報復
残酷な表現が出てきます。
治癒師アクリーゾは、隣国のスハウィンにある治癒師養成専門学院で教える教師でもあった。
幼い子から10代~幅広い年代の生徒達が学ぶその学院も、帝国側の無差別爆撃によって建物内にいた500人が亡くなった。避難していた民間人もいた。
ダラダラと顔じゅうから血を流すレクサンドは、折れた歯と鼻から流れる血と涙でただただヒッヒッと声を発するだけの生き物になっている。
「治癒師には治癒師の、拷問のやり方があんのよ……こんな使い方、おめえにしか使わねえけどな」
死んでいった教え子たちの怨みは深い。
レクサンドは、更なる恐怖に慄いた。治癒師が治してまたいたぶられる…その無間地獄が、レクサンドを待っている。
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誰も皇帝を助けに来ない。来るはずがない。人質を取られて言いなりになるしかなかった者たちも、弱みを握られて従っていた者たちもいたが、一番多かったのは皇帝の代で私腹を肥やし甘い汁を吸ってわが世の春を謳歌していた者たちだ。そうやって皇帝に付き従っていた者たちは、停戦協定の締結と共に密かに粛正された。
ただの処刑ではない。苦しんで苦しんで ────それでも、死んでいった数万人の魂は癒されはしない。
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