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謀略

残酷な表現が出てきます。


【五年戦争】


 帝国側からの侵攻で始まった五年戦争は、王国の東にあるゼル半島のザゴルノ・ズラバフ侵攻から始まった。その後、クエープトという地方都市への奇襲を経て戦闘は双方激化し戦争は泥沼化した。


 双方に多大な犠牲を払い、帝国と王国は停戦協定を結ぶ形で戦闘状態は終わった。

 様々な折衝や合意形成を経て、停戦監視委員会が設置された。





 皇帝にももちろん身辺を守る護衛はいた。3人の護衛。人を信じぬ皇帝が、子飼いの呪術師に人選を任せて付けた屈強な3人だった。


 庭から大きな異音。なんらかのトラブルが発生したのが分かった。


 その時、庭にいて大怪我を負った騎士が、皇帝の護衛の息子だったのは何かの偶然なのか。


 報告を受けた護衛の男の顔が真っ青になったのを見て騎士団長が、皇帝に「彼に、息子の様子を見に行かせてやってくれ」と頼んできたことは果たして偶然か。


 その後、皇帝が食事の給仕をしていた女官からこうして襲撃されているというのに

騎士団長が黙って見ていたのは偶然か。


 軽食の乗った皿を下げに近寄った女官が、頭の簪のような髪飾りからアイスピック状の武器を出して皇帝に突き刺すまで数秒。


 騎士団長は、女に向かって

「一度抜いて、もう一度刺したらどうだ」と言ったのは ────……皇帝は理解した。

 偶然などではない。全ては仕組まれていた。


 襲撃者の女、騎士団長、宰相、大臣ら…。みな、冷ややかな目で立ってレクサンドを見下ろしていた。


「バサン、は…バサンはどこだ…」


 皇帝が、側近でもある呪術師バサンの名を呼ぶもそれに応えるものは誰もいない。


 皺だらけの女の細い手が、皇帝の首からアイスピックを引き抜くと血がどくどくと流れ出た。ザグッッッ 傷口のすぐわきにふたたびアイスピック状の武器が振り下ろされる。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「なんでッ なんで、あの子は死ななきゃならなかったの ───…私の息子を返せ……返せえええええええええええええええ」

 女は、叫んだあと武器を引き抜き、その場にへたり込んだ。


 執務室のドアは固く閉じられ、3人いた専属の護衛のうち残りの2人もとうに殺されていた。騎士団長の剣によって。


 皇帝は身体をじたばたしていたが、体から流れ出る血の多さからか手足に力が入らなくなってゆく。


「治癒師を呼べっ…」


 弱々しい声でそう命じるも、騎士団長が冷ややかに応じる。


「治癒師、ね。後で呼んであげますよ、あなたがもっと苦しんでから…皇 帝 」

お読みいただきありがとうございます。

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