

 …………魔法省の制服で来た時点で俺は内心こうなるような気はしていたんだよな。ヒラの制服ならまだしも、ジークリンデの白い外套は一目で魔法省の官僚だと分かる上、とても目立つ。


「ぱぱ、えっと…………まま…………?」


 足を止めた俺たちを見てリリィが不審がる。リリィは魔法学校が気になって仕方ないようで、まだ自分たちが視線を集めていることに気が付いていないようだった。


「ママって呼んだ! やっぱりジークリンデさんのお子さんなんだわ……!」

「うう…………魔法省に入った時からお慕い申し上げていたのに…………」

「まあ元気出せって…………というか隣の男、誰だ?」

「んん?? よく見たらあの子供、エルフじゃない…………?」

「ちょっと! ホントに関係者なんだってば! あそこのジークリンデ様が入れてくれるって言ったもん!」


 俺たちの一挙手一投足に、そこかしこで噂話がヒートアップする。

 …………これ以上ここに突っ立っていても良いことはなさそうだ。さっさと移動してしまおう。


「おいジークリンデ。呆けてないで講堂に行くぞ。リリィ、手を離しちゃダメだからな」

「わかった!」

「あ、ああ…………」


 職員と一悶着起こしているカヤを置き去りにし、俺達は入学式が行われる講堂へと足を運んだ。



「ぱぱ! たくさんひといる!」


 リリィは椅子に座るなり落ち着き無く周りをきょろきょろを見渡し、声をあげた。魔法学校の講堂は千人以上を軽々収容出来る程に大きく、既にその半数以上が今年の入学者とその親で埋まっていた。周囲に視線を向ければリリィのように周りを気にしている子供達が沢山いる。その表情は皆一様に明るく、希望に満ち溢れているように見えた。


「皆リリィの同級生達だ。仲良くなれるといいな」

「どーきゅーせー?」


 リリィの気の抜けたような疑問に、ジークリンデが答える。


「同級生というのは、これから一緒に勉学に励む仲間の事だ。…………一部、真面目に勉学に励まないものもいるが」


 ジークリンデはそう言うと、わざとらしく俺に視線を向けた。

 …………俺が不真面目だったと言いたいのか?


 言い返そうとする俺を、懐かしそうに目を細めて周囲を見渡しながらジークリンデが制した。

 

「ヴァイス。久しぶりの魔法学校、懐かしいと思わないか?」

「懐かしいっちゃ懐かしいが。正直もうあまり覚えてないんだよな」


 学生時代の思い出といえば、ジークリンデに迷惑をかけたことや、ジークリンデに世話になったこと等、とにかくジークリンデに関する事くらいしかまともに覚えていなかった。それも帝都に帰ってきてジークリンデと顔を合わせる事が多かったから自然と思い出しただけで、ゼニスにいた頃は高級ブランド店を出禁になりジークリンデに借金をしていた事すら忘れていた。

 そんな訳で、もし今ここで当時の同級生に話しかけられたとしても覚えている自信は全くない。まあそんな事は早々ないだろうが。


 ────早々ないはずだった。


「えっと…………ヴァイス君だよね? 久しぶり、帰ってきてたんだ」


 前の席に座っていた、見るからに裕福そうな親子の母親が、振り返るなり嬉しそうな表情で俺に微笑みかけてくる。その顔に、勿論俺は見覚えがないのだった。

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ネットの『推し』とリアルの『推し』が隣に引っ越してきた~夢のような生活が始まると思っていたけど、何か思ってたのと違う~

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